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Flutter開発・西まりもが週休3日の会社をつくった超シンプルな理由「仕事好きなエンジニアほど意識的に休む、を前提に」

働き方

グラフで見る「パフォーマンスとコンディション」の関係性

“心・技・体”ベストバランス

エンジニアがいい仕事人生を歩むために、「心と体のコンディション」と「仕事のパフォーマンス」にはどんな相関関係があるのだろう? 高いパフォーマンスを発揮するエンジニアの経験談から「心・技術・体」のベストバランスを学ぶ!

今回話を聞いたのは、通販事業の販売企画、マーケティングを経て、26歳でIT会社ドリグロを仲間と起業した西真央さん。

ドリグロは、受託アプリ開発を中心に上場を目指し設立した会社。創業から4年が経った今では従業員も17名に増えた。

そんな企業の代表としても活躍する彼女は、Twitter上では「西まりも」として、Flutterアプリ開発の情報を届けるインフルエンサーでもある。

経営者として、いちエンジニアとしても注目を集める彼女だが、「仕事のパフォーマンスも心身のコンディションも、どちらもブレることはあまりない」という。その秘訣は、彼女自身の「気持ちを上げていく」セルフコントロール術にあった。

プロフィール画像

株式会社ドリグロ 代表取締役社長 西真央さん(@marimo_engineer

大学卒業後に就職した通販事業会社の販売企画、マーケティングを経て、2018年にドリグロを創業。2年目からモバイルアプリの受託開発を開始、医療介護求人アプリ『IMORY』などの実績がある

「楽しい仕事」が高いパフォーマンスを維持してくれる

西まりも

――西さんの仕事のパフォーマンスと心身のコンディションの相関関係をグラフで見ると、パフォーマンスは常に高い水準ですが、少しずつ右肩上がりで推移していますね。

私はパフォーマンスにそれほど大きな浮き沈みはなくて、できるだけ高い状態をキープしている感じです。安定していると言えば聞こえはいいですが、いつも忙しいのでそれくらいでいなければ仕事をこなせない、というのが正直なところですね。

それは新卒で入社した会社の時から変わらず、自分としては常に高いパフォーマンスを意識してきました。そして今も、経営者ではありますが6割くらいは現場の仕事に携わっているので、アウトプットにはかなりこだわっています。

本当は常に100%を出せればいいのですが、そうなると燃え尽きてしまうので……少し余力を残して、80%~90%くらいですね。

――短期的に見て、パフォーマンスが上下することはないのでしょうか。

「上下」というよりは、一時的にパフォーマンスがぐんと上がることが多いです。私はとにかく「仕事を楽しむ」ことを大切にしているので、自分が仕事を楽しんだ分だけぐんとパフォーマンスも上がるんですよ。

アプリの受託も、お客さまと一緒に企画して作り上げていくこと自体を楽しみながらやっていますし、それが仕事のモチベーションにつながっています。ですから、そうしたモチベーションが大きく上がると、パフォーマンスも一気に高まるといった感じですかね。

個人的には、どの仕事も楽しいのですが、特にその傾向が表れた仕事を挙げるなら、初めて受託開発を手掛けた時。当時はまだ、ドリグロを創業したばかりの頃でした。

先方の担当者の方も、私たちもすごく気合いが入っていましたし、議論も白熱して。とにかくいいものを作ろうとテンション高く開発を進めていた結果、とても良いアウトプットが生まれました。このアプリの成功は、会社としても大きな飛躍のきっかけとなりましたね。

大きな案件だったので、もちろん責任や重圧もありましたが、その分楽しくてワクワクしていたんですよ。それがパフォーマンスにもつながったというわけです。

西まりも

――会社員として働いていた頃と、経営者になってからの自分を比較すると、「仕事の楽しさ」にどんな変化がありましたか?

会社員の頃は、会社に守られているという安心感はある半面、自分の責任で仕事を動かすこととそのリターンとしての楽しさまでは感じられていませんでした。当時はそこまで考えずにいたというか……。

でも実際、経営者になってみると、その責任の重さは半端ないですが、それが楽しいと思える自分がいました。日々どんどん変化する状況に対応しながら、責任を持って挑戦する、という仕事のスタイルが自分に合っていたんでしょうね。

課題も多いですが、それが大きければ大きいほど、解決した時に自分や組織の成長を感じられる手応えもあるんです。

メンタル不調を感じたら、原因を考えるよりも先に「切り替え」を重視する

――一方、心身のコンディションの方は細かく上下している時期がありますよね。これは何が原因だったのでしょうか?

幸いなことに体力はかなりある方なので、身体的にしんどいと思うことはありません。

コンディションの落ち込みは、主にメンタル的な部分の影響が大きいです。私の場合、「精神的なキャパシティーオーバー」の状態が続くと、アウトプットが短期的にガクッと下がることがありました。

例えば、1年ほど前に大きなアプリ開発のプロジェクトに携わってきたのですが、その時は関わっている人の数も多くトラブル続きで、自分の手が回らなくなりかけたことがあったんです。

気持ちとしては頑張りたいし、問題の解決策を常に考えてはいる。けれど一方で「どうしよう、これ以上やったら回らなくなっちゃう」という気持ちもあって。

すると脳が疲れて頭が回らなくなってきて、いくら考えても良いアイデアが出てこなくなってしまったんです。

――そういった、メンタルの不調が原因でパフォーマンスが下がった時には、どう対処しているのでしょうか。

すごくシンプルなんですけれど、何も考えずに休む時間をつくります。1時間でもいいのでボーっとする時間をつくったり、いっそ一日休んで映画を見に行ったりして、その間はいっさい仕事のことを考えない。

「回復、早すぎじゃない?」と言われることもありますが、くよくよしたり、ネガティブな気持ちになったりしている時間がもったいないと感じてしまうんですね。

早く楽しい気持ちに切り替えたい。だから、テンションが落ちても、その原因を考えたり、対策を練ったりするより先に、「気持ちの切り替え」をするようにしています

――気持ちの切り替えに一番効果的なのは?

