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いま“企業がどうしても欲しい”PdM像を【土屋尚史・杉浦正明・丸山貴宏・及川卓也】が徹底討論!【PMC2019レポート】

働き方

    「すべての企業にプロダクトマネジメントを」というコンセプトのもと、2019年11月12日・13日の2日間にわたって開催された『プロダクトマネージャーカンファレンス 2019』。今年で4回目となる本カンファレンスには、2日間で1500名以上が来場。

    同イベントの実行委員を務めた及川卓也さん(クライス&カンパニー顧問)は、「初年度開催時は約400名だった参加者がここまで増えた。IT業界で働く人々のプロダクトマネージャー(以下、PdM)への関心が年々高まっていると感じる」とカンファレンス冒頭の挨拶で話した。

    本記事では、12日に開催されたトークセッション『企業が求めるプロダクトマネージャーとその人材戦略』『異動、転社・転職などを活用したプロダクトマネージャーのキャリア戦略』を取り上げ、各社におけるPdMの実態とPdMを目指すエンジニアに必要な準備について紐解いていく。

    同セッションにスピーカーとして登壇したのは、NewsPicks取締役CTOの杉浦正明さん、グッドパッチ代表取締役社長 / CEOの土屋尚史さん、クライス&カンパニー代表取締役社長の丸山貴宏さんの3人。モデレーターは及川さんが務めた。

    PMC2019

    経験豊富な中途より“白紙の新人”がいい?
    「大切なのは、愛ですよ」

    及川:お二人の会社では、PdMを採用したんですか? それとも、社内で別職種の人をPdMとして育てたんでしょうか?

    土屋:経験者の採用もしましたし、育成もしました。ただ、うちの場合は外部からPdMを採用した時、うまく回らなかったことがあるんですよ。チームがばらばらになってしまって、進むべき道も見失ってしまった。

    そもそもPdMは、そのプロダクトが何を価値として提供すべきかの「What」が見えていないといけない。その外部から採用したPdMは明確な「What」を提示することができなかったんです。そして、会社のこともよく分かっていなかったので、周りが付いてこなかった。

    反対に、うちに新卒で入った子にPdMをお願いしたことがあるんですが、その人が良いチームをつくることもありました。その人の経験の浅さを考えれば、かなり無茶ぶりだったと思うんですけど、意外なくらいチームがうまく回っていました。

    及川:何も色がついていない人の方がいいと?

    土屋:そうとも限らないんですが、会社の文脈・文化をどれくらい理解しているのかっていうのはすごく重要です。あとは、創業者や経営者からいかに信頼されているか。要は、その人がPdMだから皆が言うことを聞くなんてことはあり得なくて、その人が信頼されているから力を貸してくれるということ。

    そういう意味で、経験は豊富だけど会社のことをよく理解していない中途の人より、スキルはないけどひたすら会社愛が強い新卒の子の方が、PdMとしてうまく業務を回せたんだと思います。

    土屋尚史

    カンファレンス当日、土屋さんが着用していたTシャツには「偉大なプロダクトは偉大なチームから生まれる。」と書かれていた。グッドパッチ社で語り継がれている言葉だそう

    杉浦:今の話はめちゃくちゃ共感できますね。創業者の価値観とか、企業のミッションに共感してくれるPdMを採用できるかが肝。やっぱりPdMに必要なのは、「愛」ですよ。プロダクトへの愛がなければいいものづくりはできないし、周囲の人にも響かない。だから、採用する側としては「志を同じくしてくれる人なのか」を重視しますね。

    及川:なるほど。では、丸山さんには採用市場のことを伺いたいのですが、最近ではPdMの採用ニーズは高まっているのでしょうか?

    丸山:かなり高まっていると思いますね。ただ、企業の人事担当者がPdMとは何かをよく理解していないがために採用がうまくいかなかったり、採用したはいいけれどその人材をうまく活用できない組織が多いのも事実です。

    及川:では、どうすれば?

