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技術が「好き」な「理由」はいらない。優柔不断エンジニア流のキャリアの築き方~ソンムー(松木雅幸/ヘンリーVPoE)×ばんくし【聴くエンジニアtype Vol.38】

働き方

エンジニアtypeが運営する音声コンテンツ『聴くエンジニアtype』の内容を書き起こし! さまざまな領域で活躍するエンジニアやCTO、テクノロジーに関わる人々へのインタビューを通じて、エンジニアとして成長していくための秘訣を探っていきます。
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自分のキャリアを選択するとき「好き」を基準にする人は多いだろう。一方で「何が好きかわからない」「選ぶのが難しい」と悩む人もいるに違いない。

今回はそんな「決められない人」に送るメッセージがふんだんにつまった回。

自身を「優柔不断」と話すsongmu(ソンムー)さんこと松木雅幸さんは、株式会社ヘンリーのVPoE。ソンムーさんに、キャリアを選択したときの話を聞いた。MCはおなじみ、ばんくしさんだ。

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【ゲスト】
株式会社ヘンリー VPoE
松木雅幸(ソンムー)さん(@songmu

大学で中国語と機械翻訳を学び、語学学校でのシステム担当兼営業、印刷系SIerでの金融系Webシステムや物流システムの開発、ソーシャルゲーム開発のリードエンジニア、エンジニア向けSaaSのプロダクトマネージャー、IoTや電力事業スタートアップのCTO、外資スタートアップのICなどを経て現職。 現在はヘンリーで電子カルテやレセプトコンピュータなど医療DXに関わるシステム開発に従事している

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【MC】
エムスリー株式会社 VPoE
河合俊典(ばんくし)さん(@vaaaaanquish

Sansan株式会社、Yahoo! JAPAN、エムスリー株式会社の機械学習エンジニア、チームリーダーの経験を経てCADDiにジョイン。AI LabにてTech Leadとしてチーム立ち上げ、マネジメント、MLOpsやチームの環境整備、プロダクト開発を行う。2023年5月よりエムスリー株式会社3代目VPoEに就任。業務の傍ら、趣味開発チームBolder’sの企画、運営、開発者としての参加や、XGBoostやLightGBMなど機械学習関連OSSのRust wrapperメンテナ等の活動を行っている

ブログ「ハッカーの呪いと共に生きる」が話題、ソンムーさん登場

ばんくし:今回からソンムーさんをゲストにお迎えしています。ソンムーさん、まずは簡単に自己紹介をお願いします。

ソンムー:電子カルテやレセコンシステムのSaaSを開発しているヘンリーというスタートアップでVPoEを務めているソンムーです。

10年くらい前にWeb業界に入って、カヤックでソーシャルゲームを作ったり、はてなでチーフエンジニアとサーバー監視サービス『Mackerel(マカレル)』のプロダクトマネージャーを兼任したり、スタートアップのCTOをやったり……と紆余曲折を経てヘンリーにジョインしました。今の会社では今年の8月からVPoEを務めています。

GoやPerlを書くことと、バックエンドやSQLのあたりが得意です。言語としてはGoが好きですね。ISUCONでは何度か優勝したことがあります。本日はよろしくお願いします。

ばんくし:私にとってソンムーさんは「著名なエンジニア」なのですが、一度プライベートで飲みに行ったことがあるんですよね。リンケージのCTO・曽根壮大さんとSansanのVPoE・西場正浩さんと4人で飲むという、謎の会(笑)

ソンムー:謎の会でしたね。でもなんとなく横のつながりはあったので、「一回飲みに行きたいね」という話になったのかなと思います。

ばんくしさんとはあの時がはじめましてでしたが、お互いの発信を見ていたのでそれほど初対面感はなかったですよね。

ばんくし:実はあの時期、エンジニア人生に悩んでいたんですよ。でも、その飲み会でめちゃくちゃ実のあるお話を聞いて影響を受けたんです。

9月に書かれていた「ハッカーの呪いと共に生きる」というブログも読ませていただいたのですが、あらゆる成長の要素が詰まっためちゃくちゃいい記事で。ぜひまたお話ししたいと思っていたので、今日は楽しみにしていました。

「決断すること」の重要性

ばんくし:過去にソンムーさんが書かれている記事の中に「Web技術が好きだという情熱」の話が登場しますが、一方で「Web技術が好きだということを自覚するまでにモラトリアム期間があった」ともありました。ソンムーさんが「Web技術が好きだ」と自覚したのってどんな瞬間だったんですか?

ソンムー:正直に言うと、よく分からないんですよね。以前の僕は「仕事はほどほどで、趣味に生きられればいいや」って思っていて、仕事にフォーカスすることは全然考えていなかったんです。そこから結婚を考えるようになって、「もう少しちゃんとしないといけないな」と思い始めるようになりました。

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ただ、いろいろな可能性がある中で「一つの道を選んでしまうのが怖い」という気持ちもあったんですよね。まさにモラトリアム期間です。

その中で、ハッカーの人たちが格好良く見えて、「Googleとかはてなで働きたい」という気持ちが芽生えたのが27~28歳くらいのころ。僕はもともと優柔不断な人間なので、そのときにWeb技術の世界で生きると「決断した」ことが、自分の人生を変える転機になったと思っています。

優柔不断だからこそ、「決断すること」がどれだけ重要か身に染みて分かっているつもりです。

ばんくし:決断するまではWeb技術にこだわらずいろいろなことをされていたんですか?

