Vol.89

「コードで食っていく」は何歳まで可能か?エンジニア300人調査で見えた理想と現実

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【特集】「コードで食っていく」は何歳まで可能か?

各所でプログラマー不足が叫ばれる昨今。にもかかわらず、企業で働くエンジニアの中には、勤め先の要請によって「開発業務(コーディング業務)」から身を引かねばならない人も少なくない。なぜ、このような矛盾が生まれるのか。エンジニアが「好きな開発」と「キャリア形成」をうまく両立させる方法はないのか?データ分析と著名人対談を通じて考える。

「論よりコードを」、「許可を求めるな謝罪せよ」、「アイデアを思いついたら、まず自分自身でビルドせよ」。

こうしたプログラミング界隈の名言が示すのは、エンジニアたるもの「コードを書くこと」で存在証明をしていこうという基本姿勢だ。約3年前、Rubyの生みの親であるまつもとゆきひろ氏に弊誌が取材した時も、「あくまで持論だが」と前置きをした上でこのような名言を残してくれた。

【人はコード書きから離れては生きていけない】

この言葉に共感する若手プログラマーは多いのではないだろうか。ただし、同氏は別の取材でこうも語っていた。

【技術だけで生きるというのは幻想である】

発言の真意は過去記事に譲るが、開発を進めていく上でコーディング以外の仕事をこなさなければならないのはよくあることだ。それが自ら選んだことで、例えば名著『Team Geek』で言うところのサーバントリーダー(部下を管理するのではなく、仲間を支えるために立ち振る舞うリーダーのこと)のような仕事のために「コード書きから離れる」のであれば、納得感もあるだろう。

しかし、日本のIT・Web企業では、プロジェクト/チームメンバー管理のため、または昇進・昇格制度の一環としてプログラマーが強制的に開発業務から引き剥がされることもままある。

老いも若きも「創る人」であることに変わりはない。コーディングは本来、年齢や役職を問わず実力を発揮できる場所だが...
From Bran Sorem
老いも若きも「創る人」に変わりはない。プログラミングは年齢や役職を問わず活躍できる世界だが...

特に日本のIT産業では、一時期「プログラミングから離れてSE、PMになることが一人前」という風潮すらあった。今でもこうした制度や文化を持つ企業に勤めるエンジニアは、キャリア形成の面で大きな悩みを抱えることになる。

最近は上記したような風潮が徐々に消えつつあるものの、果たしてプログラマーのキャリアパスは明るいものになっているのか。それを調べるため、今回弊誌はIT・Webエンジニア300名にアンケートを取り、勤め先でのキャリアパスについて調査した。

その調査結果を簡単にまとめると、このようなものだった。

■ 約4割のエンジニアが、ある時期を境に「開発業務(コーディング業務)」から完全に離れなければならないと回答

■ その傾向は、大手~準大手企業ほど強まる

■ 技術専門職のキャリアパスを用意する企業は半数を超えるが、「専門職になれる割合」は5%未満という企業が最多

■ マネジャー以上の年収分布では、技術専門職より一般管理職の方が年収が高い傾向に

以下、調査結果を詳しく分析していこう。

【調査概要】
■ 調査対象: 22~65歳のIT・Webエンジニア
■ 調査方法: 『エンジニアtype』SNSフォロワーおよび転職サイト『@type』会員へのWebアンケート
■ 調査時期と有効回答数: 2016年3月8日~15日 / 300名
■ 勤務先: ITベンダー(22.3%)、Web・アプリ(17.2%)、事業会社の情シス(12.8%)、SIer(12.2%)、通信(4.4)、ゲーム(0.7%)、その他(30.4%)
■ 勤務先の業務内容: 受託開発(47.3%)、自社製品・サービス開発(34.0%)、両方(18.7%)
■ 回答者の役職: 現場メンバー(42.3%)、マネジャー以上(55.0%)、フリーランス(2.7%)

多くのエンジニアの希望よりも早い時期に「キャリア最初の節目」が来る

まずは、回答してくれたIT・Webエンジニア300人の希望として「何歳まで開発業務(コーディング業務)を続けたいか?」を聞いた。

最も多かったのは【61歳~】で、人によってコードを書く時間と量はまちまちであっても「できるだけ長くプログラミングに携わっていたい」という気持ちが読み取れる結果となった。

次に大きなボリュームゾーンは【30~45歳】まで。その理由は、「以降は開発業務とは別の役割をやりたい」が37.6%と最多だったが、他には「開発業務を離れた方が高給をもらえるから」(23.7%)、「プログラマーより別の役割(SE、PM、ディレクターなど)の方が評価されるから」(12.9%)など、昇進・報酬面での限界を感じている人が目立っていた。

さらに、【30~45歳】までと回答した人の中には「それ以上は最新技術を追い続けるのが難しいと思うから」(18.3%)という声も多く、継続的に技術をキャッチアップしていく難しさを感じる一面も。これを理由に自らの意思で開発から離れていくエンジニアも一定数いるということだろう。

では、会社都合によって開発から離れなければならないエンジニアはどれくらいいるのか? その調査結果が【Q2】である。

役割上コーディングできる時間が減る/プロジェクトの都合で一時的にコーディング業務から離れる場合を除き、技術職のキャリアパスとして開発業務(コーディング業務)から「完全」に離れなければならないタイミングがあるか? と尋ねたところ、約4割のエンジニアが【ある】と回答。過半数を超えなかったとはいえ、やや寂しい結果となった。

この質問への回答を、勤め先の規模別に分析してみると、

■ 大手(従業員1000名以上)~準大手企業(300~999名)だと過半数以上が「ある」と回答

■ ベンチャー(従業員50名以下)~中堅企業(51~299名)だと、逆に「ない」が7割越え

となり、規模の小さな企業の方が長く現場で仕事ができるという傾向も見えてきた。

小規模なチームのエンジニアはマルチタスクにならざるを得ないという台所事情はあるだろうが、チームの規模が大きくなると、良くも悪くも「管理の仕事」に就かないと昇進できないという現実も透けて見える。

さらに、【Q2】で「ある」と答えた人たちが、どの役職になると開発業務から完全に離れなければならないかと調べたところ、以下のような結果となった。

実に6割以上のエンジニアが、課長に相当するポジションまでに開発から足抜けしなければならないという。これは、【Q1】で大体40歳前後に開発(コーディング)業務から離れると答えた人たちに多かった

「開発業務を離れた方が高給をもらえるから」

「プログラマーより別の役割(SE、PM、ディレクターなど)の方が評価されるから」

といった理由が関連していると推測される。「創る人」としてのキャリア形成で最初の節目が、まさにこのくらいに訪れるということなのかもしれない。

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