Vol.146

【CA×GMO×楽天】大手3社の新人研修が示唆する、次の時代を生き残るエンジニアの条件

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【特集】エンジニア育成の新潮流

今年ももう7月。4月からの約3カ月で、多くのIT・Web企業が「新卒エンジニア」の育成で各種の研修や育成プログラムを展開してきたことだろう。だが、近年はシニアなエンジニアでも最新技術をキャッチアップし続けるのが難しいくらい、変化のスピードが速まっている。旧来型の研修では、若手育成も機能不全に陥るはずだ。そこで今回、日本のインターネット業界を支えてきた3社による座談会を実施し、若手育成の「今」がどうなっているのかを聞いてみた。

「新人エンジニアの育成体制はどう様変わりしているのか?」

「特に、過去から現在へどう『様変わり』してきたのか、その変遷について話が聞きたい」

こう考えた時、座談会への参加を打診できる日本のインターネット企業はまだそれほど多くはない。業界そのものの歴史がまだまだ浅いからだ。

ただ、今回集まってもらったサイバーエージェントGMOインターネット楽天(五十音順)の3社は、日本のWeb業界を黎明期から支えてきた企業群である。新人育成についても、数多くの試行錯誤を経てプログラムを組んできたはずだ。

そんな仮説を持ちながら、各社の育成担当者に話を聞いたところ、3社ともに今年は以下のようなポイントを「育成のゴール」にして研修内容を変更・ブラッシュアップしていることが分かった。

■なってほしいエンジニア像

【1】技術領域を狭めず、全体を俯瞰して設計できる
【2】教わるのではなく、自ら継続的に学ぶ姿勢がある
【3】ハスラーとしての役割もできる
【4】自分なりの目標を見つけられる

具体的に、どのような取り組みでこういった特徴を持つエンジニアを育成しようとしているのか。その詳細を紐解くことで、各社がどのような未来図を描き、そこで必要とされる人材像をどのように捉えているのかも、うかがい知ることができるはずだ。

以降で、座談会の内容を紹介しよう。

【1】技術領域を狭めず、全体を俯瞰して設計できる

(写真左から)座談会に参加してくれた楽天の加藤紀恵さん、サイバーエージェントの板敷康洋氏、そしてGMOインターネット稲守貴久氏

(写真左から)座談会に参加してくれた楽天の加藤紀恵さん、サイバーエージェントの板敷康洋氏、そしてGMOインターネット稲守貴久氏

―― 最初に自己紹介を兼ねて、各社の新卒エンジニア研修の概要と、ご自身の関わり方を教えてください。

板敷 初めまして、サイバーエージェントでエンジニアマネージャをしている板敷康洋と申します。

サイバーエージェントは現在、Amebaだけでエンジニアが500人を超える大所帯になりました。そこで1年半ほど前、技術戦略や組織制度の整理を目的に、各部署のスペシャリストが集まる「技術内閣」というものを立ち上げたのですが、私は専門領域であるシステム障害周りと合わせて、採用育成を担当しています。新卒社員は一律で研修を受け、その後、各サービスに配属されることになっています。

稲守 GMOインターネットでシニアクリエイターをしている稲守貴久と申します。今日はわざわざ当社までお越しいただき、本当にありがとうございます(※座談会は東京・渋谷のGMOインターネットのオフィスで行われた)。

弊社では、インターネット関連技術全般を包括的に学んでもらう『GMOテクノロジーブートキャンプ』という新人研修を3年前から行っており、僕はその事務局長を務めています。

『GMOテクノロジーブートキャンプ』の概要は専用のWebページにて紹介されている
『GMOテクノロジーブートキャンプ』の概要は特設サイトにて紹介されている

GMOインターネットグループにはさまざまな会社があり、それぞれ各社で業務に必要な研修を行っていますが、毎週金曜だけは一律で、このブートキャンプに参加してもらっています。「外に出して恥ずかしくないエンジニアにする」という思いから、より汎用的にスキルを向上させることを目的としています。

加藤 私は楽天の開発統括管理部・開発人材グループというチームに所属している加藤紀恵と申します。

楽天の開発部はDevelopment Unit(DU)と呼ばれていて、各事業部を横串に貫く組織になっているのですが、私はDU内の人事として、エンジニア向けにビジネス・グローバル系の研修を提供しています。

弊社では一昨年を最後に新卒一括採用をやめ(※参照記事)、新卒も中途採用と同じ即戦力扱いの通年採用になりました。そのため、ゼロからエンジニアとしてのベースを作るような基礎的な技術研修は省くことになりました。

―― では、今年の研修のポイントと、その狙いを教えてください。

稲守 当社グループでは、目下のテーマである「強いものはより強く」に則って、昨年までの研修で良かった点をより強化しています。昨年から研修を職能別にすることで、より踏み込んだ内容までフォローできるようになりました。エンジニア向けの研修では、かなり高度なスマホアプリ開発やサーバーの仮想化技術まで行っています。

また、過去2年の経験から、研修を通じていろいろな先輩と接することには、その後のロールモデルや相談相手が見つかるというメリットがあることが分かってきました。

そこで今年は、ブートキャンプが開催される金曜の午前中、グループ内外にいる専門家を講師に招いて話してもらう時間を設け、先輩との接触回数を増やしました。つい先日も、『minne』のスマホアプリのプロダクトオーナーに、「なぜminneのアプリは使いやすいのか?」をテーマに話してもらったところです。

板敷 サイバーエージェントでは、今年から研修のあり方を大きく変えたんですよ。昨年までは協力会社にお願いをして座学中心の内容で行っていたのですが、今年はゼロから内製でプログラムを設計し直しました。

加藤 実は楽天も、以前は外注していた技術研修を、昨年から半内製に、今年から完全内製にしたんです。

新人研修を完全に内製化したという楽天とサイバーエージェント。その狙いは?

