転職 Vol.470

コードレビュー強化が転機に~SQUEEZEに見る、伸びるスタートアップのチームコミュニケーション術

あの企業の開発環境を徹底調査!Hack the Team

エンジニアが働く上で気になる【開発環境】に焦点を当てた、チーム紹介コーナー。言語やツール類を紹介するだけではなく、チーム運営や開発を進める上での不文律など、ハード・ソフト面双方の「環境づくり」について深掘りしていく。

チャレンジには失敗が付き物。日本でも新たなサービス開発に挑戦して成功を収めるスタートアップが増えているが、他方でサービス終了またはピボット(方針転換)を迫られる企業も数多く出ている。

その失敗率は9割とも7割とも言われている中(参照記事)で、スタートアップは一時の好調に惑わされず、成長し続けるための施策を打ち続けなければならない。

その点で、今年5月に総額4.2億円の資金調達を行ったSQUEEZEは、継続的な成長に向けた準備を着々と行っている1社といえよう。

同社が2014年より展開してきた民泊事業者向けクラウドソーシング『Mister Suite』は、民泊提供時に発生する問い合わせ対応や清掃といった各種オペレーションを分業化し、クラウドワーカーに委託するというサービスだ。現在は国内約270件の民泊オペレーションをサポートしているという。

民泊事業者向けのクラウドソーシングサービス『Mister Suite』
民泊事業者向けのクラウドソーシングサービス『Mister Suite

さらに今年は、民泊事業者が周辺の平均価格分析やデータに基づいた需要予測を容易に行えるツール『Mister Suite Lab』をリリース。需要の高まる民泊ビジネスの中で独自のポジションを確立しつつある。

一方、こういった攻めの事業展開の裏側で、同社では昨年10月にCTOに就任した関根裕紀氏を中心に、「のちのち技術的負債を抱えないための泥臭い地固め」(関根氏)を並行して進めてきた。

少人数でやりくりをすることの多いベンチャー企業では、成長を加速させるための開発と、開発基盤の整備を含めた守りの業務は両立が難しいと言われている。SQUEEZEは、どのように攻守一体型の組織づくりを行ってきたのか。開発現場での取り組みについて、関根氏と同社でテックリードを務める藤本亮氏に聞いた。

「若手とベテランの役割分担」が、持続的な成長を支える

(写真左から)SQUEEZEのCEO舘林真一氏と、テックリードを務める藤本亮氏、CTOの関根裕紀氏

(写真左から)SQUEEZEのCEO舘林真一氏と、テックリードを務める藤本亮氏、CTOの関根裕紀氏

「僕がジョインする前は、CEOの舘林(真一氏)がプロジェクトオーナーをやりつつ、非常に少ない人数で『Mister Suite』を開発していました。そのころはとにかくスピード重視で機能開発を行っていたので、今後継続的にスケールしていくためには開発チームの体制づくりが急務だと考えていました」(関根氏)

こう語る関根氏がCTOに就任以降、最も力を入れてきたのはエンジニアの採用だ。特に、システムのアーキテクチャ全体を見渡し、整備にあたることのできる経験豊富なバックエンドエンジニアの採用に力を注いだという。

その理由は、関根氏の描く理想のチーム構成にある。「若手にはどんどん新機能開発にチャレンジしてもらいつつ、ベテランがテストの仕組みづくりやリファクタリングのような『泥臭いけど未来に向けて重要な仕事』を行うチーム」こそが、持続的な成長を支えると考えたからだ。

そのために関根氏は、就任直後は自らが改修業務を手掛けながら、高度なスキルを持った“相棒”を探し続けた。その結果、今年1月にジョインしたのが藤本氏だ。

「SQUEEZEには現在、業務委託を含めて10名前後のエンジニアがおり、うち1/3が外国人なんですね。そのためいろんな採用ツールを使って採用候補を探していたところ、見つけたのが藤本だったのです」(関根氏)

藤本氏はソーシャルゲームの開発・提供で急成長したgumiに在籍していたフルスタックエンジニアだ。BtoC開発から、『Mister Suite』のようなBtoBtoCのサービスの開発へ鞍替えする形ではあったが、「チームリーダーとしての経験も豊富だったので今のSQUEEZEのフェーズにはぴったりだった」(関根氏)ということでジョインしてもらったという。

