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世界が注目する“日本の自動運転技術”はどこまで進んだのか? AI活用の最新事例を日産に聞いた

ITニュース

    AI技術の進化によって、私たちの生活が大きく変わりつつある。特に、モビリティー分野の技術革新は顕著だ。

    日産自動車のフェロー:電子・メカトロニクス車両開発担当の豊増俊一さんは、「今、羨ましいほどに自動車業界で働く若手エンジニアには活躍の場が多い」と語る。

    ここ数年、その進歩に注目が集まる自動運転技術。日本の最先端技術は今、どこまできたのだろうか。また、そんな自動車業界で、エンジニアとして働く醍醐味はどこにあるのか、豊増さんに話を聞いた。

    プロフィール画像

    日産自動車株式会社
    豊増俊一さん

    1981年、日産自動車入社。現在は、フェロー:電子・メカトロニクス車両開発 担当

    AIの画像認識力の向上とともに、運転支援技術は日々進化している

    ここ数年の間に、「深層学習(ディープラーニング)」技術が目覚ましい進化を遂げている。それにともない、AIを用いた運転支援技術を搭載した自動車も増加。豊増さんは、AIの進化が自動車業界にもたらす影響を次のように語る。

    「データサイエンス・AI技術の中でも、画像の認識技術がここ数年で飛躍的に向上しました。カメラが捉えた物体を、『これは車である』と認識するだけでなく、『乗用車やトラック、二輪車である』といったところまで識別できます。更に、さまざまな道路標識データや車線データを学習させることで、AIの交通環境と道路環境認識性能が飛躍的に高まりました。

    こうしてAIの深層学習を重ねていくと、カメラに映った景色から『この位置にトラックがいる』『制限速度は時速100kmである』『走行可能なスペースはこの範囲だ』といった運転支援に必要な情報をタイムリーに認識できるようになります」

    日産自動車

    車に搭載されたAIがカメラ映像から、交通環境や道路環境を学習・認識する

    日産自動車ではこのようなAI技術を応用し、世界初の運転支援システム『プロパイロット2.0』を開発。新型車『スカイライン』に搭載した。

    これまでの運転支援技術では、単一車線上の交通環境や道路環境に重きを置いた判断システムだったが 、新システムでは判断範囲が広がったのが特徴だ。

    日産自動車

    世界初の運転支援システム『プロパイロット2.0』を搭載した新型車『スカイライン』

    「『プロパイロット2.0』では、ナビゲーションシステムで目的地を設定して高速道路に進入すると 、AIを搭載した運転支援機能がスタートします。そうすると追い越しや分岐なども含めて、システムがルート上にある高速道路の出口までの走行をサポートしてくれます」

    日産自動車

    AIが追い越しや分岐などのタイミングを認識し、高速道路の出口までの走行をサポートしてくれる

    現段階ではドライバーが常に前方に注意し、状況に応じてハンドルを操作できる状態に限り、同一車線内であればハンズオフ走行が可能になる。

    また、3D高精度地図とセンサーなどにより、ルート走行中の分岐や追い越しをする際の、車線変更の適切なタイミングをドライバーに提案することができる。ドライバーは、スイッチ操作でこれを承認することで、車線変更中の走行をサポートしてもらう仕組みだ。

    日産自動車

    運転中に追い越しするか?をクルマが提案してくれる

    AIの次は、5Gが自動車業界に革命をもたらす

    豊増さんは、「AI技術の進歩に加えて、今後の5Gの通信環境が自動車業界にさらに大きなインパクトを与える」と話す。

    「5G通信環境が整えば、自動車がリアルタイムで扱える情報量とスピードが格段に向上します。例えば、自分のルート沿いの渋滞・工事・天候などのダイナミックな交通環境情報を逐次取り込むことで、 運転支援技術の精度は飛躍的に上がるはずです」

    自動車が走行しながら瞬時に大量のデータを受発信できるようになれば、自動運転に限らず、製造の過程やアフターサービスの分野でも生産性が飛躍的に向上するという。

    「このように自動車が進化していくことは、すなわち人間の生活を豊かにするということだとわれわれは考えています。例えば現在、高齢者ドライバーの問題がたびたび取り上げられていますよね。こういった問題も、自動運転技術が発展すれば徐々に解消されるかもしれない。高齢になっても安全で安心して運転できる 社会を実現できる可能性があります」

    エンジニアにとって“かつてないほど”刺激的な自動車業界

    豊増さん自身は日産に入社して40年近くになるというが、「自動車業界は、今、データサイエンスやAI技術を新たに取り込むこことで、いまだかつてないほど革新的な車作りへの熱が帯びてきている」という。

    「自動車の骨格をなすハードウエアの技術開発は今後も重要ですが、データサイエンスやAIによる技術革新が進んだことで、アルゴリズムやソフトウエア開発の重要性が一層増してきました。それによって、今まで“アイデアはあっても実現できなかったこと”にも挑戦できるようになっています。

    例えば弊社の例でいうと、2010年に発表した『日産リーフ』という電気自動車の販売を思い出します。その昔、リチウムイオンバッテリーと言えば携帯やパソコンに入っているものでした。容量はとても少なく、高価なものでしたし、それを車に搭載するなんて考えられなかった。でも、技術が進化しリチウムイオンバッテリーが量産化できるようになった結果、念願の電気自動車に搭載できるようになり、リーフを開発することができました。

    同じようなことが今AIにも起こっていて、AIが一般化した結果、一般自動車にも搭載できるようになったわけです。AIが車のシステムに応用できるようになりましたから、運転支援技術搭載の車の進化もこれから一層進んでいくでしょう」

    今まで「こうなったらいいな」とアイデアがあっても何かしらの理由でできなかったことが、AI技術の進化によってできるようになったということだ。

    「そう思うと大変ワクワクできますし、エンジニア魂が揺さぶられますよね。自動車業界はこれからジョインされる方にとっても、大変刺激的な業界だと思います」と豊増さんは目を輝かせて語ってくれた。

    取材・文/鈴木はる奈

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