100の企業には100の働き方がある、というのはある経営者の名言です。ですので、「自社に見合った組織体制をつくるのは経営者の責任だ」と続くわけですが、そこに含まれる要素の一つにオフィスのあり方があります。なぜなら働く場所=オフィスのカタチは社員、従業員のやる気や働く動機を大いに左右するからです。このため、オフィスに神経を使う経営者は少なくありません。
職場から近い駅に住む従業員には特別手当
一時期、ネット関連企業がこぞって飛びついた施設は社内カフェでした。個人作業が多いため、周囲とのコミュニケーションが少なくなるという業種であることから、ストレス解消の目的もあって社内カフェスペースを必要としたわけです。気分転換に音楽や映像、ドリンクなどを楽しめるようにし、通りがかりの同僚や打ち合わせを終えた社員同士で自然と会話がはずむ様子を見て、経営者は安心、安堵の表情を浮かべたはずです。
オフィスの立地と、社員の居住地に注目した企業もありました。これは仕事が不規則で緊急業務にも対応しなければならないという事情があったためです。そこで、オフィスのある駅から2駅以内に住む社員に特別手当を支給する企業が現れ、いくつかの企業がこの試みに続きました。この会社では家賃補助という名目で月3万円を支給することになったので、遠方に住む従業員が我れ先にと引っ越しを始め、当初組んでいた予算があっという間になくなったという話もあります。
視野に入れるべきさまざまな経営効果
社員同士のコミュニケーションに神経を使う企業も少なくありません。企業の成長にともなって従業員が増えた、それと比例してスペースが狭くなりオフィスを分散した、その結果、従業員がお互いに顔を合わせなくなって仕事に不都合が出たという例は少なくありません。全員が同じ目的に向かって仕事に取り組んでいるのだから、「できるだけ顔を見せ合いながら仕事を進めたい」というのは経営者の本能的な発想です。多くの経営者が建物は一つ、オフィスはワンフロアにこだわるのはそのためです。
最近になってオフィスは別の役割も負うようになりました。それは企業ブランディングの面です。会社のブランディング、イメージを構築する上でオフィスのあり方が影響力を持つことが分かってきたのです。つまり企業のブランディング、イメージを構築する上でオフィスのあり方が大きな意味を持つのです。
斬新な発想やアイデアのオフィスが話題になる、マスコミに取り上げられたことで知名度アップにも貢献する、そうなると企業は投資した以上の経営効果を得たことになります。社員が会社を誇りに思うようになった、社員採用に効果がある、来社された取引先等が帰ってから必ず話題にしている等々、今日のオフィスは、そうした経営的効果まで視野に入れる時代になったといえるでしょう。