この連載では、技術・組織づくり・経営・キャリアに詳しいIT業界の専門家たちが、社外メンターとして登場。エンジニアtype読者の“上司に言えない悩み”に、複数のメンターたちが回答を寄せていきます!
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技術的な話を非エンジニアに伝えるには? “営業と分かり合えない”SES勤務・20代プログラマーの悩みに澤円、えふしん、藤倉成太が回答
今回『エンジニアWebメンタリング』に相談を送ってくれたのは、SES企業で働く20代プログラマーのFさん。
社内の営業担当に言いたいことがうまく伝わらず、認識のズレがよく起きてしまうことに悩んでいるそうです。
では、非エンジニアを相手に、うまく自分の考えを伝えるにはどうしたらいいのでしょうか。澤円さん、藤川真一(えふしん)さん、藤倉成太さんが回答してくれました。
エンジニアtype 公式メンターズ
Fさんの質問:非エンジニア相手に正しく自分の考えを伝える方法は?
社内の営業担当と話していると、よく「こちらの話を理解してくれているのかな?」と思うことがあります。相手に不満を覚える一方で、私の伝え方も悪いのではないかと考えています。非エンジニアの方に、自分の考えをうまく伝える方法を知りたいです。
Fさん(30歳/男性)
SES企業で働くプログラマー。転職経験が2回あり、前職もSES勤務
メンターズの皆さん、こんにちは。
私はSES企業で働いており、頻繁に自社の営業担当の方と話す機会があります。前職の営業担当に比べると親身にこちらの話に耳を傾けてくれるため助かる場面は多いのですが、たまに私の話を理解してくれているのか不安になることがあります。
特に、今担当している案件の不満や今後入りたい案件の話をする中で、より技術的な話になればなるほど、細かいニュアンスが伝わらなくなると感じます。
SESの営業である以上は技術に対しての知識も付けてほしい……という気持ちもある一方で、私の伝え方にも問題があるのだろうと思っています。
非エンジニアに対して、自分の考えや伝えたいことをうまく伝えるためにはどうすればよいのでしょうか? 皆さんのお考えをぜひ教えていただきたいです。(Fさん)
澤さんの回答:本気で「伝えたい」と思っているか、自問してみて
とても自然な事象のため、まずはマインドフルに受け止めましょう。そして、相手に自分の考えを本気で理解してほしいと思っているのかを自問してみてください。伝えるためのテクニックを学ぶよりも、あなたの「本気度」が大切です。
これは、極めて本質的なトピックです。
「なんでこの人は自分の扱う商品やサービスを理解してないんだ?」とエンジニアが感じることは、ある意味極めて自然なこと。また、「なんでこいつは分かりやすく話してくれないんだ?」と不満を持つのも、非エンジニアにとっては自然なことです。
つまり極めて自然な事象が発生しただけですので、マインドフルに受け止めましょう。そして、「自分がコントロールできる部分」にフォーカスしてこの問題を解決する方法を考えるのが肝要です。
例えば、営業さんにテクノロジーの勉強をさせるのと、自分の伝え方を上達させるのと、どちらがコントロール可能でしょうか? 営業さんの時間をFさんが自由に使うことができないとしたら、きっとご自身の説明能力をアップさせる方が手っ取り早いですよね。
さらに、テクニックに走るよりも大事なのが、ご自身が本気で「伝えたい」と思っているかどうかです。そこを自問してみてください。
本当に相手に理解してほしい、共感してほしいと思えないのだとしたら、コミュニケーションのテクニックだけ上達させても、限界があるでしょう。
僕は、テクノロジーは世の中を良くするために存在していると信じてこの業界にいます。そう思っていると、「分かりやすく伝えること=世の中を良くすること」と本気で信じられて、説明にも熱が入ります。
まずは、技術うんぬんよりも「誰がどう幸せになるのか」を自分が理解しているかどうかが大事です。そこから逆算する思考の習慣が付いてくると、誰にとっても分かりやすい説明はおのずとできるようになるかと思います。
えふしんさんの回答:プリセールスとして技術の代弁者になるのも手
営業の人は、技術の話よりも利益・不利益につながる話に興味を持つと思います。そういった相手の目線に合わせて会話をすることが重要です。もし、営業の知識不足によって不利益が発生しているのであれば、Fさんが技術の代弁者になるのも一つの手です。
こういうときには、お互いの立場の違いによる「視野の違い」を意識することが大切だと思います。
その上で、Fさんは営業さんの関心事である売上や利益の話は理解されていますか? 営業さんは技術以外の事に時間を費やしてエンジニアの稼働を支えていると思うのですが、営業の人の論理に合わせた会話ができていますでしょうか?