    丸山:入社後の対応についていえば、経営者がPdMに期待することを端的に伝えることですね。企業によってPdMの役割は現状さまざまなので、「うちの会社はこうだよ」というのを伝えてお互いの共通認識としておくべきです。また、先ほどの土屋さんのお話にもありましたが、PdMはその企業のことをよく理解しなければ機能しませんから、組織とのチューニングだけで3週間は必要、ならし運転というなら3カ月くらいは必要なんじゃないでしょうか。

    PdMになるには?
    「手の届く範囲からプロダクトづくりを」

    及川:この会場にはエンジニアなど、PdM以外の方も多くいますが、これからPdMを目指したい人はどんなことを意識するといいんでしょう?

    杉浦:エンジニアの方であれば、まずは試しに何かプロダクトをつくってみて、それをユーザーにぶつけて、反応を見るというプロセスを試してみるといいのでは? あるいは、統計とかデータサイエンスが得意な人であれば、リサーチから入るとか。好きなこと、興味のあること、手の届くところを見つけて、そこを伸ばしていった方がいいと思います。

    土屋:確かにプロダクトを実際に作ってみるのが一番手っ取り早いですけど、なかなか簡単にはできないのも事実。まずはPdMと一緒に仕事をするところから始めるといいかもしれませんね。PdMの人たちが何を考え、何を大事にしているのか、側で感じることから始めるとイメージしやすいはずです。グッドパッチの仕事はそんなPdMの右腕になるデザイナーとしてサポートする仕事なので、多くのPdMのパターンを知れるのはメリットですね。

    及川:丸山さんはどう思われます?

    丸山:繰り返しにはなりますが、今はまだ企業によってPdMの役割が違っているので、自分が働きたい企業のPdMが「何を期待される存在なのか」を知ることが前提ですね。その上で、自分自身がPdMになることで何をしたいのか、どんなスキルを磨いていきたいのか考えて、すり合わせをしていくことが重要だと思います。

    丸山貴宏

    いま、あらゆる企業で「ミスマッチ採用が起きてしまっている」と警鐘を鳴らす丸山さん

    PdMと事業責任者の違いは?
    「PdMの役割はユーザー満足度の最大化」

    及川:NewsPicksでは、PdMと事業責任者はどのように区別されていますか?

    杉浦:PdMはユーザー満足度を最大化するポジション。事業責任者は、ビジネスモデルを描き事業部の利益を最大化するポジションという認識です。ただ関係性はフラットで、どちらかが上というものではありません。

    及川:土屋さんはどう思われますか?

    土屋:事業責任者はうちの定義でいくとプロダクトオーナー(以下、PO)ですね。例えば、グッドパッチでは今、デザイナー特化のキャリア支援サービス『ReDesigner』という事業をやっているんですが、そのサービス一つとってもさまざまな機能があって。それらを統括し、全体を見るのがPOの役目。それぞれの機能を見るのがPdMというイメージです。

    及川:なるほど。会社によって、PdMと事業責任者の関係性や立ち位置が大きく異なるんですね。

    PdMに必要なスキルは?
    「逆境に負けない突破力」

    及川:さまざまなスキルのPdMがいるというのは今までの話で理解できたんですが、これからPdMになる人にぜひ身に付けてほしいと思うスキルや、大切だと思う素質は?

    杉浦:僕が重視するのは「直感力」ですかね。ユーザーが本質的に満足するモノを直感的に感じ取れる人は強いと思います。

    杉浦正明

    「僕には直感力がなくて」と会場の笑いを誘った杉浦さん。「これから一緒に働くPdMの人がそのスキルを持っていてくれたら」

    土屋:抽象的な表現になってしまいますが、僕が求めるのは「突破力」ですね。これは、逆境が訪れたときに「何とかする力」とも言えるかもしれない。プロダクトを作って、グロースさせていくのって、やっぱりいろいろな横槍が入ったりトラブルがあったりして大変じゃないですか。でも、そういうときに「この人がいればなんとかなる」っていう安心感のあるPdMはどこに行っても重宝されるんじゃないかな?

