国内IT人材20倍、売上400倍…次なる“アジアのシリコンバレー”としてベトナムに熱い視線が注がれる理由
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今、世界のIT市場では、中国への依存度を下げるために開発拠点を分散させる「チャイナプラスワン」が加速している。そこでひと際熱い視線が注がれている国が、ベトナムだ。
インテルやAppleを始め、多くのグローバルIT企業がベトナムへの投資を拡大しており、中国・深センに次ぐ「アジアのシリコンバレー」との呼び声も高まっている。
なぜ今世界のIT企業が、ベトナムに注目するのか。ベトナム最大手のIT企業・FPTソフトウェアの日本法人であるFPTジャパンホールディングスに訪問し、代表のグェン・ヴェット・ヴォンさんにベトナムのIT市場の現状を、さらに同社で働くエンジニアの金城さんに、現地の開発現場についてを伺った。
国を挙げて「IT人材大国」に成長したベトナム
ベトナムのIT業界の伸びはすさまじい。2000年の国内IT産業の売上は3億USドルだったが、2020年には売上1200億USドルと400倍に。グェンさんは成長の背景を次のように説明する。
「ベトナムは国の方針として『IT国家戦略』を掲げ、電子政府や民間企業のDX促進にも積極的です。政府がITスタートアップ支援も行っており、2020年だけでも約12万の国内技術系企業が誕生しました。
さらに国を挙げて、IT人材の育成に注力しています。理系の教育は世界ランキングでトップ10に入る高水準。ベトナム人は真面目で勤勉な国民性ですし、国民の平均年齢が28歳なので、若くて優秀な技術者が育ちやすいのです。実際にこの20年で、IT産業の労働人口は約20倍に増え、100万人を超えました」
ベトナムでは、世界中のIT企業からの投資も増えていると続ける。
「ベトナムはIT企業の法人税やIT人材の所得税が優遇されていますし、ハードウェアやソフトウェアには輸出税が掛かりません。経済は急成長していますが、アジアの中でも通信費は安めですし、人件費は中国やインドに比べるとまだ3割ほど安く、国として政治的にも安定している。海外から投資するメリットがそろっているのです」
AI、ビックデータ…最新技術の新規案件はベトナムで開発
成長著しいベトナムで最大手のIT企業が、FPTソフトウェアだ。同社が1988年にベトナムで設立された当初は、ベトナム戦争の影響で国全体が貧しく、外国からの投資の受け入れも禁止されていた。FPTソフトウェアは、その中で政府機関のIT環境をゼロからつくり上げ、国内トップのIT企業になったのだ。
「FPTは国と共に発展してきたグループですから、自社のためだけでなく、業界全体、国全体を発展させていきたいと考えています。例えばIT人材育成のために、大学や専門学校などを設立しており、現在約6万5千人が在学中です。また、CMMI(グローバルなソフトウェア開発基準)をいち早く導入し、そのノウハウをベトナムのIT企業に無償で提供しました。FPTの会長は、ベトナムソフトウェア協会(VINASA)の代表も務めており、IT産業のさらなる発展のために業界全体を引っ張っています」
さらに近年では、日本企業のオフショア開発の地としてベトナムが選ばれるようになり、グェンさん率いるジャパンホールディングスはFPTグループ最大の海外子会社となった。
「日本は30~40年前に中国でオフショア開発をし始めましたが、現在は『チャイナプラスワン』を探す動きが強まっています。中でもベトナムと日本は国同士の友好関係が非常に良いので、信頼できるパートナーとして選ばれることが増えてきました。ベトナムでは日本語教育も盛んで親日家も多いので、相性もいいのでしょう。日本企業のオフショア開発は、既存案件は中国で、AIやビッグデータなど最新技術に関する新規案件はベトナムで、と使い分けるケースも多いですね。
日本企業がベトナムでのオフショア開発をスムーズに進められるようにするのが、FPTジャパンホールディングスの役割です。当社は1500名のエンジニアのうち、約8割がベトナム人。技術力はもちろん、日本の金融・製造・物流など、あらゆる業界の業務への知見も深く、お客さまの要望をベトナムの開発者に正しく伝達する架け橋、いわゆるブリッジSEとして活躍しています」
ベトナムのIT産業が毎年130%の成長を続ける中で、FPTジャパンホールディングスも同様に盛り上がりを見せている。
「日本法人は2005年に設立され、社員の平均年齢は32歳と、まだまだ若い組織。しかし伸びている場所に身を置きながら働いているエンジニアは、成長も早いものです。当社にはベトナム人だけでなく、ヨーロッパ・南米・東南アジアなど多様な国籍の社員がいますし、女性社員も多く活躍しているので、ダイバーシティな環境下というのも成長を促す要因だと考えています」
現場エンジニアが語るベトナム人エンジニアの優秀さ
では、実際の開発現場で「ベトナム人エンジニア」はどのような活躍を見せているのか。日本法人でベトナム人の同僚と共に、現地のオフショア開発の架け橋として活躍するエンジニアの金城さんに話を聞いた。
「私は前職でコールセンターのヘルプデスクに従事した後、2018年にFPTジャパンホールディングスに転職しました。きっかけは、前職で当社のエンジニアと一緒に仕事をしたこと。技術スキルをもっと磨きたいと転職を考えていたタイミングで、今の上司であるベトナム人エンジニアに『うちはどうかな?』と誘ってもらいました」
以前までは「ベトナム人は穏やかで、良くも悪くも“ゆるい”感じの人が多いイメージがあった」という金城さんが入社後に驚いたのは、ベトナム人エンジニアの優秀さだという。
「僕が一緒に働いたベトナムのエンジニアは皆すごくパワフルで、仕事のスピードがとにかく速いんです。例えば、納期が1週間後の仕事でも、頼んだ日のうちに上がってくる。間違いを指摘してもササッと直してくれて、対応も柔軟。スピーディーにやりとりができるので、結果的に良いものが作れていると思います。
発想や発言も、大胆で面白いですよ。クライアントから何か頼まれても、本当にそのシステムが必要なのか、というところから考える。お客さまに『その仕事、やらなくていいんじゃないですか?』と伝えて、仕事がなくなったこともあります(笑)。でもそれって、お客さまの立場で真剣に考えているからこその発言なので、結果的にクライアントの信頼を勝ち取ることができました。日本だとなかなか見ない光景だと感じましたね」
現在は日本の大手通信事業会社に常駐しているという金城さん。Webエンジニアとして現場での開発にも携わる中で、ベトナム人エンジニアの勢いを肌で感じている。
「オフショア開発では言語や開発環境など、いろいろな壁にぶつかることが多いんです。しかし日本にいる同僚も現地でオフショア開発に従事している方も、ベトナム人エンジニアは本当に頼りになる。皆さん勤勉なので圧倒されることも多いですね。語学もよく勉強していて、日本の文献や海外のテクノロジー系の論文を読むなど先端技術のキャッチアップもとにかく早くって。
自分も負けていられないな、と良い刺激をもらっています。僕はオフショア開発チームに正しい指示を出す役割として、誰よりも要件を理解して、それを丁寧に伝えなければならない立場。技術力だけではなく調整力やコミュニケーション力を高められるように努力しています」
国を挙げて優秀なエンジニアを生み出しているベトナム。勢いのある同国のIT人材は、日本のエンジニアにも刺激を与えているようだ。今後はベトナムが「アジアのシリコンバレー」として、日本のIT市場にも良い影響を与えてくれることを期待したい。
取材・文/古屋 江美子 撮影/赤松洋太
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