日本でも『裁量労働制』を導入する企業が増えてきました。勤務時間にとらわれず、仕事の具体的な進め方や時間配分を労働者の裁量にゆだね、成果を上げてもらおうという制度です。システムエンジニア(SE)やゲーム用ソフトウェア創作業務などに適用できる制度ですが、今この制度がIT業界で問題となっています。
裁量労働制がトラブルを招く?
裁量労働制を導入したIT企業で発生したトラブルを、東京新聞(2013年2月28日付)が報じています。記事によると、採用の際に「裁量労働制である」と告げられたプログラマーの男性が、過労からうつ状態となり解雇されたと言います。またある元SEは、SEの肩書きを付けられながらも裁量の低いプログラミング業務や、ノルマのある営業活動をさせされていたそうです。
この記事のようにIT業界では裁量労働制を悪用するトラブルが後を絶ちません。このようなトラブルを避けるためにも、裁量労働制度をしっかりと理解しておかなくてはなりません。
知っておきたい裁量労働制の内容とは?
裁量労働制を導入する場合、労使協定を結ぶことになります。まず重要なのが実際の『業務』です。SEは裁量労働制が適用される業務ですが、『プログラマー』には適用されません。実際に業務に入ったらプログラマーとしての業務だったという場合は、東京新聞の記事で報じられた裁判のように、裁量労働制の適用要件を満たしていないとして、残業代を請求することが可能です。
裁量労働制は1日の仕事を早く終えれば早く帰宅ができるわけですが、残業をした場合は残業代が出ません。しかし『深夜作業』と『休日労働』は通常の労働と同じように割増賃金が適用されます。もしも労使協定を結んだ際に深夜残業と休日労働を制限されていなければ、その分の割増賃金を請求することができます。
「残業代は出ない」ということばかりが頭に入りがちですが、割増賃金が適用される場合があることも覚えておきましょう。
残業しても、とにかく自分の業務を終わらせなければならない裁量労働制。自分の仕事を終えたら「ちょっとこの仕事も頼むよ」なんていうことも、実は裁量労働制を無視したことになります。
転職を目指すSEの方は裁量労働制を理解しておいて、少しでもおかしいと思ったらすぐに相談しましょう。『社員からの苦情の処理に関する措置の具体的内容』を明記することも、裁量労働制を導入する際に必要なことなので、必ず相談窓口があるはずですよ。