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「人類の新たなエネルギー源をつくる」超大型国際プロジェクトに参画するエンジニアが、フランスで見つけた新たなキャリア【ITER(イーター)】

【PR】 働き方

    いつか世界に出て働いてみたい——。そんな夢を温めているエンジニアも多いだろう。

    2019年7月、国内有数のプラント建設会社から、世界初の核融合実験炉の実現に挑む国際機関であるITER機構に転じた神田慧太さんも、かつてはそうした夢を抱くエンジニアの一人に過ぎなかった。

    現在、フランスで働く神田さんに国際機関で働く醍醐味を聞いた。

    補足

    ◎核融合発電とは?
    原子核同士の融合によって引き出される膨大なエネルギーを発電に利用する技術。海水など資源量が豊富な物質から製造可能な水素同位体を燃料に利用できるほか、発電時に二酸化炭素を発生させない、原理的に暴走を起こす危険性がない、既存の核分裂炉に比べて放射性廃棄物の排出量が少なく、技術の兵器への転用も困難など、利点が多いため、未来のクリーンエネルギーとして実用化が期待されている。

    ◎ITER(イーター)機構とは?
    核融合炉実現に向けた科学的、技術的実証を目的に設立された国際機関で、ITERプロジェクトに参加している世界7極(中国、欧州、インド、日本、韓国、ロシア、米国)と協力しつつ実験炉の建設・運転を行う。世界30カ国以上から900名以上の技術者、研究者を集め、「2025年のファースト・プラズマ(運転開始)達成」を目指し、現在、フランス南部のサン・ポール・レ・デュランスで、核融合実験炉の建設を進めている。

    ◎量子科学技術研究開発機構
    ITER計画における日本の国内機関として指定を受け、日本からの人的貢献の窓口として役割を果たしています。

    >>核融合実験炉ITER日本国内機関 公式Webサイト

    プロフィール画像

    ITER Construction Domain, Tokamak Cooling Water System Section
    Process Engineer
    神田慧太(かんだ けいた)さん

    大阪大学理学部化学科で計算シミュレーションを学び、大阪大学大学院 理学系研究科 化学専攻を修了。2012年、国内大手プラント建設会社に新卒入社。国内外の石油化学プラントの設計に携わる。19年7月、ITER機構にプロセスエンジニアとして採用され渡仏。現在、建設が進む核融合実験炉のうち、一次冷却水の水質を監視するサブシステムの設計に従事している

    原子力とは無縁の設計エンジニアがフランスに渡るまで

    ——現在のお仕事について教えてください。

    神田さん(以下、敬称略):今は核融合炉の技術開発に取り組む国際機関「ITER機構」のプロセスエンジニアとして、主にトカマク型装置という核融合炉の心臓部を取り巻く一次冷却水の水質をモニタリングするサブシステムの設計を担当しています。

    ——ITER機構に入職されるまで、どのようなお仕事を担当されていたのですか?

    神田:新卒で入社したプラント建設会社で、石油化学プラントやユーティリティと呼ばれる用役設備の設計に携わっていました。

    プラント建設会社に入社したのは、学生時代に学んだ化学、計算シミュレーションの経験を生かすことができ、かつ海外で働けるチャンスがあったから。

    実際、竣工直前には試運転の立ち会いやメンテナンスを担当する現地スタッフを指導するために、アジアやアフリカに出張する機会も多く、とても充実した日々を送っていました。

    ——そんな恵まれた環境にも関わらず、なぜ転職を考えるようになったのでしょう?

    神田:理由は2つあります。入社3年目ごろから日本以外の場所で働いてみたいと考えるようになったのと、これまでにない新しい仕事に挑戦したいという思いが強くなったからです。前職の延長線上にある仕事ではなく、今までに得た知見を発展させられるような、革新的で、これまでとは根本的に異なる仕事をしたいと考えるようになりました。

    ——具体的にはどんな転職先を検討されましたか?

    神田:エネルギー関連の外資系企業や国際機関などです。実際、いくつか応募したのですが、転職活動をはじめて1、2年は、なかなか求人条件が折り合わず、面接まで辿り着けない状態が続きました。転職サイトでITER機構の求人を見つけたのは2018年の暮れのことです。

    ——それまでITER、もしくは核融合炉について関心はあったのでしょうか?

    神田:いいえ。核融合については一般レベルの知識しかなく、ITERという名前すら知りませんでした。

    それでも募集要項を読むうち、「世界初」に挑むチャレンジングな取り組みだということは十分理解できました。それで興味の赴くまま募集内容をさらに読み進めると、IT部門やバックオフィス部門など、原子力と直接関わりのなさそうなポジションでの求人も多く、私が携わっていた石油化学プラント設計経験が生かせそうなポジションも見つかりました。

    勤務地はフランスですが、30カ国以上が参加する国際協力プロジェクトなので公用語は英語です。自分のスキルでも問題なさそうだと思い、すぐに日本の採用支援窓口にコンタクトを取り、応募書類や面接の準備に取り掛かりました。

