Vol.251

複数のポジションを兼任するエンジニア必見のツールを使った頭脳切り替えのススメ。PMドリブンのプロダクト成長を実現させる秘訣とは?【及川卓也のプロダクトマネジャー探訪】

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【連載】及川卓也のプロダクトマネジャー探訪

昨今、日本でも注目度の高まっているプロダクトマネジャーの仕事。しかし、業界内における人数の少なさから、その職責やジョブディスクリプション、どうすればプロダクトマネジャーになれるのかetc...といった部分はまだまだ不明確だ。そこでこの連載では、マイクロソフトやGoogle、Incrementsで長くプロダクトマネジメントのスキルに磨きをかけてきた及川卓也氏を聞き役に迎えて、各社のプロダクトマネジャーが日々行っている業務や、愛用しているツールを紹介しながら仕事ぶりに迫る。

第6回となる今回は、医療・ヘルスケアの分野でオンライン医療事典の運営やオンライン診療アプリなどを提供するメドレーで、CTOとPMを兼任する平山宗介氏に話を聞いた。

大手SIer出身で、グリーの開発エンジニア、リブセンスでCTOとして活躍したキャリアを持つ平山氏がメドレーにジョインしたのは2015年。以来、事業が急ピッチで拡大する中で、エンジニアがプロダクトを支える体制の整備と人材の教育・育成に取り組んできた。

そんな平山氏との対談から、今回は以下の4つの軸に焦点を絞って、エンジニアがPMを目指すにあたって身につけるべき姿勢や取り組むべき課題を見いだしていく。

■PMの業務範囲と職責
■PMに向いている人
■PMの仕事術
■PMを目指す人へのアドバイス

メドレー 取締役CTO 平山宗介(ひらやま・そうすけ)氏日立ソフトウェアエンジニアリングで業務システムの開発に従事した後、手がけたプロジェクトが未踏ソフトウェア創造事業に採択されるなどの実績を経てグリーに転職。フリーランスのエンジニア、リブセンスでCTOを務めたのち、2015年にメドレーへ。取締役CTOおよびPMとしてプロダクト開発を牽引している

及川卓也(おいかわ・たくや)氏早稲田大学理工学部を卒業後、日本DECに就職。営業サポート、ソフトウェア開発、研究開発に従事し、1997年からはMicrosoftでWindows製品の開発に携わる。2006年以降は、GoogleにてWeb検索のプロダクトマネジメントやChromeのエンジニアリングマネジメントなどを行う。2015年11月、技術情報共有サービス『Qiita』などを運営するIncrementsに転職。17年6月より独立し、プロダクト戦略やエンジニアリングマネジメントなどの領域で企業の支援を行う

【PMの業務範囲と職責】プロダクトの拡充を実現するために

(左から)及川卓也氏、平山宗介氏

(左から)及川卓也氏、平山宗介氏

及川 メドレーには現役の医師がフルタイムの社員として在籍していて、医療・ヘルスケアの分野で新しいプロダクトを手がけていますね。その中で平山さんが行なっているPMとしての業務範囲や職責について教えてください。

平山 まず、現在メドレーには次の4つの主力事業があります。

【1】医師たちがつくるオンライン医療事典「MEDLEY(メドレー)
【2】スマートフォンなどで診察が受けられるオンライン診療アプリ「CLINICS(クリニクス)
【3】医療介護分野の人材不足を解消する求人サイト「ジョブメドレー
【4】口コミで探せる介護施設の検索サイト「介護のほんね

この4つの事業を横断する組織として開発本部を置いています。その開発本部全体を統括するのが僕の役割ですね。

及川 なるほど。「CLINICS(クリニクス)」は比較的新しいプロダクトですが、平山さんがメドレーにジョインした当初はどのような役割をしていたんですか?

平山 2015年に私がジョインした当時は、創業時からのプロダクトである「ジョブメドレー」に加え、「MEDLEY(メドレー)」「介護のほんね」の提供を開始したばかりの時期でした。プロダクトが次々に立ち上がっていく中で、それらをエンジニアリングの力で伸ばしていくことが僕のミッションでしたね。

及川 たしか平山さんが以前に在籍していたグリーでは、エンジニアがプロダクトの数字も見ていかなければいけないと聞きました。新しいプロダクトを立ち上げるにあたり、そういった数字的な視点が役に立った部分もあるのでは?

