『カメリオ』のオープン・グロースハック
白ヤギコーポレーション
ビッグデータ解析やプログラミング、物理学から経営学など、あらゆる道を極めた者たちが集うハードコアなエキスパート集団。粗食に耐え、険しい山道も着実に上っていく白ヤギのように、苦難に負けず常に成長していく会社を目指す。2014年2月にローンチしたフォローメディア『カメリオ』をどうやって育てていくか模索中
『カメリオ』のオープン・グロースハック
白ヤギコーポレーション
ビッグデータ解析やプログラミング、物理学から経営学など、あらゆる道を極めた者たちが集うハードコアなエキスパート集団。粗食に耐え、険しい山道も着実に上っていく白ヤギのように、苦難に負けず常に成長していく会社を目指す。2014年2月にローンチしたフォローメディア『カメリオ』をどうやって育てていくか模索中
はじめまして、白ヤギコーポレーションです。われわれの開発しているフォローメディア『カメリオ』は、フォローしたテーマに関する重要なニュース記事やブログを高精度で自動収集してくれる、まったく新しい形の情報収集ツールです。
今年4月から始めた本連載は、非常に競争の激しい「ニュース・情報収集系アプリ」のジャンルで、我々の手掛けるフォローメディア『カメリオ』をどうすればスケールさせることができるのかを、日々試しているグロースハック施策を公開しながら読者と一緒に考えていく企画です。
毎回、『カメリオ』に関するデータを赤裸々に公開しつつ、脳味噌フル回転で考えた施策とその結果を紹介していきます。普通の企業なら絶対に公開しないであろうデータも思い切って公開し、グロースハックのノウハウ共有に一役買おうと思います。
『エンジニアtype』さんのご都合で、連載第1回から今回の掲載まで約2カ月近く開いてしまいましたが、その分、ご紹介できる成功例・失敗例がたくさん出てきました。引き続きお付き合いください!
連載の初回では、以下のロジックから、「新規ユーザーが利用開始3日以内に記事をSNSシェアすること」がKGIの向上に相関の強いKPIだと分析していました。
■カメリオ利用開始後3日で70%のユーザーが離脱し、それ以降にはほとんどユーザーの離脱がないことから、【利用開始後の3日間で離脱させないこと】が最も大切
■ユーザーの『カメリオ』利用開始後3日間の行動を見ると、利用開始後1週間経っても使い続ける人は、そうでない人に比べて1人当たりのシェア数が10倍以上多い
■そういうわけで、新規ユーザーには3日以内に1つでも多くの記事をシェアしてもらうことが大切
しかし、「シェアをKPIにする!」という初回の連載で宣言したところ、Twitterで疑問の声がちらほら挙がってきました。これぞオープン・グロースハック。疑問の声を挙げてくださった皆さまには大感謝です。
で、社内メンバーとも話し合った結果、2つの点で意見が分かれました。
■シェアしたから使い続けたのではなくて、もともとシェアする人が使い続けるのではないか(結果指標と目標指標の混同はないか?)
■そもそもシェアしている人はどのくらいいるのか(母集団を十分影響させることができるか?)
