最近、ニュースでも話題になっている「残業代ゼロ法案」ですが、実際にはどのような法案なのでしょうか。いたずらに「残業代がなくなる」と不安がるのではなく、実態を正しく理解するようにしましょう。
残業代ゼロ法案とは
2015年4月、政府は労働基準法改正案を閣議決定しました。この改正案は、残業代ゼロ法案や残業代ゼロ制度などと呼ばれ、批判されています。なぜでしょう? それはこの法律が成立した場合、労働者を保護する労働基準法の対象外となる人たちが発生するためです。こうした批判や、他の問題への対応が急務であることから、残業代ゼロ法案は通常国会で可決されることはなく、秋の臨時国会へと審議が持ち越されることとなりました。
残業代ゼロ制度の対象者は?
残業代ゼロ法案は、国会に提出された法案の概要によると、次の条件を満たす人が対象とされています。
・職務の範囲が明確である人
・少なくとも1,000万円以上の年収を有する人
・高度な専門的知識を必要とする等の業務を行っている人
具体的には、研究者やエンジニア、為替ディーラーといった人々のうち、年収が規定を上回る人が対象になると考えられています。 年収については、1,075万円という金額をよく耳にしますが、これは平均給与額の3倍程度という基準値が出たために、1,075万円が予定されているということです。こうした対象者に対し、本人の同意や委員会の決議が必要、労働時間が一定時間を超えた場合には医師による指導を行うといった条件を付けた上で、労働基準法で定められた休日や労働時間、割増賃金の適用を除外するというのが、残業代ゼロ法案です。
残業代ゼロ法案のメリットとデメリット
残業代ゼロ法案には、メリットもデメリットもあるとされています。これらを見比べてみましょう。
〈メリット〉
・無駄な残業がなくなることが期待できる
・健康面に配慮された法律であるため、労働時間を減らして過労を防ぐことができる
・勤務時間ではなく能力に応じた評価、賃金体系が可能になる
〈デメリット〉
・法律に守られず、無給で長時間働かされかねない
・成果が上がれば賃金が上がるという規定はなく、給料が増えずらい可能性がある
・今後、範囲が拡大して労働者に不利な制度になっていく恐れがある
この法律が、実際にブラック企業を生み出す悪法となるのか、企業の発展や能力の開花に繋がる良法となるのかは、具体的な対象や保護制度が定まらなくては判断しきれない部分が多々あります。 残業代ゼロ法案が可決されるのかどうか、また、どのような内容に決定するのか、今後も意識しておくようにしましょう。