フリーランス マーケター
梅木雄平
Webサービスの新規事業コンサルティングやマーケティング 、ライティングを手掛ける。VC業界での経験を活かした事業分析や、投資家関連の記事を展開するブログメディア『TheStartup』を主宰。ネット業界の裏話を綴る有料オンラインサロン『Umeki Salon』は会員110名を突破
11月に告知した《実験企画》話題のクラウドソーシングは1カ月でどれくらい稼げるのか?~『CrowdWorks』を使って案件獲得に挑戦!。
今回はチャレンジャーだった株式会社マインディアに、結果を発表してもらおう。
株式会社マインディアは社員6名。主にコーディングを中心とした開発案件の受託を手掛けながら、自社サービス『マインディア』も運営している。
今回の1カ月企画では、代表である西小倉宏信氏がクラウドソーシングプラットフォームのクラウドワークスで案件を獲得し、案件の実行は社内のメンバーの空いたリソースを活用して実験企画に取り組んだ。1カ月でクラウドワークスの案件に費やした時間は、社内メンバー2名と西小倉氏でおよそ0.7人月。細かい案件も含めると、10案件で69万45円の売り上げとなった。
実は、西小倉氏はクラウドワークスがリリースした2012年3月当初に会員登録していたものの、今回の企画まで実際に案件を受注したことがなかった。過去に1件だけ応募したが、プログラミングの要件定義フェーズで案件が流れてしまったという。それ以降、様子見のスタンスを取っていた。
つまり、この「1カ月企画」が始まる前からクラウドワークスでの受発注に慣れていたわけではなかった。当然ながらスカウトメールで仕事の依頼が来ることはなく、最初は地道に応募を積み重ねた。
ところが、固定報酬制の案件をメインに応募していたものの、返事はほとんど来ず。「開始10日間で約3万円の固定報酬案件しか獲得できず、かなり焦った」(西小倉氏)という。
そこから月間約70万円まで受注額を増やせた理由は、途中から時給制を中心に切り替えて受注案件を増やしていったからだ。
最終的には1カ月で約50案件に応募し、獲得案件は10件(獲得率約20%)。請け負った10件のうち、固定報酬制と時給制は5件ずつとなった。
こうした紆余曲折を経て、西小倉氏は下記の図のような実感値を得たという。
クラウドソーシングでは「固定報酬制で予算が高い案件」が最も旨みがあるが、そう多く獲得できるわけではない。「割と時給が高く、案件の予算も比較的高そうな案件を狙うのが現実的な路線ではないか」(西小倉氏)と言う。
会社としては、長年、受託案件を中心に手掛けてきたマインディア。西小倉氏は大学卒業直後にマインディアを起業し、知り合いヅテに受託案件を増やしながら会社を経営してきた。そんな西小倉氏から見た、「通常の受託業務とクラウドワークスとの違い」は非常に興味深い。
1つ目の違いは、実際の仕事に取りかかるまでの時間がクラウドワークスの方が短く、効率的であるという点。コミュニケーションコストが低いという言い方もできるだろう。
「通常の受託案件は、基本的に対面で仕事が進んでいくので、要件定義などの打ち合わせに時間がかかることが多いんですね。人からご紹介いただくケースも多く、仮に最初に仕事にならなかったとしても、また半年後に声をかけられるケースもあるので、人付き合いを大切にしていかなければなりませんから」(西小倉氏)
一方のクラウドワークスは、原則として非対面で受発注までの流れが進んでいく。そのため、仕事を実際に依頼されるまでのスピード感が従来の受託開発よりずっと速い。すぐに仕事に取りかかることができ、効率的だというわけだ。
加えて、西小倉氏が2つ目の違いとして挙げたのは、「クラウドワークスの発注者は総じてITリテラシーが高い」という点。発注者が開発業務への理解度が高いと、その後のやりとりもRedmineでプロジェクト管理を行えるなど、スムーズに業務を遂行できるケースが多かったという。
最後に、今回の企画で多くの金額を得た時給制の仕事について、「そもそも時給制でコーディングの仕事を受注できること自体が画期的」と西小倉氏は指摘する。
通常の受託は成果物ベースで報酬が決まり、出向して人月換算していても、厳密には時給で報酬を測られるのはまれだ。一方、クラウドワークスでは1分単位でタイムカードが回っている。
今回、西小倉氏自らが手掛けた《Rails製Webアプリケーションのテストケース記述》の案件では、10分~15分程度の空き時間を見つけては、ノートPCでコーディングをしていたそうだ。
ちなみに時給制というと、サボりながら仕事をして報酬を上乗せしようと考える仕事の受け手がいてもおかしくないが、クラウドワークスでは1時間に6回ほど、受注作業者のPCのスクリーンショットをキャプチャして管理できる秀逸なシステムがある。「このシステムがあるから、時給制はむしろ集中できて効率的でしたね」(西小倉氏)。
前述のようにマインディアは受託開発の比率が高い会社だが、今後は自社サービスの運営にリソース比率の傾斜を掛けていく方針だという。
「自社サービスではすぐには売り上げが上がらず、内部留保を食い潰す時期が続くでしょう。ただ、今回のようにゼロからクラウドワークスに取り組み、売り上げを上げた経験は、いざ内部留保が尽きかけた時に役立つ貴重なノウハウとなったと感じます。『いざという時のクラウドワークス』という感じでしょうか」(西小倉氏)
一方、マインディアが今後、発注側に回る可能性もあり得る。その際に今回クラウドワークスで案件を多数受注した経験が、仕事を進める上で役立つはずと言う。
受託開発会社は、なかなか自社サービスの運営に舵を切れないことが多い。受託で稼いでいた売り上げがなくなり、通常残高が減っていくのを見ることは精神衛生上あまり良いことではない。
だが、クラウドワークスの存在が保険的な役割を果たし、「自社サービスにリソースを振り切って仮に失敗した時でもクラウドワークスでまた稼げば良い」と思えるようになれば、受託開発から自社サービスへリソースを振り切っていける企業も増えていくであろう。
マインディアの今回の実験は、その方向性の一筋の光を示したといえよう。
<株式会社マインディアのサマリー&仕事依頼はコチラから>
http://crowdworks.jp/public/employees/7
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撮影/竹井俊晴
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