営業の人は個々の技術の話には、あまり関心はないでしょう。しかし、お客さんの利益や不利益になることは役割として関心を持ってくれるのではないでしょうか。
営業職の人に求められるのは、「個々の開発者がどれだけ信頼できて、お客さまの案件の実現に対して活躍してくれるか?」という部分だと思います。
SESにおいては技術者そのものが商品なのですから、技術者がどういう信頼を得られる人で、何が作れる人なのかは商品知識として興味を持つべきでしょう。Fさんも、そういう目線に合わせて会話ができているかは重要です。
そして、「技術の売り込みを誰が担保して営業しているのか?」ということを、組織構造も含めて見極められると良いと思います。
もし、営業の人が技術を分からないことで失注してしまっているとしたら、Fさんにとっても大きな機会損失になりますし、活躍の舞台も狭くなっていることが考えられます。
もしかしたら、Fさんがプリセールスの役割を担って技術の代弁者になるという手もあるかもしれないですしね。
藤倉さんの回答:何のための会話か、目的をはっきりさせましょう
伝えたいことがしっかりと言語化できて、事業に対して意味のあることであれば、営業さんも話を理解しようとしてくれるはず。感情的な話なのか、事業に関係のある話なのか、一度細分化して考えてみてください。
Fさんと営業の方で話をするときは、最初にその会話の目的を明確にするのがいいかもしれませんね。
今回のお悩みでは、案件の不満や今後の希望という例が挙げられています。案件の不満を相手に伝える意味は何でしょうか?
自分の気持ちを分かってほしいという感情的な理由なのか、もしくは事業上のリスクを明らかにしたいのか。これを曖昧にすると、相手にはなかなか伝わりにくいと思います。
仕事をするときにも、感情や感覚というのは大切だと思います。潜在的なチャンスやリスクを捉えるきっかけにもなります。
私は、何か違和感を感じたとき、それを深掘りして、その裏側にある事象を見極めるようにしています。そして、それが言語化できて、事業的に意味のあることにつながれば、適切な相手に対して伝えます。
一方で、うまく整理できない、事業的な意義を見出せない場合もあります。それは、おそらく私の感情的なものでしかないので、雑談で終わることが多いです。
今回のお悩みが、例えば案件で使われる技術スタックが世の中のトレンドとズレているということにきっかけがあるのだとしたら、それによる事業上のメリットやデメリットは整理できます。なぜなら、新しいメンバーの採用が難しくなったり、社員の退職リスクにつながるかもしれませんから。
一方で、ややニッチな領域で戦うことになるので、競合相手が少ないという強みにもなる可能性があります。
何の目的で話しているのか、最初にそこがクリアにできると、営業担当もしっかり理解しようとしてくれるのではないでしょうか。
『エンジニアWebメンタリング』では、読者の皆さまからの悩みを随時募集中!
澤円さん、えふしんさん、藤倉成太さんなど、エンジニアtype公式メンターズに相談したい内容を、下記のフォームからご記入ください。
株式会社圓窓 代表取締役
澤 円さん(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)※11月末発売予定
Voicyアカウント:澤円の深夜の福音ラジオ メルマガ:澤円の「自分バージョンアップ術」 オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム
BASE株式会社 取締役EVP of Development
藤川真一(えふしん)さん(@fshin2000)
FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボへ。ショッピングモールサービスのプロデューサーのかたわら、07年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。10年、想創社を設立し、12年4月まで代表取締役社長を務める。その後、想創社(version2)を設立しiPhoneアプリ『ShopCard.me』を開発。14年8月BASE株式会社のCTOに就任。19年7月から現職
Sansan株式会社 CTO
藤倉成太さん(@sigemoto)
株式会社オージス総研に入社し、ミドルウエア製品の導入コンサルティング業務に従事。赴任先の米国・シリコンバレーで現地ベンチャー企業との共同開発事業に携わる。帰国後は開発ツールやプロセスの技術開発に従事する傍ら、金沢工業大学大学院(現・KIT虎ノ門大学院)で経営やビジネスを学び、同大学院工学研究科知的創造システム専攻を修了。2009年にSansan株式会社へ入社し、クラウド名刺管理サービス「Sansan」の開発に携わった後、開発部長に就任。16年からはプロダクトマネジャーを兼務。18年、CTOに就任し、全社の技術戦略を指揮する
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