飛行機が砂漠に墜落して乗客が協力して脱出に成功するという、これだけでは何の変哲もないストーリーなのですが、実は脱出の方法が奇想天外で、しかも飛行機に詳しい人も納得してしまったという映画がありました。
公開から40数年たって、再びリメイク版が公開された『飛べ!フェニックス』(リメーク版=『フライト・オブ・フェニックス』)です。飛行機は、今では珍しくなった双胴機。2つの機体を並列に連結し、見た目は両翼にそれぞれ1機ずつの飛行機があるような、風変わりなスタイルです。それぞれパイロットを乗せることで長距離飛行に有効だ、という設計思想から生まれたものでした。
使えるところだけを使って飛行機を作り直す
水がなくなり、助けも来ないという状況で、飛行機の設計技術者を名乗るドイツ人乗客が墜落機の機体で使えるところをつなぎ、小さな単発機に仕立て直して離陸させようと発案します。
他に方法はないのでみんなで協力して作業に取り掛かるのですが、最後の最後になり、この発案者が実は模型飛行機の設計者だったことが分かり、不信感が爆発。一触即発の事態となるというのが映画のクライマックス。こうして、なんとか機体が完成。『フェニックス』と名づけられた小さな飛行機の翼に残った乗客がぶら下がり、丘の上から離陸するというラストシーンでした。
諸外国では通じない言葉なのでご用心
これが実は、工学やシステムの分野でいうところのリストラクチャリング(Restructuring)。手持ちの材料を組み合わせて新しい仕組みを再構成するという意味です。『フェニックス』はリストラの結果もたらされた成果といえるわけですね。
このリストラクチャリングという言葉は後に、ソ連の体制崩壊の当時に使われたペレストロイカ(再構築)という言葉を英語に訳すときに用いられ、英語圏ですっかり定着してしまいました。こうして、日本には『事業の再構築』という意味で上陸したのですが、なぜか人員整理という部分だけが拡大され、日本ではリストラ=人員整理という経営用語となって一人歩きしてしまいました。本来のリストラがどんな意味だったかは忘れられたまま。当然のことですが、この使い方、海外では通じないのでご用心。
バブル崩壊以後、英語に置き換えたことで印象を和らげたという向きもあるのですが、最近になって、『組織再構築』や『組織の建て直し』といった日本語に置き換えることも少なくないようです。