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評価されない「キャリアの停滞期」を一流クリエイターはどう乗り越える? 【コルク佐渡​​島庸平×澤円 対談】

スキル

周囲の人から評価されない、何だか仕事を楽しめない、アイデアが枯渇してクリエイティブになれない……。そんな「キャリアの停滞期」を経験したことがあるエンジニアは多いだろう。

スランプを抜け出す方法は人それぞれだが、一流クリエイターならどうするか。

前回の記事に引き続き、コルク代表の佐渡島康平さんと澤円さんに「キャリアの停滞期」の過ごし方について聞いた。

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株式会社コルク代表取締役社長
編集者 佐渡島庸平さん(@sadycork

東京大学文学部を卒業後、講談社に入社し、『モーニング』編集部で井上雄彦『バガボンド』、安野モヨコ『さくらん』のサブ担当を務める。2003年に三田紀房『ドラゴン桜』を立ち上げ。小山宙哉『宇宙兄弟』もTVアニメ、映画実写化を実現。伊坂幸太郎『モダンタイムス』、平野啓一郎『空白を満たしなさい』など小説も担当。2012年10月、講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社・コルクを創業。最新著『観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか』(SB新書)が好評

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株式会社圓窓
代表取締役 澤 円さん(@madoka510)

立教大学卒業後、生命保険のIT子会社勤務を経て日本マイクロソフトに転職、2020年8月に退職し、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数々のベンチャー企業で顧問を務める。 『「疑う」からはじめる。 これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム)、『「やめる」という選択』(日経BP)など著書多数

これって本当にスランプ? 自分の状態を測る「オリジナルのものさし」を手に入れよ

――仕事がうまくいかない、評価もされない……。そんなスランプ状態に陥ったとき、お二人ならどうしますか?

佐渡島:いいアウトプットが出せない時期があるのって、自然なことだと思うんですよね。だから、僕はあんまりそういうことに悩まない。

コルク佐渡 島庸平×澤円

佐渡島:例えば人間の体だって、食べて、胃腸で消化して、出して、というサイクルを繰り返している。ここでいう食料、つまりインプットがない場合、アウトプットし続けろっていわれても、体だって無理でしょ。それと同じ。

「あ、今はインプットに集中する時期なのかな」って思えばいいんじゃないかな、と。

澤:そもそも今、スランプなの? ってことも疑った方がいいですよね。

佐渡島: まさに。短期的に見たらスランプかもしれないけど、長期的に見たら全然そんなことないな、とか。別の角度から見たら、すごくいい時期じゃないか、とか。

良い、悪いの尺度を広げて自分のことをじっくり観察してみると、何か気付きを得られるかもしれませんね。

澤:自分の状態を評価する単位が一つではないと知っておくことは重要です。

例えば、柔道の選手も100m走の選手も大枠では「スポーツ選手」ですが、成果の測り方は全然違いますよね。柔道の選手が100m走を速く走れないからといって、「この人、スポーツ向いてないね」とはならないはずです。

コルク佐渡 島庸平×澤円

澤:そして、今の話はエンジニアにもそのまま当てはまります。さっきのスポーツ選手の話と同じで、エンジニアとひとくくりに言っても、その中で求められる役割はさまざまですよね。

本当は柔道向きなのに100m走のような働き方や成果の出し方を求められている場合、「自分にエンジニアは向いていない」と思ってしまうかもしれない。

でも、実際はそうではありません。エンジニアの中にもいろんなタイプがいていいんだから、自分のことを測る単位を間違えていただけ、ということも十分にあり得ますよ。

佐渡島:自分の状態の良しあしを判断するのに「複数の基準」が存在すると知っておくことは重要ですね。

それが後に、自分だけのブレない価値観を築くことにも役立ちます。

澤:会社の中で評価される基準や、社会の中で良しとされる基準。何となく良しとされている基準と自分を照らし合わせて「自分はだめだ」と落ち込む人は多いですけど、一流のクリエイターを目指す人が持つといいのは「自分オリジナルのものさし」です。

いつでも自分の状態を正確に測定できれば、何を改善するべきなのか、もしくは改善する必要がないのかが分かる。キャリアの停滞期を乗り越える際のより所として有効だと思います。

転職、独立のベストタイミングは待ち続けても来ない

――スランプに陥ると、まずは環境を変えてみようと考える人も多いですよね。エンジニアであれば、転職や独立に踏み出す人もいると思いますが、環境を変えるベストタイミングってあるんでしょうか?

澤:動き出すのはいつでもいいんじゃないでしょうか。キャリアの停滞期に環境を変えるのも、悪いことじゃないと思いますよ。

「こんな状態で転職しない方がいいかな」と案ずる人もいるかもしれませんが、ベストタイミングを待ち過ぎないことの方が重要です。

佐渡島:「ベストタイミングを待つ」のではなく、自分の決断や行動を「ベストタイミングにする」意識を持った方がいいですよね。

コルク佐渡 島庸平×澤円

佐渡島:漫画家はよく「アイデアは神待ち」とか言いますが、いつまで待っても神は降りてきません(笑)。それと同じで、ベストタイミングはむこうからやってきてはくれない。

どんなにしょぼくても、絞り出したアイデアを「いいアイデア」にするためにブラッシュアップする努力をする方がよほど大事です。

澤:まさにそうですね。

佐渡島:「今の仕事が落ち着いたら動こう」と思っていても、やっとその時が来たと思ったら災害が起きたり、今回みたいに新型コロナの感染拡大があったりするわけで。

「今は時期が悪いからやめておこう」と動かない理由を探せば、常に一つや二つはあるものです。ですから、思い立った時に動く。それを正解にする。全て自分次第だと思いますね。

「いいキャリア」を引き寄せる自分軸の育て方

――自分の状態を把握する、自分の行動を決める、全て「自分のものさし」が大事ですよね。「常識」にとらわれそうになることもありますが、どうやってこのオリジナルのものさしを手に入れたらいいのでしょうか?

佐渡島:まずは、他の人が決めた尺度に自分自身が合わせにいっていることを自覚することですね。

その上で、じゃあ、自分はどう感じるか、どう考えるか、問い直してみる。そういうサイクルをまわす必要はあると思います。

澤:同感です。普通にしていたら、いろいろなバイアスが自分にかかるわけなので、その事実に気づいて、自分に疑いの目を向けること。

コルク佐渡 島庸平×澤円

澤:そして、他人が定義した「キャリアの正解」に自分が合っているかどうかを考えるのはやめる。そんなことをしても、何の意味もないです。

そもそも、未来は不確定なもの。ですから、正解もないし、どんなキャリアをつくったっていいはず。その事実に納得することが第一歩でしょうね。

ちなみに僕自身は何事も自分軸で決めるようになってから、幸せ度は明らかにアップしました。今、最高に幸せ。

佐渡島:澤さんがマイクロソフトを退職したのも、「自分のものさし」で幸せの尺度を決めたからですよね。

澤:そうです。もちろん企業にいるのが悪いという話ではなくて、僕にはそれが合わないと思っただけ。

自分の外側ではなく、自分の内側に答えを求めること。満足のいくキャリアを歩めるかどうかは、それ次第だと思いますね。

書籍紹介

『観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか』(佐渡島 庸平著:SB新書)
『観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか』(佐渡島 庸平著:SB新書)

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『「やめる」という選択』(澤円著:日経BP)
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取材・文/一本麻衣 編集/栗原千明(編集部)

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