    及川:「突破力」と聞くと、体育会系なイメージがありますが、外資系企業でよく言われる「Getting Things Done(行動を明確化し、やりきること)」という言葉に、通ずるものを感じますね。

    土屋:そうですね。PdMに必要なのって、結局「統合スキル」なんですよ。もちろん何かに強みを持っていることは大切ですが、最終的には総合力で勝つ。

    及川:仰る通りだと思います。「どうにかしなきゃいけない」シーンで、人を巻き込む力だとか、必要なスキルを持った人を連れてくる力とか、ありとあらゆる手段を駆使して「何とかする」。そういうスタンスがPdMには重要だと僕も思います。

    PdMの収入ってどのくらい?
    「企業によるが、年収2千万超え人材も」

    及川:これからPdMになりたい人にとっては関心の高い話題だと思いますが、皆さんの会社ではPdMにどのくらいの報酬を支払っているんですか?

    杉浦:NewsPicksでは、複数の事業を統括するCPO(Chief Product Officer)レベルであれば、年収2千万円くらいは払いたい。一つのプロダクトを担当するPdMとなると、年収1千万円くらいでしょうか。

    土屋:そんなこと言われると、言いづらくなるじゃないですか(笑)! 

    杉浦:(笑)

    土屋:すみません、グッドパッチのPdMの具体的な年収は公表していないのですが、少し前に外資系の大手IT企業出身のPdMの方が面接にいらした際に、提示された希望年収は3千万円でした。

    及川:それはかなりの額ですね。

    土屋:はい。ただ、報酬って本来プロジェクトが成功したときに支払われるものだと思っているので、そこはあくまでも期待値とイコールだと思っていて。

    及川:そうですね。例えば年間3千万円の報酬をその人に支払うなら、入社後に期待されるのは、その人が年間1億とか、1億5千万円くらいの売上を一人で上げてくれること。PdM側も、自分がどれだけ稼げる人材なのかをちゃんと企業に示さないといけないと思うんです。

    PMC2019

    「報酬を決めるのは難しい」という話題で盛り上がる3人

    及川:シリコンバレーなど、世界の後を追うように日本でもPdMを目指す方は年々増えています。それは大変に喜ばしいことです。ただ、そのときに何となくPdMを目指すのではなく、自分は「PdMとして何がしたいのか」「何を強みとしたPdMになりたいのか」「PdMとしてどうやって企業に利益・価値をもたらすことができるのか」をしっかり考えてみる必要があるのではないかと思っています。皆さん今日は貴重なお話ありがとうございました。

    登壇者プロフィール

    及川卓也さん
    早稲田大学理工学部を卒業後、日本DECに就職。営業サポート、ソフトウェア開発、研究開発に従事し、1997年からはMicrosoftでWindows製品の開発に携わる。2006年以降は、GoogleにてWeb検索のプロダクトマネジメントやChromeのエンジニアリングマネジメントなどを行う。15年11月、技術情報共有サービス『Qiita』などを運営するIncrementsに転職。17年6月より独立し、プロダクト戦略やエンジニアリングマネジメントなどの領域で企業の支援を行う。同年、クライス&カンパニー顧問に就任
    杉浦正明さん
    日立ソリューションズを経て、シンプレクスに入社。大手証券会社向けプロジェクトのマネージャーを歴任した後に、高速為替取引システムの開発リーダーとしてアーキテクチャ設計を担う。その後、トークノートに取締役CTOとして参画し、サービスの拡大に貢献。 2014年にユーザベースに入社、16年より現職
    土屋尚史さん
    btrax, Inc.にてスタートアップの海外進出支援などを経験し、2011年9月に株式会社グッドパッチを設立。自社で開発しているプロトタイピングツール『Prott』はグッドデザイン賞を受賞。17年には経済産業省第4次産業革命クリエイティブ研究会の委員を務める。18年にデザイナーのキャリア支援サービス『ReDesigner』を発表
    丸山貴宏さん
    大学卒業後、大手人材企業に入社。人事・採用責任者として新卒、中途、留学生、外国人など多岐にわたる採用を担当し、同社の急成長を人材採用の側面から支える。退職後、株式会社クライス&カンパニーを設立。前職で実践した「企業力を超える採用」の実現のため、 1000社を超える顧客にそのノウハウを提供、さまざまな分野の支援を実現。著書に『自分に合った働き方を手に入れる! 転職面接の話し方・伝え方』(高橋書店)などがある。『ダイヤモンド・オンライン』 にて、コラム「転職で幸せになる人、不幸になる人」を連載中

    取材・文・撮影/川松敬規(編集部)

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