パワハラは大きな社会問題となっていますが、非常に難しいのはその『定義』。業務上の行き過ぎた指導はパワハラになりますが、その線引きがあいまいなために法的なトラブル、裁判にまで至る場合もあります。
厚生労働省はパワハラの定義を発表しているので、社内でパワハラらしきものを見かけた場合、ひとつの指針として利用しましょう。
厚生労働省では有識者を集め『職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ』を開催しました。その結果平成23年1月に、パワハラの概念を打ち出しました(2-2.職場のパワーハラスメントの行為類型)。これによると下記のような行為がパワハラに当たるとしています。
(1)身体的な攻撃(暴行・障害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間はずし・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
暴行・傷害は当然ですが、言葉での攻撃、無視することなどもパワハラに当たります。また業務上の要求や、プライベートに過度に立ち入ることもパワハラと定義し、働く人の身になった提言となっています。
そしてパワハラを予防するために、企業側でも対策に取り組むべきだとしています。主な取り組みは下記の通りです。
・トップのメッセージ
・ルールを決める
・実態を把握する
・教育する
・周知する
企業ではトップが「パワハラは絶対に禁止である」というメッセージを発信し、ルールを決め、発生した場合には実態を把握するように取り組むべきであるとしています。
ではなぜパワハラが裁判にまで達してしまうのでしょうか?
パワハラ撲滅のためには、会社側の協力が不可欠
厚生労働省の開設するサイト『あかるい職場応援団』では、過去の裁判事例を紹介しています。いくつもの裁判事例が紹介されていますが、ひとつの共通点があります。それは労働者にとってパワハラだと感じたことを、会社側が認めていないということです。
もともと厚生労働省の発表したパワハラの定義には、法的な拘束力はありません。そこで企業側にもパワハラ防止の取り組みを推奨しているのですが、実際にはパワハラを認めず、裁判に達してしまうケースが見受けられています。
パワハラは労働者だけではなく、会社側の協力なくしては撲滅するのは難しいことです。会社にパワハラの事実を伝えることが、パワハラ撲滅の第一歩となるはずです。