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さくらインターネット田中邦裕氏に聞く「経営者がプログラマー視点を持つことの重要性」【TechLIONレポ】

ITニュース

    先日「この1年間で投資収益率が最も大きかったインターネット関連企業TOP15」のランキングが発表された。

    これを見ると、上位に名を連ねているのはやはり欧米の企業が多く、日本の企業でランクインしたのは楽天の1社のみ。依然としてWebサービスでの欧米の優位性は変わらなそうである。これに対し、世界を目指す日本のエンジニアたちはどう考え、行動していくべきなのか?

    そんな中、さる7月23日に六本木のライブハウスSuperDeluxeにて「世界に羽ばたく国産エンジニア」というテーマでトークライブ『TechLION vol.13』が開催された。

    TechLION vol.13 会場の様子

    『TechLION 』では登壇者もお酒片手にトークをする(左から馮富久氏、法林浩之氏、さくらインターネット田中邦裕氏)

    第1部には、上場企業の経営者としての顔とは別に、現役プログラマーとしての顔を持つ、さくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏が登場。

    「自社サービスを世界で使われるサービスにしたい」というさくらインターネットの今後の展望はもちろん、いまだ現場に立ちプログラミングを続けている根っからのプログラマー体質であることや成長期に触れてきたツールの思い出など、懐かしい話題で会場と一体化して盛り上がった。

    続く第2部に登場したのは、サイバーエージェントで主にスマホ関連開発を手掛けてきた紫竹佑騎氏と、ミクシィのイノベーションセンターにて『ノハナ』の企画を立案、開発した田中和紀氏。今後日本を代表するプログラマーになるであろう2人の仕事観や、学生時代に同級生だった彼らと田中氏を交えたマンガ談義や「プログラマー変態説」など、多岐にわたる話題で会場の笑いを誘っていた。

    田中流・経営層が現場に混ざる際の注意点

    特に興味深かったのは、さくらインターネットの田中氏のプログラマー経営者論だ。

    上場企業の経営者ながらも『進撃の巨人ジェネレーター』を作成するなどプログラミングが好きで好きでたまらないという田中氏。

    しかし、田中氏のようにマネジメント・経営フェーズになってまで、プログラミングを続けられる人はなかなかいない。そんな現状に対し、同氏はこう言及する。

    「よく言われる『35歳定年説』ですけど、実際、純粋なプログラマーとして現場にいられるのが35歳くらいまでということですよね。35歳くらいになってくると、どうしても部下のマネジメントや管理職としての責任も付きまとってくるため、プログラミングだけやっていればいい、という状況が少なくなるのだと思います。まぁでも、実際35歳で定年かどうかは、自分で決めればいいんです」

    ここで選べるキャリアの選択肢は「1.マネジメント・経営フェーズへの移行」、「2.現場にいながら良き先輩としてお手本になる」、「3.研究者として特化する」の3つに大分されるのだという。

    プログラマーとしてこの先も(2)か(3)で生き残れるのならばいいが、多くのエンジニアは、現場で手を動かしたくても会社からマネジメント・経営フェーズへの転換を強いられる。プログラマーと経営者の顔を併せ持つ田中氏は、そのバランスをどのように保っているのだろうか。

    TechLION vol.13 さくらインターネット田中邦裕氏

    「日本一現場にいる社長」と自らを評し、笑いをとる田中氏

    「今でもよくプログラマーとして手は動かしていますが、その上で3つ注意していることがあります。まずは現場の楽しみを奪わないこと。プログラミングという楽しみを奪うことで現場のモチベーションを下げないようにはしています。次に経営者の仕事を忘れないこと。プログラミングをしていてもあくまで本質は経営者ですからね(笑)。最後に、『老害』にならないこと。現場にいるだけで周りに気を遣わせるような存在であってはいけない。現場でプログラミングをする時はこのあたりに気を遣っていますね」

    エンジニアが「権限」を併せ持つメリットはスピード感に出てくる

    過去を振り返り、「今思えばプログラマー出身だからこそ経営に携わる意味もあると思う」と田中氏は語る。

    「経営者は自社サービスを客観的に見ることができます。一顧客と同じ視点でサービスを見ることで自社サービスの改善点が見えてきます。こんな時、技術がない人が権限を持っていてもすぐに修正しよう、という決断を下せませんし、決断を下せたとしてもそこからの動き出しのスピードが遅い。権限と技術はつながっているんです」

    また、田中氏はプログラマーが企業の経営に携わることで、一プログラマーとしてでは気付かない、経営者もしくは顧客の視点からのイノベーションが可能になると話す。

    「新しい技術を発明したり、アイデアを思い付くだけではダメです。それを実現するために決裁権を持つ必要があるのです」

    最後に田中氏はさくらインターネットとしての「野望」についても語ってくれた。

    「どうせサービスを作るのなら世界中の人に自分の作ったサービスを使ってほしいですよね。海外の人達が知らない間に自分のサービスを使ってくれていたり、いろいろなところで『実はこの会社、海外でも知られているんです』って言われたい。AWSのように、世界で伸びているすべてのWebサービスで使われるインフラになりたい。『日本はITでは勝てない』なんて言っている人の鼻を明かしてやりたいですね」との田中氏の力強い言葉に、会場からは感嘆の声が漏れた。

    プログラマー経営者として経験を重ねてきた田中氏は、「経営者になるもよし、スーパーエンジニアとして現場に残るもよし。どんな道に進もうとも、成長だけは忘れないでほしい」と、参加者たちにエールを送り、締めくくった。今回も業界の最前線で活躍するトップエンジニアたちの軽快なトークに、会場は酔いしれた。

    >> 2013年9/15開催の『TechLION vol.14』出演者・開催概要はコチラ

    取材・文・撮影/佐藤健太(編集部)

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