例えばユーザーが検索エンジンを使って調べ物をするとき、 任意の検索キーワードを入力し始めると、 次に続くと予想されるキーワードを先回りして 表示してくれる機能がありますが、 こうした入力補助やレコメンド機能を実装するには、 あらかじめ辞書を用意しておく必要があります。 そんな時にわたしたちが担う役割は、 テラバイトオーダーのログから使用頻度の高い検索キーワードを抽出し、 分析を加えて辞書に適した形にまとめることです。
データアナリストになる方法~コンサル型かエンジニア型か?ビッグデータ時代に市場価値を上げる2つの道
情報工学科の修士課程で自然言語処理を学んだ奧野陽氏は、卒業後、検索エンジンを手掛けるWeb企業に入社。以来、研究開発部門所属のデータアナリストとして、主にテキストマイニングを中心とした解析業務に勤しんでいる。
最近では、Webサービスの機能改善や精度向上を目的に解析を行うことが多いという。
その辞書は、最終的に実装部隊の手によって検索エンジンをはじめとするWebサービスに組み込まれ、ユーザーに使われるようになるわけだ。
そもそも奧野氏がデータ分析に興味を持ったのは学生時代。一見、数値やテキストの羅列に過ぎないデータの中から規則性を見つけ出すことに魅力を感じたからだ。就職後、データアナリスト業務を仕事にするようになってからは、発見した規則性や法則が、自社サービス向上につながることに喜びを見いだすようになったという。
データマイニングの活用範囲は非常に幅広い。奥野氏の得意とするテキスト解析にとどまらず、例えばサイトのデザインを判定する際に、ユーザーの行動履歴からより好ましいデザインはどちらかを判別したり、ユーザーの購買履歴から今後力を入れて販売すべき商品を割り出すことにも活用できる。現在ニーズは拡大するばかりだ。
これまでは『データマイニング=マーケティングや金融分野』 というイメージがありましたが、今はそれだけにとどまらず、 検索エンジンや広告、ソーシャルゲーム分野での活用が進んでいます。 その上、以前とは比じゃないくらい巨大なデータを扱えるようにもなった。 そのため大手SIerの中には、自社内にアナリストを抱えることができない 製造業や金融分野の顧客からビッグデータ解析案件を 受注するケースが増えているそうです。 市場はWeb業界から他業界へ向け、急速に広がっていると見て良いでしょう。
奥野氏がこの仕事に携わって3年あまり。ビッグデータに対する関心の高まりを肌で感じてはいるものの、データアナリストはまだまだ少ない。奥野氏いわく、「ハードルが高そう」、「仕事内容を具体的にイメージしづらい」と敬遠されているように感じるそうだ。
わたしたちの仕事はアプリ開発を中心としたフロントエンドよりも、 バックエンド側の仕事に近いものです。 サーバのセットアップやチューニング、 プログラム開発経験がある方にとって親和性が高い仕事だと思います。 また膨大なログを扱う際に、Hadoopで分散処理を行い、 PythonやRで分析することが多いので、こうしたツールや言語を 使いこなせる方にとってもチャンスが多い世界だと思います。
ただ、ツールには流行り廃りが伴うもの。本質的に持っておかなければならない資質やスキルにはどのようなものがあるのだろうか?
もしこの仕事に就いたら、遅かれ早かれデータマイニングの専門書を 2~3冊読みこなすくらいの知識は必要になりますから、 仕事であれ趣味の範疇であれ、早いうちに体系だった知識を 身に付ける努力をしておいた方が良いと思います。 まだそこまで取り組んでいなくても、学生時代に自然言語処理や 人工知能といった情報工学系の学問を学ばれていた方、 数学系でいえば統計学や確率論、または最近注目が集まっている 機械学習の領域を学んだことがある方は、 学校で培った専門知識は活かせると思いますよ。
まずはビッグデータのマイニング業務や分析業務に関心があり情熱が持てるかどうか。もし興味があるなら、人材の需給ギャップが著しい今こそ、身を投じるタイミングなのかもしれない。
コンピュータに仕事をさせるのがプログラマーなら、 一歩進んでデータに仕事をさせるのがデータアナリストの役割。 先にもありました通り、ビッグデータの活用範囲が広がれば広がるほど、 わたしたちの役割が重要になってきます。 もし、データアナリストの数が増えれば、 その分自然言語処理や機械学習などより専門性の高いポストが生まれ、 データの有用性がさらに高まるでしょう。 そんな時代が来てくれるとうれしいですね。
取材・文/武田敏則(グレタケ)、小禄卓也(編集部)
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