『PLAY WORK(プレイ・ワーク)』を10分で読める要約で!「遊びながら働く」ってどういうこと?

本書の指す「PLAY WORK」とは「遊びと仕事の境界線があいまいで、仕事をしているのか遊んでいるのかわからない状態」のこと。その状態で仕事が進むと、脳内のメカニズムが切り替わり、作業の生産性が3倍以上に跳ね上がるという。普通のビジネスパーソンがPLAY WORKするための4ステップを要約で紹介する。

PLAY WORK(プレイ・ワーク)

タイトル:PLAY WORK(プレイ・ワーク)

著者:ピョートル・フェリクス・グジバチ

ページ数:208ページ

出版社:PHP研究所

定価:1,500円(税別)

出版日:2019年8月6日

 

Book Review

PLAY WORKという本書のタイトルから、何を連想するだろうか。「遊びと仕事」ではない。「遊ぶように働く」という意味だ。遊びと仕事の境界線があいまいで、仕事をしているのか遊んでいるのかわからない状態がPLAY WORKである。
こんな働き方ができるのは才能に恵まれた一部のアーティストか、成功した経営者だけだ――それは思い込みだ。組織で働いているビジネスパーソンでも、「自己認識」「自己開示」「自己表現」「自己実現」という4つのステップを経れば、PLAY WORKを実現することができる。
もちろん、そう簡単ではない。あなたはまず、「自分が何に興味・関心があって、何をしたいのか、仕事で何を得たいのか」を説明できるだろうか。もし言葉に詰まってしまうとしたら「自己認識」が希薄な証拠だ。
また本書では、PLAY WORKを実現するためには、被害者意識を捨てて当事者意識を持つことが大切だと説かれている。「自分らしい働き方」を実現したければ、何よりもまず組織や環境のせいにすることは慎まなければならない。自分が主体的に考えて行動することこそ、その基本である。
本書には、多くの実例を通して、PLAY WORKを実現するための心がけが紹介されている。そうした実例から勇気をもらい、新たな働き方を実現するきっかけとしてほしい。

Step(1)自己認識

自分のやりたいことを知る

『PLAY WORK(プレイ・ワーク)』を10分で読める要約で!「遊びながら働く」ってどういうこと?

本書では、4つのステップを通して「PLAY WORK(遊ぶように働く)」を実現する方法が紹介される。まず、自己認識のステップから紹介していこう。
初対面の相手から「あなたは何者ですか?」と問われたら、何と答えるだろうか。名前などではなく、「自分がどんな人間で、何をしたいのか」を答えられるかどうか、考えてみてほしい。
その答えを持っている人は、自己認識ができている人だ。自己認識ができ、自分のやりたいことがわかっていれば、仕事を楽しめる。
一方で、自己認識が希薄な人は、自分のやりたいことがわからないため、会社や上司から指示された業務をこなすのが仕事になる。仕事を「嫌だなあ」と思っても、自分の得意なことを知らなければ、与えられた仕事をやるしかないものだ。こんな仕事が楽しいはずはない。

固定観念から解き放たれる

自己認識が希薄な人が多いのは、「組織から期待される役割=自分のやりたいこと」と思い込んでいる人が多いからだろう。「仕事とは楽しくないもの、嫌なことを我慢してやるもの」「上司は上司らしくふるまうべき」といった固定観念も、正しい自己認識を妨害する要因となる。
自分を固定観念から解き放つには、いろいろな人に会い、いろいろな世界に触れることが最も効果的だ。今まで出会わなかったタイプの人に会って「そんな考え方があるの?」と気づいたり、海外に出掛けて「これって当たり前のことなの?」と常識を疑ったりすることが、自己認識への第一歩だ。

「楽しい仕事」を増やす

やりたいことに夢中になれば、誰だって楽しく仕事をすることができる。もし自分のやりたいことがわからないなら、かつて興味があったことや、抱いていた夢を思い出してみよう。この1週間の仕事を振り返って、楽しかった仕事のランキングをつけるのもいい。誰との仕事に一番テンションが上がったか、それはなぜなのかを考えてみるのも効果的だ。そうすれば、自分の好きなことや得意なことが見えてくる。
「何が楽しくて、何が楽しくないか」を把握できたら、次のステップは「楽しい仕事」を増やし、「楽しくない仕事」を減らすことだ。チームで仕事が生まれたとき、「それ、得意だからわたしに任せて!」と手を挙げたり、「この仕事、○○さんが適任なんじゃない?」と推薦したりして、それぞれが楽しいと思える仕事を担当する。同時に、苦手な仕事はそれが好きな人、得意な人に任せるようにする。
仕事量の多寡で分担を決めたり、「A社の仕事は○○さんの担当」といった専任制にしたりしてはいけない。とにかく、楽しい仕事、得意な仕事に特化することだ。

