2つの結果から透けて見える『本音』
リーマンショック後の不況の影響で、『転職』に対するビジネスパーソンの意識が『守り』に入っていることは、先日のコラム記事““『FA宣言』に及び腰な(?)若手ビジネスパーソン””でもお伝えした通りですが、厚生労働省の2011年の雇用動向調査では、流動性を示すデータが04年以降過去最低でした。転職の主な『動機』は職場への不満 が考えられますが、キャリアデザインセンターが25~34歳の若手ビジネスパーソンを対象に『現在の勤務先への満足度』を尋ねた意識調査(キャリアデザインレポート2012 現在の会社について、次の項目の満足度をお答え下さい)では、「会社のビジョン・経営方針」「教育・研修制度・職場の環境」などの多くの項目で、近年は、不満度が低下する傾向にありました。
しかし本当に転職への興味が薄らいだのかと言えば疑問が浮かびます。同じ調査では、「今後より良い会社・仕事があれば、現在の会社を辞めて転職しても良いと思いますか」を質問しています(キャリアデザインレポート2012 今後より良い会社・仕事があれば、現在の会社を辞めて転職しても良いと思いますか)。すると、83%ものビジネスパーソンが「思う」と回答したのです。厚労省の調査や、『現在の勤務先への満足度』の結果を併せ考えると、「今の不景気で転職するのは勇気がいるが、環境が整えば転職してみたい」という“本音”が透けて見えます。
グラフ:キャリアデザインレポート2012 転職意向/転職先検討基準調査 今後より良い会社・仕事があれば、現在の会社を辞めて転職しても良いと思いますか
景気は転職への動機になるのか
「今後より良い会社・仕事があれば…」の質問への回答結果について過去5年間をさかのぼってみましょう。2007年は9割近くが転職への意欲を示しています。当時は、景気が持ち直していた時期で、企業の採用活動も活発でした。リーマンショックが起きた08年以降はやや数値は下がったものの、依然として8割を超える結果が出ています。景気や企業の採用動向という『外部環境』とは別に、ビジネスパーソンが自分の職場とのマッチングという『内部環境』の視点から転職を常に意識していることがうかがえます。
転職と景気の関連でもうひとつ注目しておきたいのは、給与に関するデータです。デフレの影響で下落に歯止めがかかりません。9月に発表された国税庁の民間給与実態統計調査では、2011年に民間企業などで働く人の給与が409万円と、1989年の水準にまで下がりました。そうした中で、前述のキャリアデザインセンターによる『現在の勤務先への満足度』調査では、『給与・賃金待遇』に「やや不満」「不満」と答えた人は合わせて46%と半数近くに上っています。
給与だけがその会社で働く上での物差しではないでしょう。しかし、 自分個人や自分の所属部署だけが成果を挙げていても、会社全体としては業績が低下し、それに巻き込まれる形で給与ダウンということもこの不景気では、よくあることです。給与・待遇への感覚が鋭くなっている分、やはり転職への関心自体は尽きないと言えます。