気持ちがどん底まで落ちる前に、ちゃんと休むことですね。そうすれば、そもそも復活できないほど落ち込むこともないし、すぐに回復できるので。

これは当社の社員にもぜひ取り入れてほしいと思っているので、ドリグロでは昨年から週休3日制を採用して、土日の他に水曜日も休みにすることにしたんですよ。

社員のエンジニアたちはその日を生活のリズムを整えるために使ってもいいし、自分のスキルアップのための勉強時間に使ってもいい。結果的に彼らがより高いパフォーマンスを出せるようになったと考えています。

西まりも

――「自分のメンタルが危険な状態だから休まなきゃ」というのは、自身で分かるものなのでしょうか? 「まだ大丈夫」と無理して働く人も多そうですが……。

そうですね、私も最近になってようやく「自分のストレスは、自分ではよく分からない」ということが分かってきたんですよ。

幸いにも、メンタルがぽっきり折れるほどのダメージを追わずにここまでやってこられましたが、「気付いた時には遅かった」なんてことは誰にでも起こり得ることです。

ですから、自分の心が致命的なほど疲れ切ってしまう前に、休む習慣を取り入れてしまうようにしているんです。多めに休んでおくに越したことはない、という考えですね。

私自身、放っておくといつまでも仕事のことを考えてしまう性格。追い立てられているからというわけではなく、仕事が楽しいのでずっと考えちゃうんですよ。

けれど、いくら仕事が好きでも、それをずっとやっているとどこかでエネルギーが切れてしまいます。それに、仕事って根詰めて考え続ければ答えが出てくるものでもない。その事実にもここ数年で気付くことができました。

エンジニアの方であれば、「プログラミングで壁にぶつかって、前日どれだけ考えてもいい案が浮かばなかったのに、寝て起きてみたら思いついた」という経験は多くの人がしているのではないでしょうか。

なので、パフォーマンスを落とさないようにするには「事前に休む」ことしか対策はないように思います。寝ることでも、好きなことをするのでもいいのですが、「自分は大丈夫」と思わずに意識してブレーキを踏んだ方がいいんだと、最近は感じていますね。

「自分の気持ちを上げる」仕組みをつくって

――西さんのお話を聞いて、意識的に休みを取り入れることを軽んじてしまっているエンジニアは多いのではないかと思いましたが、いかがでしょう?

そうですね。エンジニアは締め切りがあったり、こだわればいくらでもやれることがあるので、どうしても「働きすぎ」になりがち。それを自覚することが、コンディションとパフォーマンスのバランスを整えるための第一歩ですね。

また、私のように「仕事がとにかく楽しい」と思う人ほど、自分のスケジュールの中に意識的に休む時間を組み込むといいのではないでしょうか。その方が結果的にパフォーマンスを上げることにつながるはずです。

もちろん、がむしゃらに仕事をすることが自分の成長につながるという側面もあると思いますし、私自身もそういう時期がありました。けれども、もうちょっと自分を客観的に見て、時代に合わせた働き方を考えていく必要があるとも思っています。

西まりも

意識的に「休む日」をつくる西さん

――意識的に休むということの他に、まりもさんが自分のコンディションと仕事のパフォーマンスを保つために心掛けていることはありますか?

なるべく「ポジティブな言葉しか口にしない」ということですね。

――それはなぜですか?

自分に対しても、他人に対してもポジティブなことだけを言っていれば、自ずと気持ちもハッピーになれるから。これは当社の社員にも日頃からよく話していて、みんなにも効果があると感じています。

実は私、前に自分よりもベテランの方から「その程度の実力か、残念だ」といったネガティブな言葉をかけられた時、すごくショックだった経験があって。ずっとモヤモヤした気持ちを抱えたまま仕事をしていた苦い思い出があるので、絶対に他人に同じ気持ちになってほしくないなと思ったんです。

もちろんそれをバネに見返してやる!って気持ちも大事ですが、やっぱり私は何事も「ハッピー、楽しい」を大事にしていきたいんですよね。

このハッピー、楽しいという気持ちは、プライベートでも大切にすることで、仕事に相乗効果も生まれると思います。

例えば私はネイルが大好きで、毎月1回はネイルサロンにお金と時間をかけています。おかげで自分の爪を見るだけで気持ちが上がるし、仕事も頑張ろうと前向きになれます。キーボードを打つ手も軽やかになるような気がしますしね。

西まりも

他人から見たら、どうでもいいことかもしれないですけど、そうやって自分の気持ちを上げていく仕組みをつくっていくと、コンディションも安定しますし、パフォーマンスの向上にもつながっていくのではないでしょうか。

取材・文/高田秀樹 編集/大室倫子(編集部)

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