最近では、裁判でパワハラか否かを争うような、ニュースを目にすることが増えてきました。
本来、パワハラなどの社内で発生する問題は、社内にある相談窓口や、別の部署、上司に相談し、社内で解決するのが一番です。しかし、どうしても解決しない場合、社外に力を借りるしかありません。とはいえ、裁判は最後の手段であることに変わりはありません。どうしても、解決が難しい場合の手段として、裁判より簡単に利用できる『労働審判』という制度に注目が集まっています。
労働者と事業主の間に生じたトラブルを解決する機関というと、労働基準監督局や都道府県労働局を思いつかれるのではないでしょうか。共に『個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律』に基づき、窓口が設置され、各種の相談を受け付けています。
基本的に、窓口で受け付けた相談に対して、紛争当事者同士の話し合いで解決することを促しますが、それでも解決しない場合には、第三者を交えた『紛争調停委員会によるあっせん』がおこなわれます。
しかし、『あっせん』には、法的な拘束力がありません。紛争調停委員会によるあっせんだと、会社側が拒否できてしまうのです。
そうなった場合に、次に訴えるところは裁判所ということになりますが、通常の裁判よりも簡単に行えるのが『労働審判』です。
調停か審判を、迅速に下す『労働審判』
労働審判制度は、2006年に始まった制度です。通常の裁判と大きく違うのは、調停成立までのスピードになります。通常の裁判は長ければ1年以上かかってしまう場合もありますが、労働審判の場合は、原則3回の審理で終えることができ、平均2ヶ月半で解決に至ります。
労働審判は、3人の労働審判員が事実関係と法律にのっとって審理します。話し合いにより解決する見込みがあれば、調停を試み、話し合いでも解決しない場合は、審判を下します。この審判に会社側が異議を申し立てれば、裁判になってしまいますが、労働審判を利用した案件の実に80%が裁判に至らずに解決しています。
労働審判と裁判、どっちがあなたに適している?
労働審判と裁判は、共に裁判所で行われますが、使い分けが重要になります。迅速に問題を解決したい場合は、もちろん労働審判です。しかし、会社に請求できるものはしたいという考えなら、通常の裁判を行った方がより多い請求を勝ち取れるといいます。
本来であれば社内で解決することが望ましいですが、どうしても解決に至らないなら『労働審判』というものがある、ということを頭に入れておきましょう。