ソンムー:そうですね。その前は語学学校の役員直下のポジションで営業兼システム担当をしていました。その役員の方はアイデアが豊富でさまざまなビジネスを考えつく人だったので、その下で何でも屋さんとしていろいろなことをしていたんです。

それはそれで楽しかったし、自分の糧になっていますが、あまり軸のない働き方をしていたとも思います。

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ばんくし:ソンムーさん的には、「その時期からプログラミングに携わっておけばよかった」という気持ちはあるんですか?

ソンムー:それはあまりないですね。もっと早くプログラミングに出会っていたら……とか、学生の頃とかにもっと真剣にやればよかったとか、全く思わないと言ったらうそになるけど、今そのときに戻ったとしても結局同じ人生を歩むような気がするので。

ばんくし:この世界にいると、子どもの頃からエンジニアリングに触れてる人って珍しくないじゃないですか。でも、ソンムーさんはそういう人に引け目を感じるのではなく、置かれた場所で咲こうという感じなんですね。

そういう考え方ってすごく大切な気がします。プログラミングっていつから始めてもできるものですもんね。

自分は「Web技術が好き」だと決めた

ばんくし:改めて聞くのですが、「Web技術を好きだと自覚する」って難しくないですか?

仕事だからコードを書いてるけど、好きだと断言できるほどじゃないって人は多い気がします。私もなぜプログラミングが好きなのかを言語化できたのって最近なんですよね。

ソンムー:僕の場合は「Web技術を好きになる」っていう決断をしただけで、「好き」な理由が明確にあったわけじゃないんですよね。もちろん最初から強い思いを持っている人もいるんでしょうけど、何となく始めたものが情熱になっていったというか……。逆に、「好き」の理由を明確に言語化できちゃうと、その情熱がしぼんでいっちゃうような気がするんです。

例えば、恋愛とかもそうじゃないですか? 「妻が好きな理由は?」と聞かれても答えられないですもん。妻のことを好きな要素に「外見」があったとして、仮に今後外見が変わっていったとしても「好きな顔じゃなくなったので嫌いになりました」とはならないと思うんですよ。好きな理由を言語化できなくても、好きなものは好きに決まってるんです。

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そういう意味では、「これが好き」と決断してしまうことが大事なんだと思います。理屈うんぬんではなく、とりあえず「決断する」とか「好きになる」ということが次のドアが開くきっかけになるような気がします。

ばんくし:決断駆動ということですね。私含めて「こういう理由でこれが好きなんだよね」という話をする人は多いと思うんですけど、ソンムーさんの意見にもすごく納得感があります。

例えば変な仕事を振られたり、やっかいごとが起きたりしても「自分で決断したことだから」と続けられるのが成長につながっているのかもしれないですね。

ソンムー:もちろん決断する前にある程度は自分に合っている・合っていないという視点で考える必要があると思うんですけど、「好きの理由」って補強材料として後付けするためのもののような気がするんです。

なので、「こういう理由があるからこれをする」と筋道を立てて次の行動を決めるというよりは、「これが好きだと決めたからこれをする」というイメージですね。

「エンジニアとしての自分はこのままでは死ぬ」という危機感が成長を後押しした

ばんくし:ハッカーコミュニティーに積極的に参加するようになったのも、「Web技術を好きになる」という決断があったからなんですか?

ソンムー:今となってはどちらが先か分からないんですけど、2007~08年あたりに勉強会に行くようになって、その中でWeb技術に興味を持ち始めたとも言えます。

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SIerに転職した時、社内では「すごいエンジニア」みたいな扱いをしてもらったのですが、Perlのコミュニティー「Shibuya Perl Mongers」で自分よりも若い方が難しい発表をしているのを見て危機感を覚えることがよくありました。あそこで登壇しているような人になるにはどうすればいいのか、と考えていましたね。

ばんくし:Shibuya Perl Mongersは今の40~50代の著名なエンジニアがゴロゴロ集まっていた技術コミュニティーの一つですよね。そこでの刺激は大きかったですか?

ソンムー:大きかったですね。当時在籍していた会社では「できる人」という扱いをしてもらっていたので、エンジニアとして順調に成長している感覚になってしまうんです。でも、Shibuya Perl Mongersに行くと違う次元で成長している人たちがいて、このままだと彼らには一生追いつけないと感じました。

「このままだとエンジニアとしての自分は死んでしまう」「彼らのレベルに行くにはどうしたらいいか」という危機感が成長につながったような気がします。

次回も引き続き松木雅幸(ソンムー)さんをお迎えし、お話を伺います。お楽しみに!

文/赤池沙希

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