TechトレンドVol.12

[連載:伊藤直也③] ユーザーの動きが読めないソーシャルの世界では、インフラ屋の仕事が「守」から「攻」へ

グリー株式会社 メディア開発本部 ソーシャルメディア統括部長 プロデューサー 伊藤直也氏2002年に新卒入社したニフティでブログサービス『ココログ』の開発担当となり、一躍有名になった若きトップエンジニア。その後、はてなで『はてなブックマーク』など各種サービスを立ち上げ、2010年にグリー入社。自身のブログ『naoyaのはてなダイアリー』なども人気だ

いわゆるこれまでの「インフラ屋」というのは、サーバーオペレーション、ミドルウエアオペレーションをある程度決まったものを使って、それをいかに効率良く回していくかみたいなところがミッションでした。

でも僕は、最近こういう「インフラ屋」のミッションが変わってきているように感じています。

クラウドの登場や、インフラシステムの機能がサービス仕様に与える影響が大きくなってきたこともあって、いかにそういうものを洗練させ、取り入れていくことで自分たちのサービスに最適なインフラをデザインするか。そういう視点を持って働かざるを得なくなったのだと思います。

そこで今回は、グリーのインフラチームで、サーバやネットワーク機器などのファシリティー管理・運用・設計を担当している恵比澤さんを紹介します。

グリーのようなソーシャルサービスを展開していく上で、インフラエンジニアが取るべきアクションがどんなものか、直接話を聞いてみましょう。

新機能搭載やキャンペーンでアクセスは通常時の10倍超にも

プラットフォーム開発本部 エンジニア 恵比澤賢氏約8年間、大手通信ネットワークサービス会社でルータのファームウエア開発に携わった後、2009年グリー入社。サーバの管理・運用業務に携わる

こんにちは、グリー・プラットフォーム開発本部の恵比澤賢です。

わたしが所属するプラットフォーム開発本部は、グリーが提供するSNSやソーシャルゲームのインフラを担う部門。つまり、サーバやネットワーク機器の設定や管理・運用と開発を担当する部隊です。その中で、わたしが担当しているのはサーバの管理・運用になります。

一般的にインフラ部隊というと、伊藤も言っていたように「保守・運用がメインの守りの仕事」をイメージされると思うのですが、グリーの場合、必ずしもこのイメージには当てはまりません。

確かに、僕らの第一の使命はサービスを止めないこと。少なからず「守り」の要素があるのは確かです。ただ、日々膨大な数のユーザーをお迎えし、問題なくサービスを使っていただくには、守りの姿勢だけでは対処できないという現実もあります。

フロントエンドで新しい機能やキャンペーンが動き出せば、一気に通常時の10倍を超えるユーザーが押し寄せるなんてことはそう珍しくありません。ですからインフラ側にも、「攻め」の発想でバックエンドを構築していくことが必要になるんです。

例えば、何か新しいイベントをやることが決まったら、インフラ側の対応として負荷に耐え得るデータベース(以下、DB)を設計しておかなければなりません。それに、ソーシャルゲームの世界はユーザーの動きが読めない部分が多々あるので、トラフィックを随時モニタリングできる仕組み作りや、すぐサーバをスケールできるように準備しておくことも必要です。

グリーでは、DBやサーバをサービスごとに持っているのではなく、すべてを一括管理する体制を採っているので、一日に何度もリリースが繰り返される中で日々対応策を考え、実施していくことが求められます。毎日のように、バックエンドの調整が発生するような状況です。

一方、自前で開発したサーバ管理システムやトラブル時のアラート通報システムも、業務効率化のためにアップデートしなければなりません。新しいツールや開発フローに置き換えることで、仕事がしやすくなるのであれば、積極的に取り入れる。一般的なシステム運用・管理部門とは、一味もふた味も違う組織だと思います。

少しでも良くなるなら、既存の仕組みを変える

グリーに転職する前は、大手通信ネットワーク会社でルータのファームウエアを開発していました。

ルータ製品は比較的息が長いこともあり、当時、わたしに任せられていた仕事は、年に数回のバージョンアップ開発がメイン。お客さまとのやりとり等は専門の部門が担当していましたので、わたしたちは開発に専念するという仕事環境でした。

でも、グリーの場合はエンドユーザーにWeb上で直接サービスを提供しているため、いわゆるバックエンドに分類されるインフラエンジニアも、フロントエンドのサービスに対する当事者意識が求められます。

転職してきた当初は、改善のスピードやサイクルが非常に早いことに驚きましたし、あまりの早さに戸惑うこともありました。でも、ユーザーの反応がダイレクトに数値化されて示されれば、改善に対する意欲も自然と湧いてきますし、仕組みを変えることに対する納得感もあります。

普通の会社のインフラ部隊なら、確実運用に気持ちが行き過ぎて「余計なことはするな」と止められるものかもしれないですけど、グリーならやらせてもらえる。新しいことでも、「少しでも良くなる可能性があるならどんどん開発しよう」というカルチャーがあるというか。自分のアイデアを形にしやすい環境があるのは、素直に良い面だと思っています。

「なぜそうなるのか?」まで深掘りして理解するのがより大事に

だからこそ、ほかの開発職と同様、インフラエンジニアにも技術的な深い知識が問われます。

わたし自身は、技術書やWebから新しい情報を得ることが多いので、何か変わった勉強法に取り組んでいるわけではありません。ただ、一つだけ心掛けている点があるとするなら、どんな技術でも単に「知っている」レベルで満足しないということです。

「memcachedのようなKey value Strageは高負荷にも耐えられる」

とか、そういったセリフをよく耳にしますけど、それらがどういう仕組みで動いていて、なぜ高負荷に耐えられるのかという原理を理解している人って案外少ないと思うんです。クラウドなんかもそうでしょうね。

新しい技術が出てきたとき、それを勉強し、使ってみることも大事ですが、「なぜそうなるか?」まで理解することの方がはるかに大事ではないでしょうか。原理まで理解していれば自分流にアレンジすることもできますが、うわべしか知らないと”応用問題”には対処できないですからね。

ソーシャルのようなユーザーの動きが読めない分野では、技術に対する深い理解のあるエンジニアが今後ますます求められると考えています。

ですから、「どうしてその技術が優れているのか」とか、「本当にその技術を使うことが最適なのか」等を考えながら、常に技術に対する理解を深めていけるようにしています。

ある程度、長い積み重ねが必要になるのでしょうが、エンジニアとして高い技術力を獲得するには唯一の「王道」だと思っています。

グリーは今、マルチデバイス対応や世界進出など、今までにない大きなイベントがいくつも待ち構えている状況にあります。そんなグリーに興味を持っているエンジニアの皆さんの中に、「アプリ開発が花形」で「インフラは裏方」みたいな見方をする人がいるとするなら、わたしは「そんなことはない!」と声を大にして伝えたい(笑)。

グリーの中でも、技術指向、開発指向が高い人が集まっているのがインフラ部隊。新しいサービスを作るのも、支えるのも、自分たちの使命なんです。

撮影/小林 正、伊藤健吾(編集部)

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