丁寧なコードレビューが課題解決のスピードを高める

CTOとテックリードの二人三脚で取り組んだ、チーム力強化の取り組みについて語る2人

CTOとテックリードの二人三脚で取り組んだ、チーム力強化の取り組みについて語る2人

その藤本氏がテックリードとして最初に取り組んだのが、各エンジニアに対するコードレビューだ。

「メンバーが書いたコードはほぼすべてPull Requestして、2~3時間掛けてレビューするようにしていました。レビューに長い時間を掛けた理由は、コードのクオリティチェックだけでなく、ナレッジ共有も兼ねていたから。1人1人のエンジニアが少しでも成長できるよう、できるだけ丁寧にコメントしていました」(藤本氏)

この試みは、確実に個々のエンジニアのスキルアップに結び付いた。「人それぞれだったコードや設計が、コードレビューを続けることでエンジニア間でコーディングに対する共通認識ができ、全体の可読性や保守性が上がりました」(藤本氏)という。

ポイントは、誰が書いてもコードや設計に一貫性を持たせられるように、とにかく丁寧にレビューすることだったと藤本氏は言う。自ら「綺麗なコードじゃないと仕事したくないタイプ」と明かすように、以前はコーディングのロジックや可読性について厳しく指摘していたそうだ。しかし、前職のgumiで良いメンバーと仕事できたことでやり方を改めた。

「前職では、メンバーに上下関係なく何でも話せる雰囲気でした。お互いを尊敬し楽しく仕事することの大切さを経験させてもらいました。それ以来、コミュニケーションを重視して、何でもカジュアルに話せるようなチームの雰囲気を作れるよう心掛けています」(藤本氏)

こうした取り組みが、チーム全体の能力を上げ、将来的な技術的負債を減らす一助となっていることは想像に難くない。コードレビューなどにも真剣に取り組むことによって、課題解決のスピードが上がったのだ。

プログラマーの生産性を飛躍的に高める銀の弾丸はないとしても、モチベーションを上げるやり方はあるということだろう。

「コードレビューなどを通じてコミュニケーションをしっかり取ることによって、良い開発チームになっていると思います。おかげで、最近はレガシーコードの刷新などにも自ら手を挙げて挑戦してくれる若手が増えました。『Team Geek』でいうところの“HRT”(謙虚 ・尊敬・信頼)が根付くことで、自発的なチーム運営を可能にしていると思います」(関根氏)

今後の新規事業開発も見据えて開発リーダーの人数を増やしたい

SQUEEZEでは、開発風土をこれからも維持しつつ個々の開発力を事業の成長に反映させるために、他にもエンジニアのスキルアップに役立つ取り組みを積極的に行っている。

外部の勉強会やコミュニティへの参加を推奨し、カンファレンスの運営スタッフを務めるのも自由。こうした機会に学んだことを社内でシェアする、自主的な勉強会も定期的に行われている。

「僕や藤本の役割はチーム全体、開発現場全体を支えることだと思っているので、藤本が1人1人のエンジニアとコミュニケーションをしっかり取り、良い雰囲気で開発に取り組めるように努力してくれるのは本当に助かっています。各メンバーが自分の役割を意識して、いろんなことに挑戦できると考えてくれればうれしいですね」(関根氏)

SQUEEZEは前述した『Mister Suite Lab』のリリースに加え、年内をメドに新規事業の立ち上げも準備しており、藤本氏のようなテックリードがあと1~2人必要とのことだ。もちろん、4.2億円の資金調達の一部はエンジニア採用の強化に充てられる。

最後に、この資金調達を実現したCEOの舘林真一氏に、将来展望について聞いた。

「民泊ビジネスについては法規制の議論が進んでいますが、旅行者の訪日インバウンドニーズは引き続き高まっています。その需要にしっかり応えていきつつ、今後は『Mister Suite』のようなクラウド型のオペレーションサポートをホテルや旅館経営に活用することも視野に入れています。うまく普及すれば、彼らの“持たざる経営”をご支援することも可能になるでしょう。こうした事業推進と、関根に託している開発チームの強化を両輪に、持続的な成長を叶えていきたいと思っています」(舘林氏)

取材・文/浦野孝嗣 撮影/竹井俊晴

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