    「やるべき仕事」は明確で、ルールは非常に細かくて厳格

    ——ITER機構に入った感想を聞かせてください。

    神田:こちらは雇用契約を結ぶ際に、業務範囲や責任範囲を詳細に記載したジョブディスクリプション(職務記述書)を取り交わす、いわゆる「ジョブ型雇用」なので、成果をしっかり出していかなければならないというプレッシャーを常に感じながら仕事をしています。

    でも逆に言うと、ジョブディスクリプションに書かれた内容以外のことに責任を負う必要はありませんし、与えられた職務を全うすることだけに集中できるので、余計な仕事に煩わされることはありません。

    ITER機構/神田さん

    神田さんが休暇で訪れたフランス南東部の地方都市郊外の風景「南フランスはヨーロッパ各所へのアクセスも良く、気候が温暖で食べ物がおいしい土地柄が魅力です」(神田さん)

    ——ITER機構には、約30カ国から900名以上の技術者や研究者が集まっていると聞きました。日本人の同僚はどれくらいいらっしゃいますか?

    神田:私と同じチームに1人、ITER機構全体では30名程度います。昨年あたりから徐々に数は増えていますが、他の国と比べると日本人はまだまだ少ないですね。

    ——言語や分野、仕事の進め方の面で戸惑いなどは?

    神田:業務の手順、ルールは日本にいたころと比べると非常に細かく、厳格に運用されているので、慣れるまでに少し時間がかかりました。

    これは業務の効率化や標準化を重んじるヨーロッパ全体の傾向でもあるようですが、特にITERは多国籍プロジェクトであり、かつ安全性が最も重要視される原子力プロジェクトです。

    誰が設計し、誰が承認したかをきちんと記録し、必要に応じて履歴を遡れるようにしておかねばなりません。こちらは日本より人材の流動化が進んでいるので、業務の属人化を防ぐためにもルールや記録を重んじるんです。

    ——日本的な「現場の擦り合わせ」や技術者同士の「あうんの呼吸」で、現場の課題を吸収するようなやり方は通用しないということですね。

    神田:そうですね。その一方で、最新鋭の3次元CADシステムの導入など、設計環境はとても充実しています。日本より踏むべき手順が多いのは確かですが、効率良く働くことが可能です。

    「人類の新たなエネルギー源をつくる」
    先例がない取り組みにやりがいを感じる日々

    ——入職から約1年。どんなときにご自身が成長したと感じますか?

    神田:会議の場面でしょうか。日本にいた時の感覚だと、会議は関係者が集まり情報を共有する場だという認識があったのですが、こちらでは議論をして合意形成する場。ですから、何かアイデアや反論があってもその場で口に出さなければ、それはなかったものとみなされます。

    最初のうちは速いテンポで展開される議論に付いていくのがやっとでしたが、入職から半年経つころには、自分から意見を発信することができるようになりました。私が設計を担当した一次冷却水のモニタリングシステムについての質問に対して、スムーズに受け答えができた時は、成長を実感しましたね。

    ——仕事のやりがいを感じるのはどんなときでしょう?

    神田:社会貢献性の高い仕事であり、前職で得た知見を生かしながら新規性がある仕事にチャレンジできているので、日々やりがいを感じています。

    今建設中の核融合炉に関しても、先例がない取り組みですから、これから技術を確立していかなければならない領域がいくつも残されている状況です。

    しかし、こうした高い壁を乗り越え、核融合炉が実用化できれば、人類は核分裂による原子力発電よりも安全性が高く、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギー源を手に入れることができます。大きな責任感とともに、大変重要なポジションを担っているという実感がありますね。

    また、いろいろな国の言葉が飛び交う職場で働けること自体もすごく新鮮です。

    ITER機構/神田さん

    ※写真提供:ITER機構

    ——今後の目標について聞かせてください。

    神田:今のところ、任期が切れる2024年以降、契約を更新するか転職するかは考えていませんが、これまで日米欧の工業規格と深く関わってきた経験を生かして、エネルギー関係の設計実務や技術コンサルティングなども視野に、キャリアを築いていけたらと思っています。

    こうした新しいキャリアに目を向けられるようになったのも、国際プロジェクトに参画したことによる成果の一つかもしれません。

    ——国際的な舞台で活躍したいと考えるエンジニアのみなさんにメッセージをお願いします。

    神田:中国や韓国の人たちと比べると、国際的な舞台で活躍する日本人はまだまだ少ない印象です。海外に出れば文化や言葉の違いに戸惑うこともあるかもしれません。

    でも勇気を出して一歩踏み出してみると、もろもろの心配事が取り越し苦労だったと気付くことも多いですし、日本では得がたい経験を積むこともできるでしょう。

    ITERに限らず、日本人エンジニアが活躍できる場は世界にはたくさんあります。日本以外で働くことを念頭に転職活動をしてみると、キャリアの選択肢は一気に広がります。

    そうやって視野を広げることが意外性のあるキャリアを築き、自分の市場価値を高めることにつながるのではないかと思っています。

    取材・文/武田敏則(グレタケ)


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    ITERプロジェクト参加国として、日本人の更なる人的貢献が求められています。プレエントリーページでは、ITER職員のミッション、ITERプロジェクトのやりがい、神田さんを含む現日本人職員の声、待遇・生活情報まで幅広く情報を公開しております。

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