安倍内閣総理大臣は、政権発足後から女性の社会進出を積極的に推進する意見表明をしています。これに伴い、雇用機会の均等化、指導的立場に就く女性の増加を目指し、女性活躍担当の大臣職を新設するなどの施策も実行。そして、2014年には男女雇用機会均等法が改正されました。
男女雇用機会均等法とは
男女雇用機会均等法は、1985年に制定され、翌1986年より施行された法律です。就職や職場の環境における男女差別をなくすことを目的に作られ、募集・採用を含め、昇給や昇進など、性別に関係なく雇用を平等にすることを定めています。
また同法は制定後、1997年と1999年、そして2007年に改正された歴史を持ちます。セクシュアル・ハラスメントの防止や、男性に対する差別が行われるケースも排除したりすることが目的で、当時は報道でも注目を集めました。
2014年7月1日から「間接差別」の対象範囲が拡大
男女雇用機会均等法は、近年でも新たな枠組みとなるべく再度の見直しが行われ、2014年7月より改正案が施行されました。これによって性別にかかわらず男女がより働きやすい社会へと変わることが期待されています。
今回の改正で目玉となったのは、「間接差別」の対象範囲拡大です。間接差別とは、性別以外の事由で条件が定められた雇用・採用方式のうち、一方の性別と比較した際に、もう一方の性別が不利益を被ってしまうような状態を指します。
具体的には募集や採用、昇進などにおいて、長期的な転勤が可能であることを要件に組み込むことが挙げられます。このケースでは、子どもがいる女性が応募できなくなってしまう可能性があり、男性に比べて女性のほうが不利益を被ると判断できます。
職場におけるハラスメントの予防・事後対応の徹底などの明確化
さらにこの改正では、近年話題となっているマタニティ・ハラスメントによる、妊娠・出産・育児における休業などを理由として解雇や異動、待遇の変更を禁止することが盛り込まれています。
その他にも、異性だけでなく、同性からの嫌がらせもセクシュアル・ハラスメントに該当することが定められるなど、より現在の世情に合うように改正が行われ、予防や事後対応を徹底するよう義務付けられたことが特徴的です。各事業主は、政府の発表するガイドラインに従うよう求められています。
仕事をする上で気をつけたい男女雇用機会均等法のポイント
これらの改正のポイントから、人事、管理職だけでなく一般社員でも気を付けなければならないことが増えてきたとも言えそうです。
特に、問題視されているのが妊娠・出産、育児休業を理由とする不当な扱いについて。労働者から行政に寄せられる相談件数も増加しており、内容としては出産・育児休暇の取得時に休業ではなく退職を迫られるというものが多いようです。
これらの休暇は、その他の休暇と比べても取得日数が長くなりがちで、結果的に、その間の補充人員の確保や、業務の引き継ぎが求められるます。これでは同僚は負担が増えてしまうだけです。
また、男性の育児休暇は、日本にはまだ馴染みの薄いもので、戸惑ってしまう方もいるかもしれません。 だからといって退職を促して職場復帰の意思を摘み取ってしまうと、法律違反となってしまいます。
コンプライアンスも含め、さまざまな事情を抱える社員といかに柔軟に対応するかが重要です。今回の男女雇用機会均等法改正を、社員全員が気持ちよく仕事ができるように環境を整備するきっかけにしてみてはいかがでしょうか。