家族を養っている人は『扶養控除』という制度があるおかげで、所得税が低くなっています。夫の所得が増えにくい昨今では、主婦や扶養者が外で働く場合が多くなっています。その場合に、気になるのは『扶養を外れる』という言葉です。特に、パートで働いている方々からよく聞くことがあります。
『扶養から外れる』とは、厳密に言うと『配偶者控除』の額が変わるということです。例えば、夫婦の場合、夫が働いて妻が専業主婦であると、夫の課税所得から配偶者控除38万円が引かれ、その分の所得税などが減税となります。
では、専業主婦だった妻がパートに出た場合を考えてみましょう。パートに出ると妻自身が『給与』をもらうことになります。したがって、パートにも当然『給与所得控除』が適用され、税金上は今までとは別に考えなくてはいけなくなります。この給与所得控除とは、会社から給与をもらう人に認められた、経費のようなものです。もし年収180万円以下の場合、収入金額の40%です。給与が65万円に満たない場合は、65万円が給与所得控除となります。
パートに出ると『配偶者特別控除』が受けられる
パートに出ると、配偶者控除は受けられなくなる代わりに『配偶者特別控除』が受けられるようになります。配偶者特別控除は『パートの給与?給与所得控除65万円』が38万円以内なら、配偶者控除と同様の38万円が控除されます。
よくパートに出る時に「103万円を超えないように」という話を聞いたことがあると思います。103万円というのは『配偶者特別控除38万円+給与所得控除65万円』のこと。妻の給与が103万円以下なら控除額合計103万円が引かれ、夫の住民税に影響がないから「103万円を超えないように」と言われているのです。
しかし今、政府では配偶者控除を見直そうとしています(朝日新聞 3月8日付)。
配偶者控除が廃止されると、どんな負担が増える?
もし、配偶者控除が見直された場合、夫にかかる税金はどのように変わるのでしょうか? 制度が完全に廃止されると、まず所得税などの課税所得が38万円増加します。専業主婦がそのままパートなどに出なかった場合でも、38万円に対する税額が増えてしまいます。
逆に、妻がパートに出る場合、「103万円の壁」はなくなります。しかし『給与特別控除』内の65万円に抑えても、あまり家計の足しにはなりません。かといって年収が130万円を超えると、妻は厚生年金や健康保険に改めて入らなくてはならず、世帯で見ると社会保険料の負担も増加してしまいます。
配偶者控除の見直しは始まったばかりですが、共働きの多い今の世代のビジネスパーソンにとっては大きな負担になりそうです。今後の見直しの動きも、しっかりと見ておきたいところです。