Vol.31

なぜ、僕らは“創人(つくんちゅ)”になったのか~沖縄UIターン転職者に聞く「琉球Tech」の意外な可能性

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レキサスの村濱一樹氏と、常盤木龍治氏

(写真左から)レキサスの村濱一樹氏と、常盤木龍治氏

「まだ東京で消耗してるの?」

そんなイケダハヤト氏のブログでの問いかけがネットで賛否両論を巻き起こすなど、近年のワークスタイルを考える上で外せないキーワードとなりつつある「地方移住」。

IT・Web業界に限って言えば、通信環境やコミュニケーション&コラボレーションツールの進化によって、日本国内どころか世界中どこでも時間と場所に関係なく開発業務ができるようになっている。地方へ生活拠点を移し、のどかな住環境で開発をこなすのは、かつてほど難しいことではなくなった。

しかし、首都圏と地方の経済格差はいまだに解消されておらず、情報と人材が集まる大都市を離れて仕事をしていくには勇気がいるのも確かだ。精神的に「消耗」することは少なくなったとしても、職業人としてのスキル・知識レベルで消耗していくかもしれないという不安が付きまとう。

そんな地方移住の良しあしについてあれこれ議論するよりも、実際に行動に移した人の話を聞く方が生産的……ということで、今回、いくつかある地方IT都市の中で、沖縄にUIターン転職をした2人に話を聞いた。

1人は、大手通信関連企業に新卒入社して大阪や福岡で働いた後、故郷である沖縄のIT企業レキサスへUターン転職をした村濱一樹氏。もう1人は、インフォテリアやSAPジャパンでのエバンジェリスト職を経て、2014年に同じくレキサスへIターン転職をした常盤木龍治氏だ。

大都市を離れ、“創人(つくんちゅ)”として働く彼らによると、沖縄には「住み心地の良さ」だけでなく技術開発の面でも大きな可能性があるという。

プロダクトアウトで勝負するIT企業が沖縄に増えつつある理由

複数企業でエバンジェリストとして活躍し、全国各地のIT企業やITコミュニティに精通する常盤木氏
複数企業でエバンジェリストとして活躍し、全国各地のIT企業やITコミュニティに精通する常盤木氏

「私は14年間、東京のIT企業でプロダクトビジネスに携わってきましたが、エバンジェリストとして日本全国のさまざまなお客さま先に足を運ぶ中で気付いたことがあります」

常盤木氏はそう話を切り出しながら、地方都市に拠点を置く企業が抱える課題を2つ挙げる。最新のITソリューションに触れる機会の少なさと、ソリューションを提案する事業者の少なさだ。この両面の理由から、やはり地方と首都圏の間に格差が存在していることは否定できないと話す。

だが、プロダクトアウトで全国、ひいては世界進出を目指す場合は状況が異なると常盤木氏は続ける。

「プログラミングを例に挙げるまでもなく、開発の仕事は“内に篭る”というか、ものすごく集中して作業することが多いですよね? 東京で働く場合、通勤や住環境含め、ハイストレスになりやすい状況で仕事を続けることになるわけですが、沖縄にはオフィスから一歩出ればすぐに気分を一新できるような大自然があります。大都市部で働くのと比較した場合、沖縄のエンジニアはストレスなくプロダクト開発に臨めるんです」

事実、かつては人件費の安さなどから「大規模コールセンターを置く場所」として認知されていた沖縄にも、近年はプロダクトアウトで勝負しようとするIT企業が徐々に増え始めているという。

総務省の統計調査によると沖縄は全国で最も人口増加率が高く、人口減に悩む他の都道府県を尻目に2025年まで144万人程度に増えるという試算も出ている(参照記事)。こうした側面や、製造業の少なさからIT・Web産業を盛り上げていこうとする県の動きも、企業の沖縄進出(または沖縄での事業拡大)を後押ししているのだ。

中でも2人が在籍するレキサスは、法人向けクラウドサービスの『レキサスクラウド』や低価格のARサービス『LEXUES AR』、スマートデバイス向けアプリの『ADOC』、『beatmaster』、『ぴらつかこよみ』など、さまざまな革新的プロダクトを開発・提供する沖縄屈指のテクノロジー企業として全国で知られている。

「私が東京を離れてレキサスへ転職した理由の一つは、まさにこの点にあります。沖縄には、ほかのどの都市よりもプロダクトアウトで世界進出するのに適した環境があると感じています」(常盤木氏)

現在はWebエンジニアとして開発の最前線に身を置く村濱氏も、働く環境の良さという点で沖縄は理想的だと話す。

「レキサス本社のあるうるま市の『沖縄IT津梁パーク』は海沿いにあるので、コーディングに疲れても窓の外に目をやれば一面に広がる海が見えますし、会社から徒歩1分の場所にはマングローブもあります。集中して開発した後にすぐリフレッシュできるのは、ものすごい利点です」(村濱氏)

