長引く不況のあおりや、働き方が多様化したことで、非正規雇用で働く人の割合が増加しています。2014年には、非正規雇用の割合が37.4%となり、この増加傾向は今後も続いていく見通しです。そのような中、非正規雇用の一つ、派遣社員に関する労働者派遣法が2015年9月に改正されました。
労働者派遣法とは
労働者派遣法とは、派遣労働者の就業環境や条件を整備するとともに、派遣先となる労働現場での権利を守るために定められた法律です。労働者の雇用安定のために制定されているため、条文には以下のように目的が定められています。
『この法律は、職業安定法 (昭和二十二年法律第百四十一号)と相まつて労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする』
1986年の施行から、雇用推移や経済状況に合わせて複数回の改正が行われています。2015年の改正は通算では5回目ですが、2000年代に入ってからは4回目です。近年は高頻度で改正されており、派遣労働に対する世間の関心も高まっていると言えるでしょう。
2015年労働者派遣法改正案のポイント
労働者派遣法は、先述のように何度も改正されてきましたが、2015年の改正点は、これまでの改正と比べると大きな変化と言えそうです。変更内容は雇用の方法や雇用期間などに影響するものなので、まずは、重要なポイントについて押さえておきましょう。
(1)派遣労働者の業務区分を撤廃
従来は、ソフトウェア開発など法令で定められた28業務を「専門業務」、それ以外の業務を「自由業務」といい、それぞれ派遣期間の長さが異なっていました。これを撤廃し、共通ルールとして「個人(派遣労働者)単位の期間制限」と「派遣先単位の期間制限」が設けられることになります。
(2)派遣期間の定め方が変化
個人(派遣労働者)単位の期間制限の上限は3年間。これを違反すると「労働契約申込みみなし制度」の対象になります。 派遣先単位の期間制限は3年間まで。該当事業所に過半数労働組合、または過半数代表者の意見を聴くことで、さらに3年間ごとに派遣労働者を受け入れることができます。3年を越えて派遣労働者を受け入れた場合、「労働契約申込みみなし制度」の対象になります。
(3)労働契約申込みみなし制度
2015年10月1日から施行されることになった制度。厚生労働省によると、
「違法派遣の是正にあたっては、派遣労働者の雇用が失われないよう、派遣労働者の保護を図る必要。また、善意無過失の場合を除き、違法派遣を受け入れた者にも責任があり、そのような者に対して一定のペナルティ(民事上の措置)を科すことにより法規制の実効性を確保する必要。これらの理由により創設された制度」
とあります。
よって、みなし制度か?施行された時点で、みなし制度か?適用される違法行為を行っている場合、派遣先等はその時点において労働契約の申込みをしたものとみなされ、派遣社員を派遣元の労働条件で雇用しなければならなくなりました。
法改正で懸念される問題点
以前は3年以上派遣されていると、派遣先に直接正社員として採用されるか、切られるかのどちらかでした。今回の改正により、派遣先が過半数労働組合、または過半数代表者の意見聴取を行えば、3年、また3年と実質無期限で派遣労働者として働けるようになりました。
正社員にはなれず、派遣社員としていつまでも働くことが良いことなのかは当事者次第ですが、法改正は始まったばかり。これから問題も出てくるかと思われます。今後の動きに注目です。