

「考える力は価値が下がらない」厚切りジェイソンが話す、エンジニアが大切にしたい“一生ものの財産”とは?
「働く目的はお金でした。とにかく稼ぎたかったんです」
「お金」や「稼ぐ」といったキーワードが敬遠されがちな日本社会にいると、ジェイソンさんのストレートな一言は妙に清々しく聞こえる。
お笑い芸人、投資達人としての顔も持つジェイソンさんは、なぜ最初の職業にエンジニアを選んだのか。稼ぐためにどんな工夫をしたのか。
話を聞くと、変化の多い時代に必要とされるエンジニアであるために必要なことが見えてきた。

厚切りジェイソン(あつぎりジェイソン)(@atsugirijason)
1986年生まれ。アメリカ出身。2011年、渡日。12年、ITベンチャー企業・テラスカイに入社。現在も同社役員として働きながら、タレント業も精力的に行っている。『ジェイソン流お金の増やし方』(ぴあ)が70万部超のベストセラーに。2023年11月には新著『ジェイソン流お金の稼ぎ方』(ぴあ)を発売。
エンジニアの中でも“飛び抜けた存在”になるために
――ジェイソンさんがエンジニアという職業を選んだ理由は何だったのでしょうか?
父がコンピューターエンジニアの仕事をしていたこともあり、子どもの頃からITが身近で好きな分野でした。それに、僕はあまり感情がない人間で、物事を数学的、理論的に考えるタイプ。そうした性格もIT分野なら役立つんじゃないかという思いもあって、ごく自然に「社会に出たらITやコンピューターにまつわる仕事をする」とだろうと考えていましたね。
エンジニアになることは既定路線として、その上で大学を出て就職したばかりの僕にとって、働く目的はお金でした。

人より多くお金を稼ぐには、みんなと同じではいけない。周りと違うことをやらなければ、飛び抜けた存在にはなり得ません。僕が日本に来たのもそのためでした。それまで培ってきたコンピューターサイエンスの知識だけでは、数多くいるプログラマーと同じ。代替可能な存在のままです。
大切なのは、いかに自分の能力を掛け合わせて、他の人にはないスキルセットを組むか。僕の場合は、それが日本語でした。
独自に学んできた日本語に、母国語である英語、そしてコンピューターサイエンスを組み合わせれば、他者と差別化を図れる。そう考え、日本のITベンチャー企業に転職。アメリカと日本のIT関連の橋渡し役になるという存在価値を見つけたんです。
ただ、キャリアを積んでいけば自然と考え方も変わっていきます。飛び抜けて活躍できる人材になること。お金を稼ぎ、ビジネスパーソンとしての力を身に付けること。そうした人生の目標のほとんどを20代で達成した僕は、次第にこれからの人生をどう生きるかについて考えるようになりました。
経済的・社会的成功のためだけにアクセルは踏み続けられない
模索の末にたどり着いたのが、これからはもっと好きなことを楽しみながらやっていきたいという、一つの答えです。そして、それがお笑い芸人という新たなキャリアを開くきっかけになりました。
ただ、お笑いは決して仕事にするつもりで始めたわけではないんです。あくまで、趣味の延長線。平日は会社で働き、週末の可処分時間の有意義な使い方として、お笑いをやるという感覚でした。
それがいつの間にかいろんなところから声を掛けてもらい、テレビの仕事も増えるように。面白そうだから始めてみたものが、機会に恵まれた結果、仕事になっただけ。
それらは全て僕のコントロール外のことであって、決してお笑いで天下を取りたいと思っていたわけではないし、今も芸人という職業に自分のアイデンティティーがあるとは全く思っていません。