Step(2)自己開示

自分と周囲の期待をすり合わせる

次のステップは、自己開示だ。自己認識した後、それを自分の胸にしまっておくのではなく、「わたしはこれがやりたい」「これが欲しい」と周りの人に伝えていく。
PLAY WORKに必要なのは、何よりもまず「当事者意識」である。自分が主体となって取り組み、夢中になることで楽しさが生まれるし、仕事の価値を高められるからだ。「誰々が○○してくれない」といった被害者意識は捨てるべきだ。
日頃から仕事の希望やキャリアを上司や人事に開示しておけば、なにかの機会に声がかかるかもしれない。自己開示によって、周りの人たちもその人に何を期待すればいいのかがわかるし、周りの人たちがその人の好みや要望に勝手に合わせてくれるようにすらなる。つまり、自己開示すれば、自分と周囲の期待をすり合わせることができるのだ。

フィードバックで人生を変える

自己開示には、自己認識を深め、さらに質の高い自己開示につながるという利点もある。
「わたしはこう思う」「これがやりたい」と自己開示すれば、相手から「あなたに向いていると思う」とか「他にもこういう考え方もあるよ」といったフィードバックが得られる。それによって自分の強みを再確認したり、新たな気づきを得たりすることができるはずだ。
特に、ポジティブなフィードバックは「自分は認められている」「自分はここにいていいんだ」といった安心感を与えてくれ、コンプレックスを強みに変えてくれることがある。だからコンプレックスだと思い込んでいることも、臆せず自己開示しよう。それが人生を変えてくれるかもしれない。

共感の輪を広げる

自己開示をすると、自分のやりたいことや価値観に共感してくれる人が周りに集まってくる。価値観を共有できる人とは、バックグラウンドや国籍、年齢の違いに関係なく、またクライアントや業者という立場を超えて、楽しく仕事ができるものだ。
自己開示は、「この人と一緒に仕事がしたい」と思える相手と出会い、仕事をもっと楽しくするためにも必要なステップだ。積極的に自己開示し、共感の輪を広げていこう。

Step(3)自己表現

価値を提供する

朝、会社に行って「あなたの仕事はないよ」と言われたらどうするだろうか。「仕事は会社から与えられるものだ」と思っている人は、この状況に戸惑うだろう。だが本来、仕事とは誰かの指示を待つことなく、自己認識に基づいて主体的に社会と関わりながら価値を提供していく行為である。つまり仕事は「自己表現」なのだ。
価値といっても、難しく考える必要はない。あなたがかけた言葉で相手を笑わせる、相手に手を差し伸べて感謝されるといったことも、立派な「価値」だといえる。「自分は何がしたいのか」「社会に何をもたらしたいのか」が先にあって、それが相手を喜ばせられるものなら、価値となり、報酬がもらえる。これは、報酬が前提となる仕事とは対極にある働き方だ。
この考え方なら、明日会社がなくなったとしても、自分の価値を提供して報酬を稼ぐことができるだろう。

「学びほぐし」をする

固定観念は自己認識を妨げるだけでなく、自己表現の邪魔もする。成功体験への執着、思い込み、常識、先入観など、枠にはめようとする考え方はすべて、自己表現の障害となる。
自己表現をするにあたって重要になるのは「学びほぐし」だ。これは、それまでのやり方を手放すことをいう。固定観念や成功体験に縛られていると、新しいアイデアが生まれないし、新しい挑戦ができない。その結果、変化や成長が妨げられてしまうのだ。
学びほぐしに必要なのは、異なる価値観や考え方の人に会うこと。その経験を通して「自分の考え方は古いままなのかもしれない」と気づくとともに、不快感や違和感といった「負の感情」を乗り越えることだ。そうした居心地の悪さが、自分を変えてくれる。
まずは、「仕事はこうあるべき」という思い込みを捨てて「仕事は楽しんだもの勝ち」と考えよう。そうすれば、柔軟な発想ができるようになるはずだ。

「クリエイティブ・カオス」をつくる

創造性が生まれるのは、パターンが崩れたときだ。予期せぬことが起きて混乱すると、そこから抜け出すための知恵や工夫が働く。
だから著者は、あえて「混乱をつくる」ことで、新たな価値を生み出そうとすることがあるという。「クリエイティブ・カオス」と表現できるこの状態を作り出すには、「イタズラを仕掛ける」のが有効だ。著者は、ユニコーンの仮面をかぶってイベントに登壇してみたことがあるほか、会議中に議論が煮詰まったタイミングで、コップに入った水をあえてこぼして混乱をつくりだすこともあるそうだ。
もうひとつ、クリエイティブ・カオスをつくるのに有効なのは、多様性(ダイバーシティ)の確保である。さまざまな価値観や考え方をもつ人たちと議論すれば、気づきが生まれ、新たな価値の創造へとつながっていく。

