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【エンジニア松岡玲音】メルカリからMetaへ転職「厳しい環境で育ったブドウほど、美味しいワインになる。人間も同じでしょ?」

働き方

「このまま同じ会社で働き続けていていいのか」「マネジメント経験も積むべきだろうか」

20代後半、そんなキャリアの岐路に立つ人も多いだろう。そこで今回は、エンジニア・松岡玲音さんの選択を紹介したい。

薬学部を卒業後、アメリカの大学院で宇宙工学を学ぶうち、ロボット工学に興味を持ちMITへ転学。Twitterでのスカウトをきっかけに入社したメルカリで、今年5月まで機械学習エンジニアとして働いた。

この夏からは、ロンドンのMetaにジョインすることを自身のnoteで明かしている。これから先、どんな「エンジニアライフ」を思い描いているのだろうか。

※本記事は姉妹サイト『Woman type』より転載しております

プロフィール画像

松岡玲音さん(@lain_m21

1992年生まれ。東京大学薬学部卒業後、アメリカの大学院で宇宙工学を専攻。その後、機械学習のロボットへの応用へ興味を持ち、マサチューセッツ工科大学(MIT)の航空宇宙工学専攻へ転学。ロボットAIなどについて研究を重ねた。その後中退し、18年10月よりメルカリでインターンシップを開始し、19年1月に同社へ入社。機械学習エンジニアとして「出品価格推定」のモデリングや「レコメンドエンジン」の基幹システム、「エッジコンピューティング」など、メルカリの事業の中核となる技術に携わる。テックリードとしてプロジェクトマネジメントも担った後、22年5月に退社。同年夏からロンドンのMetaにジョイン

環境への順応に、危機感を覚えた3年目

今回の転職について「何を見据えての選択か」と聞かれると、少し答えに迷っちゃうんです。

というのも、私はキャリアビジョンというものを描くタイプじゃなくて。「10年後にこうなりたい」ってロードマップを決めることはできないから、考えるとしても1~2年くらい先のことまで。目の前の楽しそうなことを選んできた結果、今があります。

メルカリは、私にとってすごく快適な場所でした。でも、2019年にメルカリに入社してもう3年を迎えた時、ここにいて快適な理由は「慣れ」だってことに気付いたんです。

環境に慣れてしまって、50%、60%の労力で成果が出るようになってきた。もちろん、それはそれで悪いことではないと思います。余力で他のことができますしね。

でも、ある程度厳しい環境で自分に負荷をかけないと、成長が止まってしまう気がして。私、ワインが大好きなんですけど、厳しい環境で育ったブドウから作るとワインは美味しくなるって言われているんです。人間もそれと同じなんじゃないかな、って(笑)

メルカリは私にとってファーストキャリアなので、他の会社で働くイメージも湧かなかった。「ここを出たら生きていけないんじゃないか」とも思って、自分の実力を確かめる意味でも、転職してみようと決めました。

松岡さん

転職先の条件は、国際的な組織でかつ給料面のアップサイドが非常に大きい外資系企業。日本とは全く異なるカルチャーの職場環境に身を置くことは、コンフォートゾーンから脱することにつながると思ったんです。あと、ちゃんと働いて成果を出せばその分給料に跳ね返ってくるというのも魅力的でした。私の趣味はお金がかかるものが多いので……(笑)

より複雑で、責任範囲の広い仕事をしてみたい

Metaのロンドンのチームで働くことを決めた理由はいくつかあるのですが、一番の決め手は、自分が普段からよく使う世界規模のサービスの開発に関われるということ。特にInstagramは毎日のように見てますし、UI/UX含めてアプリとして好きなんです。そして、ロンドンにはFacebookやInstagramの広告を機械学習で最適化するチームがあります。

Instagramって、広告の精度がすごく高いと思いませんか? 私もユーザーとして使っていますが、すごく刺さる広告を表示してくる。なので、私もその開発チームに入れたらいいなと思ったんです。

これまで私が専門としてきた機械学習とアドテクでは、テックスタックが少し違う。そこも魅力で、新しい技術を学びながら、業務領域もend-to-endで幅広く手掛けていきたいと考えています。

Metaではシニアエンジニアのグレードで採用されました。規模の大きいプロジェクトをリードして事業貢献しつつ、いずれはスタッフエンジニアを目指したいと思っています。

スタッフエンジニアは、シニアエンジニアの一つ上のポジションなのですが、「シニアまでは大体の人は到達するけど、スタッフエンジニアになれる人はごくわずか」だと言われています。

社内での認知や影響力を広げて、各所との調整業務を行い、ジュニアメンバーを教育して、レビューを通して組織の技術水準を高く保つ。そういった、より「個人」から「組織」へフォーカスが向いたポジションです。

松岡さん

この説明を聞いて「しんどそう」と感じる人もいるかもしれませんが、私はぜひやってみたい。これまでとはかなり違う働き方やマインドセットを求められるので、自分にとって大きな刺激になると思うんです。

「成人発達理論」という学説があって、それによれば、人間の精神は高負荷な環境に晒されることで段階的に成長していくようです。発達することが常に正しいわけではありませんが、私はその先の景色にとても興味があって。

なので、今後の成長のためにも、複雑で負荷の大きい環境に身を置いてみたい。そんなモチベーションで、新しい職場で働いていこうと思っています。

「コードを書かなくなる」恐怖心はもうない。チームで成果が出せればいい

これから先、自分がコードを書く機会はどんどん減っていくと思います。でも、あまり不安は感じていないんです。だって、自分がコードを書かなくても、チームでもっと大きな成果が出せるなら、それもすばらしいことだから。

メルカリを辞める頃も、すでにコードを書く量は入社当時よりもかなり少なくなっていました。実を言うと、「それってエンジニアとしてどうなんだろう」「いつか全くコードを書けなくなるんじゃないか」と焦った時期もあります。

でも、最近は「多分大丈夫」って思えるようになりました。テックリードやマネージャーから、またコードをたくさん書く仕事に戻る人も結構います。そういった異なる視点を育んでからコーディングに取り組むと、より効率良く成果が出せるようになるかもしれません。

今後、Metaではスタッフエンジニアを目指していきたいとお話ししましたが、その先、起業をしたりCXOを目指したりすることは今のところ考えていません。

自分にとって、仕事も大事ですが、それと同じくらいプライベートや自分の健康も大切にしたくて。仕事が生活の100%近くを占めるようには今はしたくないんです。

この先、急にワインの資格を取りたくなるかもしれないし、低気圧で起きられない日が続くかもしれない。ひたすら本を読み漁りたい日々がくるかも……。会社員という形でなら、そういうプライベートと仕事のバランスを取りやすいと思っています。

松岡さん

もちろん、そういう状況をつくれるかどうかは自分次第なので、新しい職場や環境、チームに加わるこれからの数年間はとにかく全力で働いて、「成果の貯金」をつくりたいです。最初に成果を出して自分の価値を示しておくと、その後も働きやすくなるはずなので。

こうやって私は「今どうしたいか」「今何が欲しいか」からキャリアを決めてきましたけど、そういう考え方もいいのかなと思いますね。10年後とか、長期的なキャリアビジョンばかり考えても、未来はどうなるかわからないし。

目の前の「やりたいこと」や「欲しいもの」に素直になってキャリア選択を続けていけば、きっと楽しいエンジニアライフが開けていくと信じています。

取材・文/石川 香苗子 編集/秋元 祐香里(編集部)

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