そこで、改めて利用開始3日のユーザーの行動と、利用開始後1週間以上経過したユーザーの行動を見てみたのが、以下の図1~3です。
図のY軸はカメリオを利用して1週間以上経過したユーザーのうち、4月9日にカメリオを利用した人の割合(仮にここでは1週間後以降継続率と呼ぶ)で、X軸はそれぞれのユーザーがカメリオ利用開始後3日間で行った行動を示しています。
分析結果から、これらのことが分かりました。
【図1】では、横軸にユーザーが利用開始後3日間でシェアした数、縦軸に1週間後以降継続率の関係を表した。これを見ると、ユーザーが利用開始後3日間でシェアした記事の数と、1週間後以降継続率には非常に強い相関があることが分かる。1つでも記事をシェアすれば20%が生き残り、7個以上シェアしている人はほぼ全員生き残っている。
【図2】では、横軸にユーザーが利用開始後3日間でフォローしたテーマの数、縦軸に1週間後以降継続率の関係を表した。テーマを5つフォローするまでは継続率との相関があるが、それ以上増やしたとしても20%のDAF(Daily Active Fraction)以上に継続率を上げることができない。
【図3】では、横軸にユーザーが利用開始後3日間で読んだ記事の数、縦軸に1週間後以降継続率の関係を表した。これを見ると記事の閲覧数は多ければ多いほど生き残り率はどんどん上がることがわかる。15記事までは非常に強力に相関しており、そこまでのエンゲージメントを見せたユーザーの35%が1週間後も継続して利用している事が分かる。
これらの事実から、我々が考察したのはこの2つです。
【1】記事の閲覧数とシェアは、両方とも利用1週間後以降の継続率に対して強い相関を示したが、シェアを1つでも行ったユーザーは全体の1%と非常に低く、シェア数を伸ばしたとしても全体への影響は限定的と思われる。
つまり、シェアしている人はかなり特殊と捉えるべきで、この1%の人数を倍にしたとしても、ユーザー全体に与える影響が小さ過ぎる。
【2】一方で、シェアと違い、記事閲覧はカメリオを使い始めた人の基本的な行動であり、そこへ至までの導線も短いため、いろいろな施策を打つことができる。サービス開始3日で15記事以上読んでいるユーザーも、すでに現在全体の5%いる。
【1】【2】をもとに、僕らは当初設定したKPIを見直して、「記事閲覧数」にすることにしました。
では、具体的にどの程度の「記事閲覧数」の達成をKPIにするか考えていた折、ある“事件”が起きました。
カメリオへの会員流入につながる導線を作ることを目的に、『シロくも』というミニWebアプリをサービスリリース直後に立ち上げていたのですが、これが突如大ヒットしたのです。
プロモーション用に開発したこのアプリは、TwitterアカウントやFacebookアカウントを元に、その人が普段つぶやいている言葉を分析し、おしゃれなワードクラウドを作成するというもの。
例えば、上の画像はこの4月下旬にエンジニアtypeのTwitterアカウントを『シロくも』でワードクラウドにしたものです。この時期、エンジニアtypeが「プログラマー」や「ドローン」のテーマでつぶやいていたことがうかがえます。
当初、『シロくも』はTwitterからアクセス制限がかかり、大きなバズには至らなかったのですが、(1)Twitter社の協力を得てそれを直したことと、(2)ワードクラウドをシェアした時にハッシュタグを入れるようにしたところ、3月末に大ヒット。わずか3日で120万人が利用してくれたのです。
ワードクラウドの下部にはカメリオへの導線が用意されていて、利用した人の約40%がカメリオのランディングページに来てくれました。
かつ、『シロくも』のランディングページに来た人の50%がApp Storeに行き、そのうち半分がカメリオをダウンロードしてくれたので、カメリオのダウンロード数は3日間で一気に1万5000を超える結果となりました。
さらに、App Storeのニュース部門で最高3位(3月末時点)となり、二次集客にも大きな効果がありました。
『シロくも』のヒット以前は1万人弱だったカメリオのユーザー数は、その後1カ月間で4万人を超える結果となったのです。
ちなみに、この一件で、カメリオのユーザー層も急激に一般化しました。
以前のユーザーは「スタートアップ」、「ビッグデータ」などのキーワードを追う情報感度の高いアーリーアダプターでした。
しかし、『白くも』のヒット後にユーザーとなった人の間で人気だったテーマは「東京ディズニーランド」、「嵐」、「アニメ」などでした。
とはいえ、この予想外の展開にはオチがありました。
『シロくも』ヒット前のカメリオは、利用開始1週間後のDAFが30%前後あったのに対し、シロくも後は約5%まで低下したのです(下のグラフで赤丸を付けた部分が、『シロくも』がブレイクした日)。
