本連載では、圓窓代表・澤円氏が、エンジニアとして“楽しい未来”を築いていくための秘訣をTech分野のニュースとともにお届けしていきます
コロナで急増するリモートワーク!エンジニアに必要な「スキル」と「マインドセット」とは?【連載:澤円】
株式会社圓窓 代表取締役
澤 円(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)※11月末発売予定
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皆さんこんにちは、澤です。
今や世界中の共通の話題は「コロナウイルス」ですね。
エンジニアtypeの読者の方も、少なからず影響を受けていることと思います。
私も3月の登壇予定は、全てキャンセルになりました。
本業である会社員の仕事の方も、出勤せずに全てリモートワークでこなす日々です。
もっとも、私にとってはリモートワークは今までもずっとやってきたことなので、コロナウイルスの騒ぎとはあまり関係ないとも言えます。
いつも通りの働き方を続けている中で、外部で起きている一つの出来事に過ぎず、講演がなくなったこと以外は自分のワークスタイルにはほとんど変化はありません。
私にとっては、働き方として完全に定着しているリモートワークですが、急に対応を迫られ、戸惑っている人が多いのも事実です。
リモートワークのインフラが整っていなかったり、どうしても物理的に出勤をしないと進まない業務プロセスが明らかになったりしている企業もたくさんあることでしょう。
そして、リモートワークに必要な「スキル」と「マインドセット」がそろっていない人にとっては、今の状況は非常にしんどいものになっているようです。
エンジニアたるもの、この状況にどのように対応していけばいいでしょうか。
リモートワークに必要なスキルは「成果を出す」と「可視化」
まず、「スキル」の部分。このスキルの中には、二つの要素があります。
「リモートワークでも成果を出すスキル」と「その成果を可視化するスキル」です。
リモートワークで成果を出すというのは、コードを書く、テストをする、レビューするなどの業務を、「集中して」「短時間で」行うことを意味します。
「集中して」の部分は、リモートワークであるがゆえに、隣の席の同僚に話しかけられたり、別の業務の割り込みが発生したりしにくい環境を徹底的に活用しましょう、ということです。
イヤホンをしたり、自分に適した場所を見つけてそこにこもったりして、職場ではなかなかできない「超集中モード」をつくり出してみましょう。
ちなみに、集中というのは必ずしも「その業務をやっている最中は他のことを一切しない」というわけではありません。
10分ほど作業用の画面と向き合って、3分はTwitterをチェックする。というスタイルが自分にとっての「集中スタイル」なら、それでOKです。
他の人からの割り込みがない分、自分流の集中スタイルに徹することができるのが、リモートワークの良いところです。
そして、オフィスだと発生しがちなもろもろの雑務をやらなくてもいいので、「短時間で」業務を終わらせることもできます。
この機会に、「長く机に向かっている=まじめに働いている」という呪いのような思考パターンを一掃しましょう。
もともと長時間働くことを美徳と思っていない方は、その思考に磨きを掛ければいいでしょう。
大事なのは「業務の結果」であって、費やされた「時間の長さ」ではありません。
そのために大事になるのが「成果を可視化する」というスキルです。
気楽に仕事をするために、成果を可視化する
自分の書いたコードや、テストの精度が高いことを「誰にでも分かるようにする」のが極めて重要です。
そのためには、「見せること・説明すること前提」で自分の作業を見直す必要があります。
これは、アジェンダを決めてから業務にあたるという考え方です。
アジェンダは、ミーティングで言えば「こんな内容で議論しましょう」「こんな情報を提供します」というお品書きです。
1日ごとでもいいですし、1週間単位でもいいので、まずは自分のタスクのアジェンダを決めて、その通りに進めていき、毎日振り返ってみましょう。
いわゆるガントチャートのように細かくする必要はないと思います。
プラットフォームは何でもいいので、共有可能な状態でデータにしておきましょう。
OneDriveやGoogle Drive、Dropboxなどに、WordやExcelのファイルにして放り込んでおくのでもいいですし、iPhone のメモ機能でも十分です。
とにかく、電子データ化して「いつでも転送可能」な状態にしておくことが大事です。
決めておくのは、
●モジュールAテスト項目作成
●モジュールA単体テスト実施
●モジュールAとデータベースBの結合テスト実施
といった粒度でもいいと思います。
そこにあらかじめ、
●テスト結果はYさんにチャットでインプット
●疑問点はGitHubに記載
などの具体的なアクションを入れていき、URLなどを張り付けておけば、細かい説明は不要になります。
あとで「モジュールAってどうなってる?」と聞かれれば、そのメモを転送しておしまい。
報告書作成の手間もなく、気楽に仕事ができるのではないでしょうか。
リモートワークは起業家の仮想体験
さて、在宅勤務をしているときの一番のネックは「気が緩んでしまってサボりたくなる」という、実に人間らしいものだったりします。
リモートワークは、究極の「自己管理能力」を試されるものです。
自分にいくらでも甘くなることもできますが、業務で成果を出せなければ一流とは言えません。
そこで次に大事になってくるのが「マインドセット」です。
マインドセットとは、辞書によれば「ものの見方。物事を判断したり行動したりする際に基準とする考え方」となっています。(小学館・デジタル大辞泉より)
私は、マインドセットという言葉にはもうちょっと複雑なニュアンスが含まれていると思っていて、なかなか日本語では言い表せていない気がしています。
リモートワークで成果を出すために必要なマインドセットとは、「自分をより深く知り、自分の能力を正しく理解し、自分の頭で考えて行動すること」に他ならないと思っています。
リモートワークは、全ての環境を自己責任でデザインするものであると私は考えています。
会社から貸し出されているパソコンなどは、もちろんある程度は会社責任で管理されるものですが、持ち出したからには、自分が責任を持って運用しなくてはなりません。
部屋の温度や食事のタイミングなども、全て自分でデザインする必要があります。
つまり、リモートワークをするということは、その瞬間から「個人事業主として働く」と考えてもいいでしょう。
読者の方の中には、フリーランスで働かれていて、すでにこのマインドセットが骨の髄までしみ込んでいる人もいると思います。
会社勤めの方は、リモートワークの際にフリーランスや起業したての社長のような気持ちで働いてみてください。
後ろ盾やサポートがない一方で、その代わりに大いなる自由を手に入れて働くマインドセットを持つのです。
AI時代に最も大事なマインドセットの一つが「起業家精神=アントレプレナーシップ」です。
起業家は「自分の人生を掛けて世の中を面白くしようとする人のこと」というのが私の定義です。
リモートワークは、その起業家の仮想体験をするにはうってつけの機会です。
いろいろなものを自分でデザインし、自分なりに成果を出すのだ、という気持ちで取り組んでみましょう。
「会社から言われて家でやる」のではなく「家で自分の顧客(=所属している組織)に貢献する」というマインドセットで業務に取り組めば、真剣さも増してくるものです。
ぜひ、起業家精神を持ってリモートワークに取り組んでみてください。
ちょっと違った目で世界を見ることができるようになるかもしれませんよ。
セブン&アイ出版さんから、私の三冊目となる本が発売されました。「あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント」というタイトルです。
本連載の重要なテーマの一つでもある「働き方」を徹底的に掘り下げてみました。
ぜひお手に取ってみて下さいね。
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