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「AI人材=AI開発者だけではない!」国内AIエンジニアの“キャリアの鍵”は?

働き方

    本連載では、海外AIトレンドマーケターとして活動している“AI姉さん”ことチェルシーさんが、AI先進国・中国をはじめとする諸外国のAIビジネスや、技術者情報、エンジニアの仕事に役立つAI活用のヒントをお届けします!

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    海外AIトレンドマーケター | AI姉さん
    國本知里・チェルシー (@chelsea_ainee)

    大手外資ソフトウエアSAPに新卒入社後、買収したクラウド事業の新規営業。外資マーケティングプラットフォームでアジア事業開発を経て、現在急成長AIスタートアップにて事業開発マネジャー。「AI姉さん」としてTwitterでの海外AI事情やトレンド発信、講演、執筆等を行っている

    皆さん、こんにちは。AI姉さんこと、チェルシーです。

    過去3回にわたり、中国、フィンランド、シンガポール、イスラエル、UAEなどの世界的なAI人材のトレンドについてご紹介してきました。

    AI先進国・中国では国策でAIの社会実装をいかに早期に行うかがポイントで、キャリアについてもまずは数勝負。中高生からAIエンジニアを多く生む文化が創られてきています。

    >>AI先進国中国の「AI人材育成」の秘密とは?「キーとなるのは、国策と“個人の貪欲さ”」

    小国フィンランド・シンガポールはAI開発ではなく、「AI活用」に着目し、小国ならではのAI活用大国戦略を取っています。UAEも世界初のAI大学を設立し、無料等の施策を取りながら、国一丸となってAI人材育成を進めています。

    >>米中以外のAI人材育成戦略は? “開発”ではなく“活用”大国を目指す2カ国の事例
    >>UAEでは世界初のAI大学が!? 中東の「知られざるAI大国」の人材育成

    各国のトレンドを元に、「日本のAI人材はこれからどう増やすべきか?」という疑問も出てきますよね。今回は日本のAI人材の展望について考えていきましょう。

    AI人材を分けると大きく3種類、チャンスを秘めているのは?

    「AI人材」と聞くと、AIエンジニアをイメージされる方も多いでしょう。そもそも、AI人材とは「AI研究者」「AI開発者」「AI事業企画」と、大きく3種類に分けることができます。これはIT人材白書2019でも定義されています。

    IT人材白書2019

    出典:IT人材白書2019

    AI研究者はAIに関する学術論文を執筆・発表するような人材で、国際的には欧米と中国が圧倒的な数を占めています。

    そして、現在ITエンジニアからの転身で非常に増えており、今後も注目されるのがAI開発者(AIエンジニア)です。数理モデルやライブラリを活用して、機械学習技術を搭載したソフトウエアやシステムを開発できる人材ですね。

    最後に、AI事業企画。私も事業企画のAI人材なのですが、現場で常に感じているのはAI事業企画のAI人材が日本にはまだ不足しているという点です。

    実はここにキャリアとしてのチャンスを秘めています。

    ZOZOテクノロジーズ野口竜司氏の著書『文系AIになる』が2019年末に発売されました。この本でも強くメッセージングされているように、「AIは“つくる”から“使う”時代」になってきています。GUIを使って簡単に構築出来るシステムも出来てきており、今年はノーコード(プログラミング無し)のトレンドも起こっていて、誰にでもAI活用の道が拓かれています。

    中国、フィンランド、シンガポールなどの事例でお伝えしたように、世界的にも「AI人材」は、AI開発者側だけの問題ではなく、「AI活用人材」を育成していくことが大きなトレンドになっているのです。どんなに精度の高いモデルを開発しても、お金を生まないとビジネスにはなりません。いかに「AI技術で儲けられるか」というビジネスサイドの課題が多くあります。

    テクノロジードリブン・バズワードによる弊害

    特になぜAI事業企画が必要かというと、まだAI活用を検討している企業は「課題が不明」であることが多いからです。PwCの調査でも約40%は課題が不明であることが課題という結果が出ています。

    「平成30年度成果報告書 産業分野における人工知能及びその内の機械学習の活用状況及び人工知能技術の安全性に関する調査」

    引用:「平成30年度成果報告書 産業分野における人工知能及びその内の機械学習の活用状況及び人工知能技術の安全性に関する調査」

    AI、DX(デジタルトランスフォーメーション)はバズワードとなっていますが、「自社も取り組まなくては」という危機感から、言葉だけが先走りして、技術が目的化してしまうことがありませんか? これが、テクノロジードリブン・バズワードによる弊害です。

    今年になってからは特に「AI」より、「DX」という言葉がトレンドになってきていますよね。昨年までは「AIで何かできませんか?」とよく聞かれましたが、今年は「DXのために自社は何ができるか?」という言葉が増えています。

    事業・プロセスのデジタル変革をする際に、何が課題で何がテーマなのかは、DX推進部署などができてから検討されることもしばしばあります。そこで必要になってくるのが、AI事業開発なのです。

    もちろんAIを活用したサービスを企画し市場に売り出すミドルレベル自体も不足しているのですが、何より足りないのがAIの技術的概念を理解したエキスパートレベルのAI事業企画ポジションです。

    昨今プログラミングスクールもブームで、AIエンジニアも多く増えています。ですが、増えている中、プログラミングができるだけではキャリアとしてはレッドオーシャンになってしまいます。サービスを企画し、市場に売り出すまでの事業開発までできると、AI市場において非常に稀で重宝される人材になります。

    AI人材の中でも「AI事業企画」がチャンスなのはそれが理由です。

    今後のAI事業開発において重要なポイント

    AI事業企画・推進において重要なポイントは、技術を理解し、組み合わせる事例を知ることがてっとり早いと私は感じています。

    アイデアを考える時にお勧めしたい著書として、ジェームス・W・ヤングの「アイデアのつくり方」という本があるのですが、そこには「アイデアは既存の組み合わせ以外の何ものでもない」という有名な言葉が記されています。

    「AIがどのように使われているのか」「どのようなAI導入の成功事例があるのか」などを多くインプットし、他業界の事例が自社に使えないかと応用することで、新しい事業のアイデアが誕生していくのです。

    中国ではAIの社会実装が驚くべきスピードで進んでいますし、ユニコーン(未上場の時価総額1000億円以上の企業)もアメリカを筆頭に400社以上あり、多くのテック企業でAIが活用されています。海外のAI事例にも目を向け、日本でのAI成功事例をいかに早くつくっていけるかが、2020年~2021年の大きな課題となるでしょう。

    8月にガートナーが先進技術におけるハイプ・サイクルを発表しましたが、「説明可能なAI」は既に「過度な期待のピーク期」を越えました。その他にも「期待」から「幻滅」に移り変わる技術も多いことと思いますが、幻滅期にこそ成功事例をつくり、啓蒙活動期までもっていけるかが企業・サービスの大きな転換になるはずです。

    ガートナージャパン

    出典:ガートナージャパン

    これまでAI人材について3回にわたり紹介してきましたが、AI人材とは「開発だけ」の人材ではありません。AI事業企画ができ、さらに社会実装ができるところまでが重要で、日本のエンジニアにおいては特に、この領域でのスキルを持てるかがキャリアのキーになるでしょう。

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