原因は、大きく2つ考えられます。
【1】『シロくも』とカメリオのユーザーの親和性の低さ
『シロくも』をやっていたユーザーは、ワードクラウドで「面白い画像」を作りたかっただけの人が多かったのでしょう。カメリオで自分の興味に合う情報を探す人とは、種類が異なりました。
【2】カメリオが、一般ユーザーを定着させるほど作り込まれていなかった
アーリーアダプターはサービスの価値をちゃんと理解してくれるので比較的定着率は高かったのですが、一般ユーザーはそこまで我慢強くなく、カメリオの特徴が伝わらずすぐに離脱してしまいました。
今回の一件で分かったことは、ユーザーにカメリオの特徴を訴求する際、カメリオの価値を一瞬で伝えるための「つかみ」がなかったということです。
これでは、記事閲覧数をKPIとした際、当然ながら達成率は低くなります。
カメリオのようにほとんど類似サービスがないアプリの場合、ユーザーを増やす前にまずDAFを確固たるものにしなくてはならないということが身に染みて分かりました。いくらユーザーを増やしても、DAFが低いと「ザル」のようにユーザーが離脱し、残らないのだと。
実際に、この時期にダウンロードして使い始めたユーザーのうち、「当日に記事を1つも読まないユーザー」は50%もいました。
この結果からも、少なくとも記事を読んでもらって、カメリオの価値を理解してもらう必要があると再確認したわけです。
では、記事閲覧数の向上という新たなKPI向上のために、何をやればいいのか。
僕らは2つの「改善策」を練り、施策を打つことにしました。
・改善その1:ダウンロードしてもログインすらしないユーザーをまず減らすこと
これまでのカメリオは、FacebookかTwitterがないと、ログインできない=利用開始できない仕様になっていたため、SNSのアカウント情報を提供することに抵抗のある人たちは、アプリをダウンロードしても利用開始してくれませんでした。
実際に、アプリをダウンロードした人の15%は、ログインしないまま離脱していたのです。
また、SNSのアカウント情報を入力することに対抗のある人は、App Storeの評価にネガティブなコメントを残したりもしていました(右画像参照)。
そこで、FacebookやTwitterのIDを使わなくてもログインできるよう、仕様を変更してみました。
その結果、ダウンロードしてからログインまでしてくれるユーザーの割合は、施策を打つ前の【84.5%】から、【95.3%】まで改善しました(機能導入は3月28日)。
・改善その2:一度開いたユーザーに、すぐにコンテンツを見せること
当初のカメリオは、アプリ起動時に情報の載っていない「空の画面」が表示され、テーマを検索するまで何も表示されない状態でした。
これがサービスの「使いにくさ」につながっていたと考え、「来たユーザーが記事を読み出すまでの時間をできるだけ減らす必要がある」と判断しました。
具体的には、以下のような施策を打ちました。
■「今日のホットテーマ」という欄を設け、利用開始直後でもすぐに記事が読めるようにした。時事のテーマ(韓国の沈没船など現在新聞をにぎわせているテーマ)、文化テーマ(テクノロージ、政治等)、趣味テーマ(漫画、映画、音楽、芸能等)を人力で各1つずつ毎日セレクトしてトップページであるテーマ一覧に出してしまうというもの。
■これによって、新規ユーザーの内、利用開始当日に少なくとも記事を1つ以上読む人の割合は増えた(下図)。
■さらに、新規登録日当日に1つでも記事を読んだユーザーのうち、ホットテーマの記事を読んだユーザーは、ホットテーマの記事を読まなかったユーザーに比べて平均記事閲覧数が1.7倍ほど多くなった(下図)。
その結果、1週間後ユーザーのDAFは上昇を見せ始めました。
こうして、何とか新しく設定したKPIを達成するための糸口が見え始めたのです。
ただ、まだまだ中途半端な状態なので、今後もユーザーのエンゲージメントを上昇させるために、次回の連載では「Dropboxのグロースハッカーに相談にいった」話から始めようと思います。
そこで得られたインサイトや具体的手法を、データとともに紹介できればと考えています。
白ヤギコーポレーションでは革新的な情報サービスを提供することで「深く知ることで、生きることを豊かに」の実現を目指しています。
カメリオの面白さに可能性を感じ、開発に携わりたいと思ったエンジニア、デザイナーの方は是非お気軽に白ヤギコーポレーションにご連絡下さい!
【連載:『カメリオ』のオープン・グロースハック】
第1回:アプリ成長のカギ「KPI」を正しく設定するには
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