平山 そうなんです。当時のグリーではエンジニアがプロデューサーを兼任しているような感じでしたからね。そういった視点が身に付いていたからこそ、当時何もないところから数字を作っていくということに対して抵抗はありませんでした。

及川 平山さんのキャリアで言うと、グリーの後はリブセンスのCTOとして活躍してきたそうですね。そうした経験やキャリアを持っていると、新しく転職した先でもエンジニアたちから無条件に信頼を寄せられる“信頼貯金”のようなものがあるように思うのですがどうでしたか?

平山 メドレーに入った時は特に意識はしていませんでしたね。僕自身、よそから来た人がえらい顔をしているのは嫌いなタイプだったので(笑)

及川 PMたるもの、ある程度エンジニアたちからの信頼を得ることも必要だと思うのですが、そこはどのようにポジションを作り上げていったのですか?

平山 僕はまずひたすらコードを書いていました。自分が開発した結果がプロダクトをどう向上させられるのか見せていくことで、エンジニアだけでなく、ビジネスサイドからの信頼も貯金していけたのかなと思います。

【PMに向いている人】技術やスキルを活かし、社会にどんな価値が提供できるかを考えられる人

及川 先ほど4つの事業分野を横断する開発本部にエンジニアが在籍しているという話がありましたが、それぞれにPMがいるわけですか?

平山 事業ごとにPMを置いています。

及川 みなさんエンジニアとしてのバックグラウンドを持っているわけですか?

平山 いいえ、1人はデザイナー出身ですね。

及川 平山さんは現在、CLINICSのPMでありながら、CTOとして他事業のPMを率いる立場でもあります。今メドレーでPMを務めている人たちはそれぞれバックグラウンドが違う中で、平山さんはCTOとして彼らをどのように束ねているのですか?

メドレーの事業についてその特徴を説明する平山氏

平山 メドレーでは4つの事業分野それぞれにPMのほかに事業部長がいる2TOP体制をとっています。事業部長とPMが対等の立場でプロダクトをどう拡充していくかをディスカッションします。つまり、プロダクトを開発するエンジニア・デザイナーとそれを顧客に提供するビジネスサイドが互いの役割と職責をしっかり理解しつつ業務を進めていくわけです。私の役割は、各事業のPMがビジネスサイドに視点を広げるサポートをしたり、全社的に見た最適な姿を示したりすることだと思っています。

及川 エンジニアの側はどうしても技術で実現可能なものとそうでないものという視点からプロダクトを考えがちで、ともするとそこで矛盾や対立になりがちです。そこをコミュニケーションを活発にすることでお互い納得して仕事を進めようというわけですね。

平山 必ずしも理想どおりに進んでいるわけではありませんが(笑)、この体制によりプロダクトの成長は加速すると考えています。僕はエンジニア全員がエンジニアリング以外の領域に視点を広げてほしいと思ってるんですよ。

及川 エンジニア全員にですか?

平山 もちろん自分の専門分野や専門領域を深掘りしていきたい、突き詰めていきたいと考えるエンジニアもいますが、メドレーが提供するものをはじめ世の中の多くのプロダクトでは、圧倒的に高度なアルゴリズムや技術を必要とするものは稀だと思います。それよりも、技術を活かすことで社会にとってどんな価値を提供していけるかを考えて開発できる力こそ、メドレーのエンジニアに求められる力だと思っています。

及川 そういう意識を持ってもらうためにも、それぞれの事業分野ごとにPMを設けた体制にしているわけですね。

【PMの仕事術】“まずは作ってみる”エンジニアがプロダクト初期段階から携わることのメリットとは?

及川 この連載ではいつもPMの方が活用しているツールや発想法をうかがっています。平山さんはどうですか?

平山 ドキュメンテーションにはesaを、コードにはターミナル、デザインをする際にはAdobeCCやSketch、InVisionなどを使っています。

及川 平山さんの場合、CTOとして会社のプロダクトがめざす方向性と、それを技術と開発とで実現していくPMとしての立場の両方を兼ねています。その切り換えはどのように?

