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トラブル発生時、矢面に立たされるエンジニアに必要な「対話」を考えよう【澤円「コミュ力おばけ」への道】

スキル

「プロジェクトの途中でトラブルがよく起こる」「自分の説明が伝わっていない気がする」そんな“技術以外”の課題の背景にあるのは、ひょっとして「コミュニケーション」の問題かもしれない。プレゼンの神・澤円が自身の経験やノウハウをもとに、仕事がスムーズに進むコミュニケーションのヒントを伝授!

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株式会社圓窓 代表取締役
澤 円(@madoka510)

立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフトに転職、2020年8月に退職し、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。武蔵野大学専任教員。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。 著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界No.1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)/『「疑う」から始める。これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム社)/『「やめる」という選択』(日経BP社) Voicyチャンネル:澤円の深夜の福音ラジオ オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム

トラブル発生時に責め立てられる…「地獄絵図」は業界あるある

皆さんこんにちは、澤です。

今回も、エンジニア稼業で避けては通れない「トラブル対応時のコミュニケーション」について考えてまいりましょう。

ボクは結構映画が好きで、いろんなタイプの作品を見るのですが、気分のリフレッシュにはアクション映画やSF映画がボクには向いているようです。

そこで時々出てくるのが「ハンサムでマッチョだけどIT苦手な主人公」と「気弱だけど腕はピカイチのエンジニア」の組み合わせ。

主人公は、持ち前の筋肉と体力と笑顔を武器に敵とドンパチやったり、随所にロマンスが挟み込まれたり、危機の後には見事な逆転が待っていたりします。

その主人公の活躍を支えるのがエンジニアの人。

一生懸命頑張ります。仕様書も指示書もソースコードもない中で、必死にキーボードで打鍵音を奏でます。回線の開通手続きもルーターの設定も電源の確保も誰も手伝ってくれません。

なんというフルスタックな活躍でしょう!

我々エンジニアとしては、そんな登場人物に感情移入しないわけにはいけません。(ちょっと言い過ぎ)

「コミュ力おばけ」への道

さて。

そんな主人公は、エンジニアにあんまし感謝することもなく、目の前の扉を遠隔で開けろとか、ビルの見取り図を送れとか、監視カメラの目を誤魔化せとか、敵の情報をFBIのコンピュータから盗めとか、無理難題を押し付けてきます。

そして極め付けは、あと30秒で発射しそうなミサイルを止めるための暗号を解こうとして必死になってるエンジニアの後ろから、「まだか!時間がないぞ!」「このままじゃ100万人の命が危ない!」とか好き勝手なことを主人公が叫んでたりします。

頼むから静かにしてくださいと、スクリーンに向かってつい独り言の一つも言いたくなります。

これ、実際のシステム導入や運用の現場でも“あるある”ですよね。

ボクも何度も立ち会う羽目になりました。

そして、決済権限を持っている人にエンジニア経験がなかったりすると、上の主人公みたいなことを平気でやらかします。

さらに、仲間と思っていた営業が、トラブルが起きている顧客側に立ってエンジニアをせっつくなんて地獄絵図も、残念ながらノンフィクションのストーリーとしてこの世に存在しています。

最悪なのは、復旧作業などを行なっているエンジニアを、トラブルの説明を行うために怒ってる人たちの目の前に連れていってしまうパターン。

確かにトラブルにまつわる情報は一番多く持っているかもしれませんが、その説明を誰かにしたところでトラブルが解決されるわけではありません。

トラブルを解決するためには、システムと向き合って作業を行わなくてはならないのです。

こんなこと、エンジニアなら百も承知ですよね。

でも、分からない人が力を持っているのが世の常だったりするのです。悲しい……。

『集中して復旧にあたる時間』のために冷静に対話を

では、エンジニアはどのように生き抜けばいいのでしょうか?

これ、正論をぶつけても相手はおとなしくなってくれないんですよね。

そもそもトラブルが起きているということは、何らか業務に支障が出ていたり、別の人から担当者や営業が怒られてたりしてるわけで、その矛先が「障害を起こしているシステムに一番近い人」であるエンジニアに向きがちだったりします。

エンジニアに噛みついても何も解決しやしないんですけど、「怒ったってシステムは直りませんよ」と相手に言おうもんなら、それこそ怒りのレベルがアップグレードされてしまうだけで、誰もハッピーになりません。

エンジニア側の視点に立ってあえて言い切ってしまいますが、トラブル発生時に怒りを対応している人に向けている時点で、相手は一流のビジネスパーソンではありません。

なぜなら、優先順位付けができていないからです。

なので、「相手の言うことが正しい」と思う必要はありません。

もっと言えば、よほどの手抜きをしたとか、故意にイタズラしたとかでなければ、「システムってのはトラブルが起きるものなんだから、ギャーギャー言われる筋合いはない」と割り切って考えることも時には必要です。

ただし、人間は感情を持った生き物であり、時と場合によってはコントロールができなくなってしまうものです。

そして、システムは動いてナンボなので障害が起きてしまうのはやはり喜ばしい状態ではないのも事実です。

「コミュ力おばけ」への道

そこで、ここは「トラブルが起きているのは大変に憂慮すべき状況ではあるけれど、まず必要なのは『説明する時間』ではなくて『集中して復旧にあたる時間』である」ことを自分で強く認識し、そして相手にも納得してもらうために冷静に語るようにしましょう。

仮に相手が自分に対して罵詈雑言を吐いてきたとしても、その言葉には耳を貸さずに、あくまで「主語」を障害を起こしているシステムにすることを心掛けて、「このシステムを復旧するためにはXXが必要」「障害の切り分けには〇〇を使う」「この分野についてはZZさんが適任」という現実的な回答に終始するようにしましょう。

エンジニアとして対応しなくちゃいけないのは、あくまで障害からの復旧やバグの修正。

本来は人の感情にまでケアしている暇はありません。

ただ、相手の怒りのパワーをデカくし過ぎてしまうと、結局トラブル対応がもっとできなくなってしまうので、相手の怒りを大きくし過ぎないようにしつつ、かつシステムがいうこときくように手懐けなくちゃいけないのです。

そのためには「相手の気持ちには寄り添う」というマインドセットを持つことは大事です。

ただし「相手の言葉を全て受け止める必要はない」というマインドセットも同時に必要です。

トラブルが起きた時は、まずやることはその対応。

そして、トラブルに向き合うあなたは、映画のITオンチな主人公以上にかっこいい存在です。
応援しております。


澤円
▼澤円氏 書籍『「やめる」という選択』(日経BP)

自分に嘘をつかない、
無理はしない。
だから、可能性が広がっていく。

マイクロソフトを卒業して、
自分らしく生きる僕が大事にしていること

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