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「ゲームといえば中国」の時代へ!? 中国のゲーム市場の盛り上がりとAI活用

働き方

    本連載では、海外AIトレンドマーケターとして活動している“AI姉さん”ことチェルシーさんが、AI先進国・中国をはじめとする諸外国のAIビジネスや、技術者情報、エンジニアの仕事に役立つAI活用のヒントをお届けします!

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    海外AIトレンドマーケター | AI姉さん
    國本知里・チェルシー (@chelsea_ainee)

    大手外資ソフトウェアSAPに新卒入社後、買収したクラウド事業の新規営業。外資マーケティングプラットフォームでアジア事業開発を経て、現在急成長AIスタートアップにて事業開発マネジャー。「AI姉さん」としてTwitterでの海外AI事情やトレンド発信、講演、執筆等を行っている

    皆さん、こんにちは。AI姉さんこと、チェルシーです。

    最近電車に乗っていると、スマホでゲームをしている人をよく見かけます。「休日は一日中ゲームをして過ごしている」という友人の話も聞きますし、皆さんの中にも、スマホゲームやPlay Station、Nintendo Switchなどで遊んでいる人は多いのではないでしょうか。

    世界的に見ても日本のゲーム市場は活発で、「ゲームといえば日本」というイメージは強いですよね。国内のゲームAIを代表する『FINAL FANTASY』のゲームAI領域で指揮を取られている、スクウェア・エニックスの三宅陽一郎氏も以前エンジニアtypeのインタビューで、ゲームAIの未来について語っています。

    日本でも盛り上がりを見せるゲームですが、現在オンラインゲームにおいては中国が世界を圧倒しつつあります。本日はAI先進国でもある、中国ゲームのAI事情についてお伝えします。

    Tencentは中国ゲームの雄であり、世界ランキングを押し上げている

    言わずと知れた中国・深セン本社のTencent。中国を代表するテック企業BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)と言われ、『WeChat』というメッセージングアプリで有名な企業です。皆さん、Tencentの主な収益源は何かご存知ですか? 実はWeChatではなく、ゲームなのです。

    Tencentは世界的に見てもソニーや任天堂を超える、ゲーム業界で世界トップの売上企業。昨年Nintendo Switchが中国展開をする際に、販売パートナーとして選んだのがTencentでした。

    gameランキング
    (出典:New Zoo https://newzoo.com/insights/rankings/top-25-companies-game-revenues/

    日本のオンラインゲームアプリはヒットの影にハズレも多く、多くのアプリやゲーム企業が生まれては消えていきました。一方、14億人以上の人口を抱える中国では、TencentやNetEaseなどの巨大企業がゲーム企業の買収を繰り返しながらヒットゲームを立て続けにリリースし、ゲーム企業としての存在感をさらに強めています。

    gameランキング
    (出典:New Zoo https://newzoo.com/insights/rankings/top-10-countries-by-game-revenues/

    Tencentなどのゲーム事業から見る、中国ゲーム市場の強さ

    中国がゲーム市場における面白いトレンドを3点に分けて紹介します。

    1、ゲーム関連のマッチングサービス

    Tencent発の『王者栄耀』というゲームは中国史上最大のヒットと言われていますが、このようなヒットゲームの多くはソロプレイではなく、マルチプレイ用の作品です。そうした影響により、中国では対戦相手やゲームを教えてくれる人をマッチングするサービスが多数出てきています。

    2、IP(知的財産)ビジネスへ取り組み、エンタメ企業へ

    「好きなアニメのキャラクターや、作品にまつわるゲームを遊びたい」という人は多いですよね。昨今、IPを活用したゲームが話題になっており、日本のコンテンツも中国ゲームで採用され始めています。例えば『スラムダンク』も最近中国でゲーム化されました。

    また、他社のIPでゲームを作るのではなく、自社でIPを持つ方向性に変え、利益率を高める動きも活発化してきています。ネット文学サイトを買収し、クリエイターを募集し、自社のIPビジネスを作り始めているのです。また、AI技術を活用してIPを生み出す動きも進んでおり、そこも含めて自社の技術を活用しています。

    特にTencentはAI技術をフル活用し、ゲーム企業をはじめ、ネット文学・アニメキャラクターを含めた、エンタメ企業を作っています。
    参考:やがて、コンテンツは「テンセント」に呑み込まれる | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

    3、成長を急拡大しているゲーム配信

    日本でもユーザーの多い『荒野行動』は中国のNetEaseがリリースしていますが、特に“ゲーム配信”が非常に注目されています。先日、TikTokとコラボした「#荒野行動」が20億再生を超えました。

    ゲーム配信は投げ銭が大きな収益となるため、ゲーム本体だけでなく、配信にも力を入れているのが中国のトレンドです。
    参考:TikTok、#荒野行動が20億再生突破!荒野行動公式プラットフォームTikTok連携が話題|Bytedance株式会社のプレスリリース

    上記のように、ゲームだけでなく、ゲームを成長させるためのマッチングサービス、IPビジネス、ゲーム配信サービスを事業として広げているのが中国ゲーム市場の特徴ですね。日本でもミラティブのようなゲーム配信企業が注目を浴びており、このような新しい市場では、特に動画・画像・音声のAI生成技術なども同時に進んでいます。

    中国は“規制早期対応国”。ゲームも対象に

    中国は非常に大きなマーケットであり、スマホ大国でもあるので、オンラインゲームにのめり込み、日常生活に影響が出る「ゲーム障害」が社会問題化しています。その対策として、中国政府は2019年11月に18歳未満に対してゲーム規制の方針を出しました。以下のような規制が含まれています。

    ・未成年の場合、平日は最長で90分、休日・祝日は180分の制限
    ・夜10時~翌朝8時までのゲームのプレイは制限
    ・ゲーム内でアイテムを購入するのも制限(8歳以下は課金ゲームが不可)

    このように社会問題化されるほどゲームが流行している中国ですが、社会問題に対する規制対応が非常に早いというのも日本と比べた相違ポイントです。

    ディープラーニングの発展により、本物にそっくりな偽物の画像・音声・動画の生成が増え、昨年問題が大きく顕在化したDeepfake。これについても、2020年1月より「Deepfakeで作られたメディア(音声・動画等)はその旨を記載しなければ罰金」という規制が動き始めました。

    ディープラーニングの発展が進む中で、なかなか法規制が追い付かないのがテクノロジーの課題とも言われますが、中国においてはこのように規制整備が早く、「中国の規制の動きを見ることが日本の社会問題・規制の未来を見ることでもある」と気付くことができます。

    本日は中国ゲーム事情とAI技術についてご紹介をしました。

    Tencentをはじめオンラインゲーム市場は中国が最も進んでおり、中国で生まれるトレンド・技術活用は、今後日本で導入される未来でもあります。まずは中国でテクノロジーによってどのような社会変化が起きているのか、その背景も含めて調べていくことに、今後の開発のヒントもあるかと思います。興味ある方はぜひ、自分の業界の中国トレンドやテクノロジーについても調べてみてください。

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