Step(4)自己実現

自分にしかできないことをする

著者の定義では、「自己実現」とは、自己認識から自己開示、自己表現までのプロセスを通じて「自分にしかできないことを実現する」ことだ。では、「あなたにしかできないことは、何ですか?」と聞かれたら、あなたはどう答えるだろうか。
起業家やフリーランスでやりたい仕事をやっている人、夢中になれる趣味がある人は、「自分にしかできないことを実現している」という実感をもちやすいかもしれない。しかし、会社組織で働いていても、自己実現する道は無限にある。仕事ではなく、子育てやボランティア活動、地域活動などで世の中に価値をもたらし、自己実現するのも一つの手だろう。

自分の役割は自分で決める

組織の中で自己実現するには、「やりたいこと」をやりながら、会社の利益にも貢献しなければならない。それはまるで「忍者」のような働き方だ。つまり、社会に価値あることを提供するために、中長期的な視点を持って必要な動きを判断し、自ら情報を取りにいく。
はじめからノルマや対価が決まっている仕事なら、ノルマを達成すればそれで終わりだ。だが、自己実現するためには、自分で見つけ出した課題に対して解決方法を考え、その仕組みを整える必要がある。その結果、誰かに価値を提供できれば、後付けで金銭的な報酬がついてくる。
そんなふうに働いていると、仕事の大半はビジネスを生み出すための活動になる。著者の場合、収益に直結する仕事は全体の3割で、残りの7割はビジネスを創造するための時間だという。

自分の仕事を楽しくする

あなたの仕事を楽しくするのは、他でもないあなただ。それは、誰かが代わりにやってくれるものではない。ミッションをあなたなりのやり方で実現することで、仕事は「あなたにしかできない仕事」となる。
仕事を楽しめるようになると、次第に仕事とプライベートの境界線が曖昧になっていく。まるで遊んでいるかのように仕事が進むこの状態を「フロー状態」というが、この状態になると、脳のメカニズムが変わり、作業の生産性が3倍以上に跳ね上がる。
ダラダラと仕事をしていても、フロー状態に入ることはできない。全力で走ったらしばらく休み、また全力で走るといった感じで、仕事のリズムをつくることが大切だ。

一読の薦め

いま日本中で、労働生産性の向上などを目的とした「働き方改革」が叫ばれている。しかしその実情は残業時間の削減やペーパーレス化、オフィスのフリーアドレス化やテレワークの推進などである。これらの施策はムリ・ムダの削減に対して一定の効果はあるものの、劇的な効果をもたらすようには見えない。各社が行っている施策を見ると、むしろ「人件費やオフィスの経費削減が主目的では?」と思えるときもあるほどだ。
本当の働き方改革とは、本書に記されているようなPLAY WORKの実現、つまりビジネスパーソンの「やりたいこと」の発見や、仕事を通じた自己実現を後押しすることではないのだろうか。こうした改革を妨げているのはやはり、経営層の固定観念なのだろう。
しかし、やはり本書にあるように、被害者意識を持っていてもはじまらない。自らが先頭に立ってPLAY WORKの実現に向けた行動を取れば、その影響はきっと周囲にも伝わり、組織の変革につながるはずだ。
本書にはそのヒントになるような実例がたくさん記載されている。組織の中でくすぶっている人、自己実現に向けた第一歩を踏み出したい人に、ぜひ一読いただきたい一冊である。

※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
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著者紹介

  • ピョートル・フェリクス・グジバチ(Piotr Feliks Grzywacz)

    プロノイア・グループ株式会社代表取締役/モティファイ株式会社取締役チーフサイエンティスト。プロノイア・グループにて、企業がイノベーションを起こすための組織文化の変革コンサルティングを行い、その知見・メソッドをモティファイにてテクノロジー化。2社の経営を通じ、変革コンサルティングをAIに置き換える挑戦をする。
    ポーランド生まれ。2000年に来日し、ベルリッツ、モルガン・スタンレーを経て2011年にGoogleに入社。アジア・パシフィック地域におけるピープル・ディベロップメント(人材開発)に携わったのち、2014年からはグローバル・ラーニング・ストラテジー(グローバル人材の育成戦略)の作成に携わり、人材育成と組織開発、リーダーシップ開発の分野で活躍。2015年に独立し現職。
    著書に『NEW ELITE』(大和書房)、『世界最高のチーム』(朝日新聞出版)、『人生が変わるメンタルタフネス』(廣済堂出版)などがある。

  • flier

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