厚生労働省は、障がい者の就労意欲を高めるためや、自立支援のために障がい者雇用対策を進めています。施策としてよく知られているものには、職業訓練や雇用先紹介などの支援がありますが、そのなかには「障害者雇用納付金制度」というものもあります。これは、いったいどのような制度なのでしょうか?
障害者雇用納付金制度とは
日本では、障がい者雇用を促進させるために「障がい者の雇用の促進等に関する法律」が施行されています。このなかの、「障害者雇用率制度」という項目では、「常時雇用している労働者数」の2.0%以上、障がい者の雇用が義務付けられており、該当企業は遵守しなくてはなりません。
しかし、障がい者を雇うとなれば、会社の設備をバリアフリー化したり、補助器具を導入したりと経済的負担が企業にかかることが懸念点です。このままでは、義務を守る企業と守らない企業で差が出てしまうために、雇用が促進できなくなってしまいます。そこで登場したのが、障害者雇用納付金制度です。
これは、法律で定められた人数の従業員数がいるにもかかわらず、雇用率が基準に満たない企業に納付金を課すという制度。徴収した納付金は基準を満たす企業へ報奨金や環境整備のための調整金として分配し、経済負担の差をなくすことが狙いです。
2015年4月の制度改正で変わった点
政府は、2015年の4月にさらなる障がい者雇用の促進を目指して内容を改正、施行しました。この改正で、納付金の対象事業者について枠組みが変更となり、今まで納めていなかった企業にも納付の必要が生じたり、納めていた額に変更が出たりする可能性があるため注意しましょう。
具体的な変更点は、主に納付の義務が生じる企業の従業員数についてです。改正前は、雇用している従業員が200名を超える企業に対して、障がい者の雇用率が基準を満たさない場合に納付金の申告が必要でしたが、2015年度より100名を超える企業にその下限が引き下がりました。
また、この変更に伴って、調整金や報奨金の基準も引き下げられて、100名を超える企業に対しても支給がされるようになりました。これにより、納付、給付いずれも対象が大きく拡大されて、雇用促進が期待されています。
障がい者雇用の流れが強まる
2015年の制度改正は、企業にとって障がい者雇用をより身近に感じるようになるきっかけになったといえます。企業に対して障がい者雇用を求める流れがより加速することは間違いありません。また、必然的に障がい者の労働環境を整備する必要に迫られるため、今後はどのような方であっても就職や転職がしやすい状況となっていくことが予想されます。
昨今は、コンプライアンスに対する意識が高まっています。転職時に企業を見比べる際に法令遵守度を気にするという方もいるでしょう。もし、転職時にコンプライアンスについて気になるようであれば、障害者雇用率制度を遵守できているかどうかを調べてみるのも企業選びにおける判断基準の一つになるかもしれません。