実際、もうこの数年はほとんどネタ見せのようなことはやっていないんですよね。最近多いのは、投資に関するお仕事でしょうか。これも以前出した書籍『ジェイソン流お金の増やし方』(ぴあ)がベストセラーになったことが大きな理由ですが、投資自体も昔からやっていたことで、仕事にしようと思って始めたわけではありません。好きなことをやっていたら、それが仕事につながっていただけなんです。
ただ、それはあくまで僕の話。この記事を読んでいる読者がまだ20代なら「好きなことをやっていたらいつか仕事になるよ」なんて無責任なことを言うつもりはありません。むしろ20代のうちから自分の楽しさを最優先していると、いずれ後悔する時が来るのではないかというのが僕の持論。
僕が皆さんと同じ年頃であれば、やっぱりいかにいち早く活躍できるかを軸に働く場所を探すと思います。若くして責任を持たせてくれること。そういう環境に身を置く方が成長のスピードは確実に上がるはずです。
「考える力」は価値が下がらない
――AIの進化が凄まじく、ますます変化の激しい時代になってきました。そんな時代でも必要とされるエンジニアであるために、何が必要だと思いますか?
大前提として、何よりも最初にすべきは「自分がどうなりたいか」、これからのビジョンを明確にすることです。
自分がエンジニアとして何をやりたいのかも分からないまま適当に流されて会社に入り、会社都合で振り分けられた仕事をこなし、何となく日々を過ごしていく。そんな人生を過ごしていたら、きっと50代を迎える頃には、自分の人生は何だったんだろうとむなしい気持ちになると思います。
本来は大学に入る前からきちんと考えておくべきことなんですが、なかなかそれができていない人も多いのが現実ですよね。
だったら、今からでもいい。ちゃんと自分がどうなりたいかを考えた方がいい。自分が何のプロジェクトに入りたいのかも、どんな会社に転職したいのかも、その先にあることです。
もし今、自分が何をやりたいのか分からない、どうなりたいのかも分からないというなら、視点を変えてみるのもいいでしょう。
例えば、今この世の中で必要とされているものは何ですか? 世間のニーズが高いということは、それだけビジネスのチャンスがあるということ。
やりたいことが分からないのであれば、そうしたニーズの高い領域にエンジニアとして飛び込んでみるのもいいかもしれません。まずは動いてみること。その一歩が、あなたの人生を動かすはずです。

そして、変化の多い時代だからこそ強く求められるのは「考える力」です。
仕事をしていれば、さまざまな問題にぶち当たります。そのたびに僕たちは解決策を考えていかなければいけない。しかも、ある問題で有用だった解決策が、別の問題でそのまま通用するとは限らない。新しい問題が発生するたびに、僕たちは新しい解決策を生み出していく必要に迫られるのです。
エンジニアのみなさんからすれば「何をそんな当たり前なことを」と思う人が多いとは思います。僕自身もエンジニアという職業は、自分で考えて課題を解決する仕事だと思っています。
ただ、日本のIT業界を見ているとどうもエンジニアという職業に対して誤った捉え方をする人も少なくはない気もしています。
例えば、「プログラマー=高い知識とスキルを持った専門職」と認識され、年収1000万円以上もらう人も多い米国に比べて、日本はどうでしょう。コピペでコードを書いてシステムを動かそうとする人がエンジニアを名乗っていたりしますよね…
ジョブ型採用が基本の米国だと、プログラマーになりたければ就職面接時にプログラミングができることを証明しなければ始まりません。
少し話が脱線してしまいましたが、時代の流れとともに陳腐化するスキルはビジネスの世界にもたくさんありますが、考える力はどれだけ時代が変わっても価値が目減りしない、一生の財産です。これをいかに早く身に付けるかで、あなたのキャリアも変わってくると思いますよ。
Information

ジェイソン流
『お金の稼ぎ方』
(ぴあ/2023年11月20日発売)
70万部を超えるベストセラーとなっている
『ジェイソン流お金の増やし方』の待望の続編!
ジェイソンさんの経験に基づいて導き出された、お金を稼ぐ力をつける方法“稼ぎ方”のヒントがつまった一冊です。今仕事をしている人は勿論、これから社会に入っていく大学生やどのような将来を目指そうか考え始めた高校生などにも役立つ一冊になっています。今回も人生の選択肢を増やし、幸せになるために、今読んで、始めてください。
>>>購入はこちらから
取材・文/横川良明 撮影/竹井俊晴 編集/玉城智子(編集部)
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