キャリア Vol.1028

自律型ロボットにリモート診断……新型コロナで大躍進した中国AIテクノロジー【連載:AI姉さん】

AI姉さんチェルシー

AI姉さん・チェルシーの海外AIビジネス事情

「日本はAI後進国だ」と言われているけれど、海外では今どのようにAI活用が進んでいるんだろう?本連載では、海外AIトレンドマーケターとして活動している“AI姉さん”ことチェルシーさんが、AI先進国・中国をはじめとする諸外国のAIビジネスや、技術者情報、エンジニアの仕事に役立つAI活用のヒントをお届けします!

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海外AIトレンドマーケター | AI姉さん 國本知里・チェルシー (@chelsea_ainee)大手外資ソフトウェアSAPに新卒入社後、買収したクラウド事業の新規営業。外資マーケティングプラットフォームでアジア事業開発を経て、現在急成長AIスタートアップにて事業開発マネジャー。「AI姉さん」としてTwitterでの海外AI事情やトレンド発信、講演、執筆等を行っている


皆さん、こんにちは。AI姉さんことチェルシーです。

最近の話題といえば、もう毎日のように新型コロナウイルスですね。元々中国で感染者が急拡大していましたが、「チャイナスピード」と呼ばれる中国テック文化の通り、ものすごい勢いで対応・対策が進んでいきました。

武漢でも1,000人が収容できる病院がわずか10日で建設されたことは驚きでしたね。

何より注目すべきは、中国は新型コロナウイルス対策にAI技術をフル稼働させ、パンデミック発生早期からウイルス拡散の勢いを抑えてきたことです。世界No.1のAI大国を目指す中国にとって、実はコロナウイルスが技術浸透のための最大のエネルギーになったのです。

では、どんな技術がどのように活用されたのでしょうか?本日は驚くべき、「コロナウイルスで大躍進した中国AI事例」についてご紹介します。

見世物だった無人店舗と自律型ロボットが大活躍

まず一つ目は、無人店舗と自律型ロボットです。

2017年、中国は「無人小売元年」で、無人店舗のブームが起こりました。しかし、実際の利用者からは「わざわざ画像の人物・物体認識で入店や支払をするより、今までのコンビニのほうが早くて便利」「無人のコンビニだと品揃えがよくないので、再訪するほどでもない」という声が多く、多数の無人店舗が翌年には閉店・倒産しました。

また、無人店舗と一緒に展開された、調理・配膳をする自律型ロボットも客寄せパンダ状態で、無人店舗・自律型ロボットは技術として注目はされど、生活には広がらずのままでした。

ですが、実際にコロナウイルスが発生し、接触を良しとされない状況で活躍したのが、これらの無人店舗・自律型ロボットなのです。

武漢の病院でも、隔離している患者に対して自律型ロボットが薬や食事のデリバリーをしたり、自律ロボに搭載されているカメラの顔認証や自然言語処理、遠隔操作の機能を活用しながら、患者に問題がないか遠隔で医師に様子を伝えていました。さらに病棟に無人店舗を作り、入店や支払を非接触で行えるようにもしています。

深セン本社Pudu Technology配膳ロボット
深セン本社Pudu Technology配膳ロボット
(参照:https://www.pudutech.com/project/anti_coronavirus
武漢の病院で活躍した医療用ロボット「AirFace」2
武漢の病院で活躍した医療用ロボット『AirFace2』
(参照:https://www.afpbb.com/articles/-/3267456?pid=3267456002

また、オンライン医療プラットフォームのPing An Good Doctorは「1分間の無人診断ボックス」サービスを展開。ボックス内でチャットや患者の声、画像などを通じて初期診断ができ、さらに併設された自動販売機で約100種類の薬を販売しています。こうした形の無人店舗技術も、ここに来て利用が進むようになりました。

Ping An Good Doctorの1分無人診断ボックス
Ping An Good Doctorの1分無人診断ボックス
(参照:https://www.androidpit.com/virtual-health-clinics-in-china