それに加えて、レキサスでは月に何回かリモートワークをしてもいいことになっており、煮詰まったら外のカフェなどで仕事をするのも可能だと村濱氏は言う。

レキサスは全社員の5割以上がUIターン転職組とのこと。2人が話すような利点が、エンジニアを惹き付ける要因となっているのは間違いない。

大都市との「情報格差」を埋めるための工夫と利点

沖縄IT津梁パークから望むことができるという世界遺産の『勝連城跡』の一帯

From kanegen:沖縄IT津梁パークから望むことができるという世界遺産の『勝連城跡』の一帯

では、冒頭でも記したような、エンジニア個人としてのスキル・知識レベルの消耗はないのだろうか。

村濱氏に聞くと、「最新の業界動向を知るのは、やはり東京をはじめとした大都市の方がやりやすい」と実情を明かす。ネットに出回っている技術情報はさておき、勉強会やコミュニティ、各種ITイベントへの参加によって得られる「ヒト経由の知見」や、メディアが取り上げないような業界情報が入ってこなくなるからだ。

とはいえ、地方で働く最大のデメリットになりそうなこの点においても、沖縄には他の地方IT都市とは違った解決法があると2人は言う。

沖縄のJavaプログラマーコミュニティ『Java Küche』で会長を務めている村濱氏によると、「積極的にイベントを開催すれば、首都圏のIT企業に勤めている著名なエンジニアの方々が喜んで講師として来てくれる」と言う。

「沖縄だと、リゾート地への旅行感覚で来ていただくことができるからでしょうね。この点は、他の都道府県にはない強みです。2014年は『JavaOne』の報告会や『Agile Japan』のサテライト会場を開いたりしましたが、東京からお招きしたかった方の多くがゲストとして来てくださいました」(村濱氏)

「ほかにも、昨年はレキサスとパートナーシップを結んでいるサイボウズと共に『kintone』 の世界初の共同ハッカソンを開催したりもしています。ビーチサイドに建つサンセットジャグジー付きのコンドミニアムで、美味しいビールを飲みながらやるハッカソンは、都心で行うものよりも開放的なアイデアが出てくるので、サイボウズをはじめとした参加者の皆さまにも満足していただけました」(常盤木氏)

主体的に動きさえすれば、どこにいたって情報格差を埋めることができる――。この普遍の定理を、沖縄の持つ地の利はさらに後押ししてくれるということだろう。

新しいモノづくりを後押しするのは沖縄特有の「許す文化」

故郷の沖縄で「CTOになる」のが目標という村濱氏(写真はレキサス採用ページより)

故郷の沖縄で「CTOになる」のが目標という村濱氏(写真はレキサス採用ページより)

最後に、常盤木氏はIターン転職者として実感している文化面の素晴らしさを、プロダクト開発に絡めてこう話す。

「温暖な気候、自然信仰や先祖崇拝、地政学的な文化交流の歴史や、第二次世界大戦前後の辛い時期を乗り越えてきた背景、雄大な自然、そして人。沖縄には『許す文化』というか、何事も許容してくれる器の大きさがあるんですよね。こういう文化的な側面は、これまでになかった新しいモノを想像・創造する上で、とても大事なんです」

常盤木氏は東京からレキサスへ転職してからの約半年間、ゲストハウスに住んでいたそうだが、そこで過ごした人たちの温かさやおおらかな考え方に衝撃を受けたという。自分だけでなく、みんなで幸せに過ごそうという県民性は、「テクノロジーは人を幸せにするものであるべき」という常盤木氏のポリシーを貫く上でもアドバンテージになると感じている。

「ビジネスをやっている以上、利益を上げることは大切です。ただ、売上至上主義で利益を追い、四半期ごとに成否を判断するような事業のスタイルでは、新しいプロダクトの開発に挑戦しづらいのも事実。その点、沖縄特有の『許す文化』はモノづくりと相性が良いと思うんです。レキサスにも、このカルチャーが根付いていると実感しています」(常盤木氏)

「沖縄のゆったりした空気感は、他の都道府県出身の人からすると想像以上(笑)。その雰囲気に流されず、自走できるエンジニアじゃないと、ダラけてしまうかもしれません。でも、『何か新しいモノを創りたい』、『テクノロジーでこんなことがしたい』という強い思いがある人なら、沖縄ほど快適に仕事ができる場所はないと思います」(村濱氏)

2人が沖縄で“創人”として働く理由は、「温暖な気候」や「開放的な土地柄」などという表面的な魅力よりもっと深いところにあるようだ。

≪追加情報≫
■レキサスほか沖縄の情報通信企業へのUIターン転職情報を発信するサイト『沖縄ITパーク』はコチラ

取材・文/伊藤健吾(編集部)

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