営業活動ゼロでも「PMOのプロ集団」に依頼が絶えない理由とは?トップが語るPMOの使命
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プロジェクトマネジャー(PM)が一人でフォローできるタスクには限りがある。特に、複数のチームが稼働する大規模プロジェクトの場合、現場とPMの間を取り持つ存在が必要になる。その役割を担うのが、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)というポジションだ。
しかし、PMOがその実力を発揮するのは、構成員が数十名から百人以上のプロジェクトに限られるため、エンジニアといえどもその実体を知らない人は多いだろう。そこで長年にわたりPMやPMOを経験してきたNEWINGS(ニューイング)の代表取締役、長田達也さんに、PMOの仕事ややりがいについて伺った。
PMの「参謀」として実務を支えるPMOという仕事
「PMOの使命は、プロジェクトの決裁者であるPMのスムーズな意思決定をサポートすることです。そのためPMOは、時にPMの目や手足となって、プロジェクトの円滑な運営に欠かせない、さまざまなタスクを担います」
これまで複数の大規模開発プロジェクトでPMOマネジャーを務めてきた長田さんは、PMOの役割をそう説明する。
「具体的には、スケジュール管理や開発方針の周知徹底、会議の運営といった事務局機能に加え、プロジェクトに必要な情報の収集やリソースの調達、想定されるリスクの管理、成果物の品質コントロールなどの諸業務を通じてPMを支援します。PMOは、いわばPMの『参謀』的存在と言えるでしょう」
特に複数のチームと一緒に取り組むような大型プロジェクトにおいて、PMOは不可欠なものとなっている。
「PMは、プロジェクトの目標、品質、戦略を定め、納期に責任を負う立場です。プロジェクトの最上流を担うため、複数の開発ベンダーが介在し、常時数百人ものエンジニアが稼働しているプロジェクトでは、全ての意思決定に介入する時間的余裕はありません。こうした業務を一手に引き受けるのが、われわれPMOというわけです」
NEWINGSでは、10名程度のPMOチームを組み、プロジェクトに派遣しているという。発注元はプロジェクトを受注したプライムのSIerだ。
「PMOを『進捗管理を担うだけの仕事』だと思われている方には意外かもしれませんが、プロジェクトを円滑にマネジメントするには多様な専門性と経験、そして信頼が欠かせません。ユーザーもプライムのSIerも、プロジェクトの成功を何よりも願っています。ですから、価格を武器に新規参入したところですぐに受注できるほど甘くはありませんし、教科書通りの方法論しか持たない会社は、瞬く間に淘汰されてしまう厳しい世界です」
長田さんによれば、同社は積極的な新規開拓営業を行っていないという。それでも途切れることなく依頼が来るのは、「実績」と「信用」こそが最大のセールスポイントになることを熟知しているからだ。
「弊社には官公庁や金融機関向けのシステム開発分野で、最大1000人が参加する100億円規模のプロジェクトを手掛けた経験があります。この実績は著名なコンサルティングファームと比較して見劣りするものではありません。PMOは、知名度よりも実力が物を言う世界なのです」
心理学的アプローチを駆使し、プロジェクトを前に進める
プロジェクト運営をサポートする立場とはいえ、PMOはPMやクライアントの「使い走り」ではない。長期にわたるプロジェクト期間中、もしPMやクライアントの意思決定がブレ始めたと判断したら、それを率直に指摘することも大事な仕事だと長田さんは話す。
「どんな状況であっても、プロジェクトを前に進めるのがわれわれの仕事です。しかし、それを実現するのは容易なことではありません。だからこそ、もしプロジェクトの本質を曲げるような力学が働いても、安易に屈するわけにはいかないのです」
実際、PMやクライアントに厳しいセリフを口にすることはある。だが、そのセリフが真に本質を捉えた指摘であれば、PM、クライアント、開発ベンダー、現場のエンジニアから信頼と信任を得ることにもつながるのだ。
「プロジェクト期間中、数年にわたってお付き合いをするわけですから、安易な妥協は信頼関係の構築を阻害することにもなります。だから言うべきことは言いますし、正すべきことは正す、というのがわれわれのスタンスです」
しかし、どんなに正しいことでも一方的に主張を押し付けるだけでは、相手に理解してもらえないこともある。だからこそPMOは「心理学の使い手であるべき」と長田さんは主張する。
「相手の気持ちや状況を考え、適切な言葉を適切なタイミングで伝えることが重要です。われわれはどのような状況下においてもプロジェクトを前に進めることを重視しますから、定型化された手法を駆使するより、状況に応じてアプローチを変えることを大切にしています」
例えば進捗の遅れを取り戻すために関係者に指示を出すような場合、相手によってやさしく諭すように伝えることもあれば、強く迫る場合もある。そのさじ加減は難しいようにも思えるが、開発経験を持つPMOには一日の長があるという。
「PMOはプロジェクトが終了するまでの期間、PMやプロジェクトメンバーに寄り添い、伴走することになります。単にPMの指示を現場に落とすだけならPMOは必要ありませんが、現実には現場が抱えている技術的、組織的な悩みや課題を理解した上で、臨機応変な対応ができる存在が必要です。そのために、エンジニアとしての経験はあるに越したことはないと思います」
つまりPMOはエンジニアのキャリアパスとして非常に有望な選択肢となり得るのだ。「これは当事者にこそもっと知られるべき事実」と長田さんは言う。
あらゆるビジネスに応用可能なPMOの普遍的能力
実務面からPMを補佐し、プロジェクトを成功へと導くPMO。具体的にはどんな人に向いているのか。長田さんは「規模の大小にかかわらず、PMやプロジェクトリーダー(PL)経験があるエンジニア」なら申し分ないが、「スキル要件は満たしていてもPMOに向かない人もいる」と明かす。
「素養を感じるのは、相手の立場に立ったコミュニケーションができる人です。『相手の立場に立った』というのは、会話の中から話の要点をつかんで、的確に応答できる能力を指します。そんな当たり前のことを、と思われるかもしれませんが、実はこうした基本的なコミュニケーションができない人は少なくありません。相手に合わせて伝え方を変えられる人は、情報を収集する力と伝達する力が高いということ。これは、PMOには重要な能力です」
PMOの仕事はその性格上、机上で完結するものではない。その本質は、コミュニケーションの中にこそあるのだ。
「われわれは立場の異なるステークホルダーと向き合い、調整役に徹することで与えられた使命を果たします。そういう意味では知識と経験に裏打ちされたコミュニケーション力が唯一の武器といっても過言ではありません。だからこそ、技術的知見を備え、的を射た対話ができる人材を重視するのです」
企業を取り巻く経営環境が複雑化し、判断に迷うような事象が増える中、プロジェクトを率いるPMの双肩にかかる責任は重みを増している。PMの参謀役であるPMOにかかる期待も大きくなっているのは言うまでもない。
「PMOが持つプロジェクトを推進する能力は、大規模システムの開発現場でしか生かせないスキルではなく、あらゆる業種・業態のプロジェクトに応用できる普遍的なビジネススキルです。エンジニアとしての経験を別の立場で生かしたいと考えるなら、ぜひ一度は検討すべきキャリアパスだと思います」
取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/吉永和久
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