平山 会社やプロダクトが目指すものについては、とにかく最初は“絵”にしてみるんです。事業やビジネスを絵にして抽象化することで構造的な部分がよく理解できるので、頭の中が整理できるんですよ。その時はまだ、どうやって開発するかは考えず、プロダクト全体の構想をまずまとめます。

及川 “絵”にするというと、実際にはどのような作業を行なっているんですか?

平山 コンセプトはPowerPointを使って“見える化”します。より視覚的に捉えたいときにはAdobeソフトなどを使うこともありますね。基本的にワイヤーフレームを書くのは手書きやSketchが多いです。

意外にもポストイットを多用していると語る及川氏

及川 それは面白いですね。私も最近はアイデアをポストイットに書いて貼りまくっていますよ。やっぱりアナログだと頭が整理される感覚があるんですよね。

平山 そうなんですよ。それに、手書きだと文脈というか、その時感じた“心”も記しておくことができる。どういった動機を持ってそのアイデアを残したかなどが後から見ても分かるんです。

及川 一方、PMとして開発を進めていく場合は先ほど言っていたようなツールを活用することでうまく切り換えているわけですね。

平山 各PMから進捗状況の報告があるので、それを確認して問題や課題があれば対処するようにしています。僕自身は「リーン・スタートアップ」の概念やノウハウが考え方の基本になっています。つまり、あまり手間やコストをかけずにまず開発をしてみて実際にプロダクトやサービスのたたき台を提示する。

及川 開発プロセスがスクラムのようなアジャイルに近いということですか?

平山 そうですね。特にスクラムやアジャイルと意識して進めているわけではないですが、結果としてそれに近い開発手法になっています。ここまで視野に入れると、エンジニアがプロダクトデザインに初期から関わる価値は高いと思います。エンジニアが自らプロダクトの構想を練り、理想的なプロダクトの姿をまず開発して示してみることまでできる。プロダクトそのものの構想と、開発工数などの現実面とのバランスが取れたデザインが可能になると思います。

【PMを目指す人へのアドバイス】エンジニアの等身大評価がサービス向上の近道

及川 これからPMを目指そうというSEやエンジニアへ、何かアドバイスをお願いします。

平山 僕はSIerからキャリアをスタートしているということもあり、顧客の課題解決に徹する姿勢は今でも持ち続けています。

及川 受託開発や業務請負はエンジニアにとって「受け身」や「使い捨て」というマイナスイメージを抱く人が多いですよね。

平山 エンジニアリングをベースにプロダクトを成長させることは、とてもやりがいのある仕事だと私は感じています。私自身、SIerから自社のプロダクトを提供するスタートアップへと環境と立場が変わったことによって、同じ技術や開発手法でも新しい価値を社会にもたらしていけるという可能性を実感できたことが大きいですね。

及川 発想やアイデアを、価値あるプロダクトの実現へと進化させていけるのもエンジニアが持つポテンシャルの一つということですね。

平山 そうです。受託開発や業務請負、顧客先への常駐といった現場で”言われた通りに開発する”経験が長くなると、どうしてもエンジニアは自分と自分の仕事を過小評価しがちです。でも、実は世の中の幅広い分野や領域に大きな貢献や価値を生み出していけるということを自覚してほしいですね。

及川 「卑屈になるな!」と(笑)。

平山 本当にそう思います。エンジニアがエンジニアだけのコミュニティに閉じこもっているままでは、新しいプロダクトを生み出したいと考えているビジネスサイドとの間に対立が生まれるだけです。エンジニアも自分たちの知識やスキルをどう活かせるか理解してもらうよう努力すべきですし、ビジネスサイドにも、エンジニアの存在理由や存在価値を等身大で評価してほしいですね。

及川 なるほど、そんな関係づくりができる環境や職場づくりもPMの役割と言えそうですね。

平山 結局は、人としての常識や良識を備えた「人間力」や「人徳」ということになると思うんですけど、お互いの理解と納得感を深めるコミュニケーションを築く努力はPMを目指す、目指さないに関わらず、すべてのエンジニアに必要な課題だと思っています。

及川 エンジニアとしてキャリアの幅を広げるには、コミュニケーションも必要というのは僕も大いに賛成します。いろいろと興味深いお話をありがとうございました。

熱く対談を繰り広げる平山氏と及川氏

取材・文/浦野 孝嗣 撮影/佐藤健太(編集部)

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