今まで活躍していなかった自律型ロボット・無人店舗ですが、過去に技術として確立されていたおかげで、緊急時でも即活躍できるようになったのです。

画像AI解析・AIアシスタントによるスピード・リモート診断

14億の人口と広大な土地が特徴な中国では、元々医師不足が課題となっていました。

中国政府が2017年に次世代AI発展計画を始動した際も、Tencentに対し医療AI画像診断などを通じた、AI医療の確立をメインテーマに与えていました。実際にTencentの覓影(ミーイン)というAIシステムで、AIが画像から大腸がんを96%以上の精度で検出する画像AI診断が進んでいます。

また、一般ユーザー向けに医療情報を提供するプラットフォーム『騰訊医典』では、AIアシスタントによる医療情報Q&Aと、3D画像を活用した医療情報の可視化という2つの機能を提供し、注目を集めました。

今回の新型コロナウイルスでも、多くの人はまず、スマートフォンでWeChatなどのミニプログラム(アプリ)を通じて、オンライン無料診察を行いました。

新型コロナウイルスに感染した可能性のある人は、無料の診察・診断を受けて、状況に合わせた合理的な対応策を教えてもらうことができます。そうすることで、病院に行って院内感染するリスクを避けることができるほか、現地の病院の負担を軽減することにもつながりました。

また、AlibabaはAI診断システムを早期に開発し、患者の胸部のCTスキャンでウイルス性肺炎の場合に対して96%の精度でコロナウイルスを検出できるようになりました。通常15分ほどかかる診察も、AI診断だとスピードは20秒。5,000件のコロナウイルス症例の画像とデータでトレーニングされ、中国全土の病院ではすでにテスト利用されています。

中国がAIに強いとされる理由は「社会実装力」と「データ量」にあると言われています。今回の新型コロナウイルスの件でも、元々社会実装されていた技術をベースに、さらに大量の医療関連データが集まり、AI領域における高精度・即対応を世界に見せしめました。

監視大国中国ならではの、ドローンAI追跡によるウイルス拡大の防止

中国といえば「監視大国」とも言われ、街中のカメラと顔認識技術によって、人物の行動を特定しています。例えば街中で信号無視した人がいればアラートが出るような仕組みになっており、皆さんの中にはこのような監視社会に対してネガティブな印象を抱く方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、現在の中国ではこのAI追跡技術が、コロナウイルスの拡大防止にも役立っています。中でも、もともとドローンメーカーとして有名なDJIのドローンが大躍進しました。

ただドローンを飛ばすだけでなく、ドローンに熱探知センサー、高解像度ズームレンズ、スピーカー、消毒スプレージェットなどを搭載し、街中を無人偵察。

あるご老人がマスクなしで外を歩いているのをドローンが見つけては、「マスクをしなさい」とスピーカーから呼び掛けるのです。

人間の足では赴くことができない幅広いエリアを偵察し、非接触での呼び掛けを行うことでウイルス拡大の防止に役立ったのがドローンであり、それを支えるAI技術だったのです。

危機をスピードでチャンスに変える中国

AI開発を行う上では、やはり「データ」をどう集め、精度を上げていくのか、そしてそれをどう「ビジネス」につなげていくのかという、2つの大きなチャレンジがあります。

無人店舗の例で述べたように、過去の実証実験が多い中国では、これまでに多くのAI関連ビジネスが失敗に終わりました。ですが、過去の失敗があるおかげで、今回のコロナウイルスでは早期にさまざまなテクノロジー立ち上がり、早期終息に大いに役立ちました。

そしてこの件を受けて大量のデータが集まっていますから、今後はそのデータを活用し、さらなる高精度AIの開発が進んでいくでしょう。今回の危機を救ったのはまさにAIテクノロジーであり、そのエンジンがチャイナスピードでもあります。

世界的にもまだまだ続くであろう新型コロナウイルスの影響。日本でも警戒が強くなっており、コロナショックで不況も続くことでしょう。ですが、この危機をいかにチャンスに変えていくかが大切です。

中国ではAI技術を生かした企業が大躍進しました。エンジニアの皆さん、「今こそテクノロジーを飛躍させるチャンスである」という希望を持って、新型コロナウイルスに向き合っていきましょう。

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