多くの人が人間関係にストレスを感じている
職場の人間関係に「疲れた」「辛い」とストレスを感じ、「辞めたい」「転職したい」と頭をよぎることはありませんか?どれほどの方が職場の人間関係に悩みを持っているのか、実際の数字でみてみましょう。
厚生労働省の「H30 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、「現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある」労働者の割合は58.0%で約6割が「強いストレス」にさらされています。
その「強いストレスがある」と回答した労働者のうちで、上位3つの内容は「仕事の質・量」が59.4%、「仕事の失敗、責任の発生」が34.0%、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」が31.3%です。実に約18%、5人に1人が対人関係による強いストレスを感じていることがわかります。
また、厚生労働省の「平成 30 年雇用動向調査」によると、転職入職者(※)の前職を辞めた理由として、男性の7.7%、女性の11.8%が「職場の人間関係が好ましくなかった」をあげていて、約1割の離職理由が「人間関係のストレス」だとわかります。
※入職前1年間に就業経験のある者
しかも、会社内の人間関係に加えて取引先や顧客など、自分で選択できない様々な人間関係にさらされます。「人間関係でのストレスから転職する」ことは、レアケースではないことが理解できるでしょう。
人間関係を理由に転職することのメリットとデメリット
メリット
人間関係を理由に転職して感じる最大のメリットは、もちろん「職場の人間関係をリセットしてゼロからスタートできることです。気持ちを切り替えてリフレッシュする」というだけではなく、転職活動のために自己分析や仕事を含めた様々な棚卸しをして、前職を振り返っているはずですから、経験を糧により良い人間関係を築くための努力や工夫もできることでしょう。
セクハラ・パワハラなど改善が難しい状況や環境はあり得ます。人間関係のストレスを我慢して病んでうつになるよりも、潮時と早めに見極めて「転職する」ことも一つの解決策です。
デメリット
人間関係が理由で転職した場合のデメリットは、新しい職場の人間関係が前職より良くなる保証がないことです。
自己分析を徹底して、企業リサーチ・分析も丁寧に行って「この企業で長く働きたい」と思える企業に転職できたとしましょう。しかし、先のことを確実に見通すことはできません。転職しても、また人間関係につまづいて、転職を繰り返すリスクがあります。
他に、「今の職場の人たちから逃げの転職と思われる」「仕事に穴を空けて迷惑をかける」など、不安に思うことはあるでしょう。ですが、あなたが辞めてしばらく経てばみな忘れて行きます。これはデメリットとは言えません。
失敗しない転職先の選び方
転職活動を始める「きっかけ」が、人間関係のストレスだとしても「社風が合いそう」「雰囲気良さそう」などのイメージだけですぐに転職先を決めないこと。これが転職で成功するために必要なことです。
転職活動の最初のステップ、応募企業や職種を決めるための「自己分析」と「企業・職種リサーチ」を徹底しましょう。そして、やりたい仕事への転身、キャリアアップの機会、残業など勤務状況の改善、給与・収入アップなど、「人間関係のリセット」以外の転職の目的を明確に持ちましょう。そうすることで、転職が失敗して後悔する可能性を限りなく低くすることができます。
決して、「最初に決まった1社に入社しよう。」など安易な考えを持たず、真摯に転職活動に臨みましょう。
面接で転職理由をどのように伝えるか
「人間関係」を転職理由にするのは避ける
転職面接で退職理由を質問された場合、人間関係のトラブル・不満を回答することは避けること、をおすすめします。どんな面接官でも、ネガティブな言葉を耳にしたら、求職者自身に悪印象を持つためです。たとえ、本当に理不尽なことがあったとしても、短い面接時間のなかでは「人のせい」にしていると思われるリスクの方が高いのです。
もし、不満をポジティブな伝え方に変換できたとしても、「また、うちでも人間関係でトラブルを起こすのではないか。」「すぐに不満を持って会社を辞めてしまわないか。」と疑念を持たれる可能性があるので、人間関係に関わることを転職理由とすることは避けておきましょう。
かといって、ウソの転職理由を述べると見抜かれる可能性は大。既にお伝えしたように、「人間関係のトラブル・不満」はあくまでも転職を考える「きっかけ」であって、転職理由(退職理由)にはしないことが大切です。
繰り返しになりますが、やりたい仕事への転身、キャリアアップの機会、残業など勤務状況の改善、収入アップなど「人間関係のリセット」以外の転職の目的を持ちましょう。
ポジティブな転職理由を語る
面接では、ポジティブな転職理由を語るのが得策です。そのためには、「転職したらこうなりたい」という自身の未来の姿を描くことが必要です。自己分析を徹底する、と決めれば、現状の棚卸しが不満だらけでスタートしても「もっとこんな風に仕事をしたい」「本当はこんな職種にチャレンジしたい」「収入をアップさせたい」「将来のキャリアアップが見込める企業が良い」など、転職で実現したいことが浮かび上がってくるでしょう。その希望条件に優先順位を付けてみましょう。
ポジティブな転職理由が見つかるだけではなく、失敗しない転職先選びの基準も明確になります。
人間関係を理由とした転職を繰り返さないようにするには?
働いていると、人間関係で悩むことは起こりえるもの。転職が一つの解決策であることは確かですが、人間関係が理由で安易に転職してしまうと、また人間関係で転職を繰り返しがちになるということもよく聞く話です。
ここからは、人間関係を理由とした転職を繰り返さないために、転職活動で注意すべき点をご紹介します。
自己分析で、人間関係リセット以外の転職理由を発見する
これは既に解説済みですね。人間関係が理由の転職を繰り返さないために、一番大切な点と言えるでしょう。
社風や働き方をできる限りチェックする
企業のHPやメディア記事を丁寧にリサーチするだけではなく、社長や社員のインタビューやブログ記事、SNS発信、多くの情報源にあたって社風、実際にどんな人がどのように働いているのかをできる限りリサーチしましょう。勉強会やイベント登壇などに出向いて交流することももちろん、おすすめです。
カジュアルにオフィス見学や社員との交流を企画する企業も増えているので、遠慮せずに機会をとらえて情報収集しましょう。
複数企業に応募、面接の印象を比較して決定する
環境が変われば良い、と安易に応募の間口の広い求人に応募してすぐ入社したり、最初に内定をもらった企業に入社するときめている、などは、失敗する転職、間違った転職活動のやり方です。
在職しながらの転職は大変かもしれませんが、複数社に応募して面接もなるべくスケジュールを調整して多く受けましょう。リサーチして社風が合いそう、と思っても、実際に面接を受けたら「何だか向いていない」と感じることもありますし、反対にそんなに期待していなかった企業に「ピンとくる」こともあります。
面接では、採用担当者の他、職場の上司などが面接官となるので、実際に上司となる人と直接対話する印象も大切にします。