Vol.160

「未来のエンジニアたちにPythonの魅力を伝えたい」初心者向けワークショップも豊富な『PyCon JP 2016』ガイド

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応用できる分野の幅広さや活用できるライブラリの豊富さで、着実にすそ野を広げているプログラミング言語のPython。海外から著名なPythonistaを呼び、年に1度、多くのPythonistaたちが集結する国内最大規模のコミュニティイベント『PyCon JP 2016』が、今年も9月20日~24日の5日間で開催される(20日は有料チュートリアル、23~24日はスプリントを開催)。

『PyCon JP 2016』のWebサイト

PyCon JP 2016』のWebサイト

PyCon JPの大きな特徴は、開催を重ねるごとに事務局メンバーに新しいスタッフが加わっていることだ。過去3年、参加者数が500人超を記録するなど活況だが、自発的にイベントを支える運営スタッフも来場者数と比例するように増えてきた。

今年の『PyCon JP 2016』でも、彼ら運営スタッフが企画した数々のセッションが催されるが、中でも注目なのが小学校高学年~高校生を対象に開催される「Youth Coder Workshop」や、Python初心者向けの「ビギナーセッション」である。

これらは、Pythonのみならずさまざまなプログラミング言語を学ぶ若者が増えている昨今の時流を受けて、コミュニティとしても「未来のエンジニア」育成を支援していこうという姿勢が具現化されたものだ。

例えば「Youth Coder Workshop」は、9月22日の午前・午後の計約3時間をかけて、Pythonを使ってプログラミングの基本を学びながら「でんのう地図」を作るという試み。PyCon JPではこれまでにも子どもや初心者を対象としたワークショップを行ってきたが、今年は「プログラミングのイロハから学びたい」と思っているような層や、カジュアルにプログラミングを学びたいと思っているような若者たちにもPythonの魅力を伝えるべく、これまでより凝った内容のワークショップにするという。

>> 小学校高学年~高校生を対象に開催される「Youth Coder Workshop」の詳細情報と応募はこちら

今回は、「Youth Coder Workshop」を企画した1人である濱田侑弥氏と、「ビギナーセッション」を担当する舛岡英人氏に、企画した意図や今年の『PyCon JP 2016』の見どころなどについて話を聞いた。

「Pythonは教育用にも優れた言語」

(写真左から)「Youth Coder Workshop」の企画者である濱田侑弥氏と、「ビギナーセッション」を担当する舛岡英人氏

(写真左から)「Youth Coder Workshop」の企画者である濱田侑弥氏と、「ビギナーセッション」を担当する舛岡英人氏

濱田氏、舛岡氏に共通しているのは、今年初めてPyCon JPの運営スタッフになったことだ。

舛岡氏はPreferred Infrastructureに入社後、スマホ向け広告配信プラットフォームを開発するインティメート・マージャーに出向した。同社に入るまで業務でPythonを触る経験はなかったそうだが、出向後にPyCon JPの存在を知る。

Python製のディープラーニングフレームワークであるOSS『Chainer』のコミュニティ活動に携わるようになったことから、Pythonコミュニティともかかわるようになったのだ。

「これまでの僕は、特定の言語が好きとか専門というわけではなくて、それぞれの長所や短所を見極めつついろんなコミュニティを少しずつのぞいて来ました。その経験から言えば、Pythonコミュニティは『中立』な感じがして参加しやすい。いろんなバックグラウンドの人たちが活動している印象です」(舛岡氏)

一方、濱田氏は2015年12月からフリーランスとして活躍しているエンジニア。主にWebサービスの開発を手がけて約7年のキャリアがある。ただ、舛岡氏と同様に、業務でPythonを使った経験はほとんどないという。

「Pythonに触れたのは完全に個人的な興味からですね。Pythonで実装されたWebアプリケーションのフレームワークなどを試しているうちに、特徴やメリットをもっと知りたいと思ったのがきっかけです」(濱田氏)

Pythonistaとして日の浅い2人が、初心者向けの企画をした理由は何だったのか。濱田氏の動機は、大学進学時に小学校の教員免許取得を目指していたという原点があったからだ。

「大学在学中にプログラミングの面白さを知ってしまって教員の道はあきらめたんですが、エンジニアをやりながらつねにどこかで『プログラミングを使った教育』に取り組みたいと考えていたのが提案の理由です」(濱田氏)

