自分が持つスキルを活かすために、転職先を探すことは当然のことです。スキルを活かすことができれば新しい会社でも力を発揮することができますし、評価も上がります。さらに前職で得た『情報』を活かせば、評価をもっと上げられると考えているビジネスパーソンもいるでしょう。しかし現在、あらゆる企業で『情報漏えい』について敏感になっているということを知っておくことが必要です。
新日本製鉄の技術流出事件
新日本製鉄株式会社(現新日鉄住金株式会社)が韓国鉄鋼大手ポスコに対し、高級鋼板の技術を不正に取得したとして、約1000億円の賠償を求め提訴しました(日本経済新聞2012年10月25日付)。新日本製鉄株式会社を退職した元社員が、高級鋼板の製造技術を持ち出して退職し、製造技術をポスコに開示しました。その製造技術を使用して、ポスコが高級鋼板の製造を開始したというものです。
新日本製鉄株式会社は自社で開発した技術を持ち出されただけではなく、ポスコに同じものを作られてしまいました。賠償金額が1000億円のうち800億円は、元社員とポスコが連帯で支払うように求めており、これは第2の情報流流出を防ぐための意図があるとされています。
情報流出を防ぐための、国の対策
このような情報流出を防ごうと、経済産業省は『営業秘密管理指針』を発行しました。情報流出事件は新日本製鉄株式会社のような製造業に多く見られると思われるかもしれませんが、この指針では製造業以外の業種での営業秘密について言及されています。
営業秘密は、不正競争防止法によって保護される3つの要件を満たす情報だと、指針では定めています。それは以下の3つです。
1、秘密として管理されていること(秘密管理性)
2、有用な営業上または技術上の情報であること(有用性)
3、 公然と知られていないこと(非公知性)
例えば新日本製鉄株式会社のような設計図や製法、製造ノウハウといったものがこれにあたります。また、ソフトウェアや機械効率のデータなどもこれに含まれています。
そして『営業情報』も守られるべき秘密に定められます。例えば商品の輸入先の目録や原価、顧客データもこれに含まれています。現職が営業の場合、今の取引先を転職先に持っていこうと思われるかもしれませんが、それは『情報漏えい』に当たってしまいます。
就業規則もしっかりチェック
企業は情報流出を防ぐために、退職者に『秘密保持契約』を求めることがあります。また秘密を保持するという内容が就業規則に記載されている場合もあります。これを破って会社に損害を与えてしまったら、訴えられることもあります。
自分では意識をしていなかった些細な事も秘密事項に当たる場合がありますので、現職で秘密にあたる情報は何なのか、転職前にしっかりと確認しておきましょう。