上司なら常に気を付けておきたいのはパワハラです。しかし相手が嫌がれば全てがパワハラになるというわけではありません。
上司も部下も知っておいて欲しいのは、『業務の適正な範囲』を超えたものがパワハラになるということ。具体的な例を参考に、パワハラなのかどうなのかを判断してみましょう。
まず知っておきたいのはパワハラの定義です。以前当コラムでもパワハラの定義を紹介しました。
この定義に当てはまらなければパワハラには該当しません。
では次のような場合、パワハラに該当するのでしょうか?
適切な注意、指導ならパワハラではない!
ある部下は仕事中に業務用のパソコンを使い、個人的にインターネットを利用していました。これに気が付いた上司が注意するもののなかなか行為は収まらず、業務時間内に別室に呼び出し丁寧な言葉で注意、指導を行いました。
これに対して部下は「何度も注意するなんて、これってパワハラですよね?」と言ったそうです。
最近では『パワハラ』という言葉が浸透しており、少しの注意でも「パワハラだ」と言い返されるということを耳にします。しかしこれはパワハラには当たりません。
『職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ』による資料によると「パワーハラスメント対策が上司の適正な指導を妨げるものにならないようにする」とあります(3.(1)まず何から始めるか)。
上記の例の場合、上司は丁寧な言葉で注意、指導を行っており、暴言や脅迫を行っていなければパワハラにはならないのです。
上司にとって部下を注意、指導するということは業務のひとつ。「パワハラの疑いを掛けられるくらいなら……」と尻込みしがちですが、上司として毅然とした態度で注意、指導を行いましょう。
業務時間外の指示は要注意
また最近ではLINEを業務連絡に利用する企業も増えています。LINEは24時間いつでもメッセージが送信できるので、上司としては部下に対して指示を送りやすくなっています。
ある上司は昼夜を問わず、部下に対して業務の指示を出していました。これが部下にとってストレスとなり、パワハラだと訴えてきました。
この場合はパワハラに当たる可能性があります。勤務時間外に送るメッセージは本当に送る必要があったのかということが問われます。
いくら業務に必要な指示であったとしても、勤務時間外に送るメッセージには緊急性を必要とするものだけに限られてきます。「明日の朝、これをやっておいてください」というようなメッセージは明朝伝えればいいわけで、夜に送る必要性はありません。
LINEは便利なツールゆえに、気軽に使いたくなってしまいます。しかし勤務時間外に利用することはパワハラにつながりやすくなります。
上司も部下も、パワハラに敏感になりすぎないように!
パワハラは社会問題となっていますが、行き過ぎた行為などがパワハラにあたります。業務上必要な行為を適切に行っていれば、パワハラには当たることはありません。
LINEを利用する場合も、勤務時間内に利用するならパワハラにはなりませんし、便利なツールとして使い続けられます。
パワハラに対して、敏感になりすぎると業務に支障をきたしてしまうかもしれません。上司も部下もパワハラの定義をしっかり理解しておくことが必要です。