新人研修を完全に内製化したという楽天とサイバーエージェント。その狙いは?

―― なぜですか?

板敷 一つは、単純に座学よりも実践的な内容にしたかったから。もう一つは、自分で判断して動くエンジニアになってほしいと考えたからです。

ですから、今年の研修では、「受け身ではなく自分から動く」、「全体のアーキテクチャを俯瞰して設計する」という2つを全面的に打ち出しています。

―― アーキテクチャを俯瞰して設計するのは、大人でも難しいことかと思いますが?

板敷 ええ。ご指摘の通りです。それでも、「そういう意識を持ちながら開発に臨んでほしい」ということは新人にも最初から伝えるべきだと。

最初から技術領域を狭めてしまうと、例えば自分がサーバサイドのエンジニアだった場合、明らかにクライアントサイドの作りが悪かったとしても意見することができなくなってしまう。その結果、「普通のプロダクト」しか作れないというのでは非常にもったいないですよね。

これは、全方位でスキルを伸ばす必要があると言っているのではありません。一歩超えて良いものを作るためには、全体を意識する必要があるということです。

こうした意識付けをするために、今年の研修では「某有名SNSサービスを作ってみる」、「某有名検索エンジンを作る」という課題をやってもらいました。新人エンジニアはフロントエンド・サーバサイドの区別なく、全員が全体のアーキテクチャを考え、その理由とともに発表し合うという内容です。

そうすることで、アプリエンジニアは自然とサーバサイドのことも考えて技術選定することになりますし、サーバサイドもクライアントが使いやすいAPI設計にする、という発想になります。

―― なるほど。楽天さんが研修を内製化した理由は?

加藤 GMOさん、CAさんと違うのは、研修という枠組みの中で技術だけを学ぶのではなく、楽天グループ内で動いている実際のプロジェクトに参加して、各開発チームのメンバーとして働くというスタイルを採っていることです。

先述したように「新卒」という扱いではなくなっているので、技術だけを学ぶという以前のスタイルはフィットしなくなってきているためです。

―― 内製化して試行錯誤をするという点は、3社に共通する流れですね。

稲守 内製でやると、教える側も学ぶところが多いんですよね。生徒からの質問に答えるためにもう一度学び直すことが、講師自身の学びになるんです。僕自身もブートキャンプでUI設計の講師をするにあたって、GoogleやAppleの出しているデザインガイドラインを改めてひと通り目を通しました。

エンジニアの中には、「技術は自ら学ぶものである」という価値観が強くて若手育成にあまり関心を持たない人もいますが、実際に研修の現場に立ってもらうことで、教えることにすごく興味を持つようになったというケースもあります。

加藤 研修は、提供する側が得るものも大きいというのは私も実感しています。今年エントリーレベルの研修を受けた新人は28人いたのですが、このうち日本人は8人だけで、残りは外国籍でした。急速にグローバル化を進めている楽天においては、こうしたメンバーを受け入れる経験自体が、各部署にとっても大きな財産になっているそうです。

【2】教わるのではなく、自ら継続的に学ぶ姿勢がある

興味深い共通項として、3社ともに「教える」というスタンスを必ずしも取っていなかった。その理由とは?

興味深い共通項として、3社ともに「教える」というスタンスを必ずしも取っていなかった。その理由とは?

板敷 ただ、僕は先ほど稲守さんがおっしゃっていた「技術は(継続的に)自分で学ぶものである」というのがけっこう真理を突いていると思うんです。だから新人研修とは、技術そのものを学ぶ場ではなく、考え方を身に付ける場にせねばならないと思っていまして。

今回の研修で「検索エンジンを作る」という課題を出した際も、マストで実装する機能は最小限に設定していて、画像検索、音声検索といったそれ以外の機能を付けるかどうかは自分たちで判断し、技術的な難易度を調整できるようにしているんです。

加藤 技術という観点でいえば、弊社が実施しているエクスチェンジプログラムでサンフランシスコなどに渡れば、まだ書籍にもなっていないような最新の技術に触れることができます。それでも、研修という短期間でそれら全部を身に付けるのは当然不可能です。

こうしたプログラムを実施している目的は、やはり技術を身に付けることではなく、刺激を受け、自分たちがどれくらいのビハインドを背負っているかに気付いてもらうことにあるんです。

会社を挙げて英語の学習をサポートしていることの意味も、英語を自由に使えるようになることで、こうした刺激を得る機会を広げてもらうためです。その上で、技術力を伸ばすのは各自でやってください、と。

―― 研修は教える場というより、学ぶきっかけづくりの意味合いが強いようですね。その場合、メンターの役割はどういったものになるのでしょうか?

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