他方の舛岡氏が今回、自らPyCon JPのスタッフになりビギナーセッションを担当する1人となったのは、前述の『Chainer』普及を考えたのがきっかけだそう。

「それにはまず、プログラミング言語としてのPythonの特徴やメリットを1人でも多くの人に知ってほしいと考えたのが、ビギナーセッションを企画した理由です」(舛岡氏)

子どもを対象にプログラミングの基礎を教える際は、Scratch(スクラッチ)のような初心者向け言語が用いられることが多い。それでも今回、Pythonを用いてプログラミング教育を行う理由は、もともとこの言語が学術・教育分野で利用されることの多いものだから。

濱田氏は、「Pythonは教育用にも優れた言語という印象があるので、そのメリットを伝えながらプログラミングの楽しさ、面白さを知ってほしい」と意気込む。

初心者向けから玄人好みのセッションまで。「多様性」をコミュニティが育む

今年初めて『PyCon JP』の運営スタッフとして参加している2人が語る、Pythonコミュニティの特徴とは?

今年初めて『PyCon JP』の運営スタッフとして参加している2人が語る、Pythonコミュニティの特徴とは?

こうして両セッションの開催にこぎつけた背景には、Pythonコミュニティには初心者も参加しやすい「門戸の広さ」があるからに他ならない。

舛岡氏が述べる「中立さ」をもう少しかみ砕いて説明するなら、「疑問に思ったことや質問に対する答えなんかがすごく丁寧で、みんな親切なので参加しやすい雰囲気がある」となるそうだ。

濱田氏も、「いざ運営側として参加してみたら、セッションの内容やゲストなどを自由に話し合いながらどんどん提案することができた」と話す。

「初参加の運営メンバーでも気兼ねなくアイデアを発信できることができて、新しいことにチャレンジできるというのが、Pythonコミュニティの魅力だと思います」(濱田氏)

今年のPyCon JPでも、こうして生まれたセッションが初心者向けのもの以外にたくさんある。

舛岡氏が提案し、実現したプログラムの一つは「招待講演」。今年の会場は早稲田大学理工学部となるが、同大学基幹理工学部の教授で早稲田大学グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所所長の鷲崎弘宜氏と、『Chainer』の開発を手掛けるPreferred Networksの得居誠也氏の2人が招待講演を行う。

この講演の狙いは、「PyCon JP参加者と接点が少ない分野の方々を招待し、参加者と講演者とが交流できる場所を提供すること」にあるという。

「Pythonを活用しているエンジニアに広く聞いてほしい、何か学んでほしいという思いもありますが、それ以前にまず自分が話を聞いてみたいというテーマであり、人物ということで提案しました。やはりPythonを使った開発の最前線で、今どんなことが進んでいて、どんな課題があるのかっていうのはすべてのエンジニアが興味を抱くことだと思っています」(舛岡氏)

Pythonを活用するエンジニア同士がただ親睦を図るのではなく、開発と応用の分野における現状と課題を共有するチャンスにしたいという思いも込められているのだ。

また、「Youth Coder Workshop」の企画者である濱田氏が注目するのが、やはり教育の一環で「Raspberry Piで日本の子供たちにプログラミングのパッションを伝えよう」と題するトークセッション。講師はベルギー出身で東工大に学んだAntoine Choppin氏。日本の大学に勤めていた経験もあるという。

「Raspberry Piを搭載した子ども向けのPC『Kano』を使ってプログラミングを学ぶセッションです。KanoにはPythonを使ったアプリがインストールされているので、プログラミングの入門編として最適だと思っています。子どもって、PCやプログラミングにかぎらず、いろんなことに興味や関心があって、いろんなことを経験したいと感じていると思うんです。なので、こういったセッションもオススメですね」(濱田氏)

今年の『PyCon JP 2016』のテーマは、「Everyone’s different, all are wonderful.」。このテーマ通り、セッションは「基礎から学ぶWebアプリケーションフレームワークの作り方」のような初心者向けの内容から、ディープラーニングやマイクロサービスといった玄人向けの技術解説など幅広く用意されている。

>> 『PyCon JP 2016』のトークセッション一覧はこちら

多彩なテーマに沿って現状と課題について認識を新たにする――『PyCon JP 2016』は、1つの言語ユーザーたちの集まりを超えて、プログラミングの最前線が実現する将来展望を提示する機会にもなりそうだ。

取材・文/浦野孝嗣 撮影/伊藤健吾(編集部)

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