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クリエーティブもAIで代替される? 超高精度文章生成AI「GPT-3」をグローバルトレンドから解説

働き方

    本連載では、海外AIトレンドマーケターとして活動している“AI姉さん”ことチェルシーさんが、AI先進国・中国をはじめとする諸外国のAIビジネスや、技術者情報、エンジニアの仕事に役立つAI活用のヒントをお届けします!

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    海外AIトレンドマーケター | AI姉さん
    國本知里・チェルシー (@chelsea_ainee)

    大手外資ソフトウェアSAPに新卒入社後、買収したクラウド事業の新規営業。外資マーケティングプラットフォームでアジア事業開発を経て、現在急成長AIスタートアップにて事業開発マネジャー。「AI姉さん」としてTwitterでの海外AI事情やトレンド発信、講演、執筆等を行っている

    皆さん、こんにちは。AI姉さんことチェルシーです。

    現在、人工知能領域で世界中に驚くべき衝撃を与えているのが、文章生成AI「GPT-3」です。人工知能を研究する非営利団体OpenAIが2020年6月に公開した最新の言語モデルで、以前松尾豊教授も重要トピックとして挙げていましたね。

    >>「知能とは何か」解明近づく?東大教授・AI研究者松尾豊さんに聞くディープラーニングの先端動向

    今回は世界の最先端トレンドで、今絶対に抑えておくべき「GPT-3」について、その威力や、世界でどのように使われているのか、そして今後エンジニアは何を意識すべきなのかを解説をします。

    人間と見分けがつかないアウトプットを出すGPT-3の威力

    GPT-3は超高精度の文章生成AIで、詩や小説だけでなく、プログラムのコードやギターの譜面まで、まるで人間が書いたかのようなアウトプットを出しています。

    とあるエンジニアのツイートでは、「スイカの形をしたボタン」と入力してGPT-3で生成すると、即座に「スイカの文字が書かれ、緑の線で囲まれたピンクの円」が表示されていることが分かります。このツイートは4万以上の「いいね」数で拡散されています。

    GPT-3ではギターのタブ譜や、文学作品の生成もでき、これまで主張されてきた「単純作業はAIに代替されるが、クリエーティブはAIに代替されない」という意見を覆すほどの実力を見せています。

    GPT-3は「3」という数字が付いているように、OpenAIが開発するGPT言語モデルの3番目のバージョンです。実は前バージョンのGPT-2も危険過ぎると問題視され、論文の公開が延期されたこともあるほど、生成する文章の精度が高いことで有名でした。

    そして、進化したGPT-3の威力は「本当に人間が書いたのかどうかさえ区別がつかない」という点です。

    6月にAPIが公開された後、7月には「あるブログが人間ではなくGPT-3が書いたものだった」という出来事が話題を呼びました。

    GPT-3を使ったブログで2週間の閲覧者は2万6000人、購読者数は60名に。ブログにGPT-3が使われていることを見破れたのは、たった1名だけでした。

    さらに驚くべきことに、ブログの最初の投稿は『HackerNews』で1位になったのです。

    GPT-3で生成したブログが、『HackerNews』で1位に

    引用:https://liamp.substack.com/p/my-gpt-3-blog-got-26-thousand-visitors

    直近の10月上旬にも、3000万人のユーザーがいる海外人気掲示板『Reddit』にGPT-3のボットで書き込みされた投稿があり、1週間近く見破られなかった、という出来事がありましたね。

    投稿内容にも注目で、自殺を考えたことがありアドバイスを求めていたユーザーに対し、GPT-3のボットは「自分にとって一番の支えになったのは多分両親だと思う。両親とは非常に良い関係性を築けており、何があってもいつも支えてくれた。これまでの人生で何度も死にたいと思ったことがあるけれど、両親のおかげで一度も実行したことはない」と返答していたのです。これには157の高評価が付いていました。

    この投稿をした「/u/thegentlemetre」というユーザーの投稿頻度や文章を生成する速度が1分間に1回とやけに速いことを疑問に思った他ユーザーが、スレッドを立て調査をしたところ、同じくGPT-3を用いた「Philosopher AI」と内容が一致したこと確認されました。

    GPT-3を用いた「Philosopher AI」と内容が一致

    引用:https://www.kmeme.com/2020/10/gpt-3-bot-went-undetected-askreddit-for.html

    Microsoftが独占ライセンスを取得するも、イーロンマスクが異論を唱える

    2020年9月22日にMicrosoftが、GPT-3の独占的ライセンスを取得したことを公式に発表しました。

    >>https://blogs.microsoft.com/blog/2020/09/22/microsoft-teams-up-with-openai-to-exclusively-license-gpt-3-language-model/

    元々5月には、OpenAIとの継続的なパートナーシップを拡大し、大規模なAIモデルをトレーニングするためのカスタマイズされたAzureのスーパーコンピューターを発表しています。1,750億のパラメーターがあるGPT-3は、Azure上のスパコンでトレーニングされているという背景もあるのです。

    世界最強の言語モデルを武器にしたMicrosoftはAI技術を民主化して、Azureを活用したAIプラットフォームを拡張することを強くメッセージで発信しています。

    そして、この発表にはOpenAIの共同設立者であるイーロンマスクが「これはOpenの反対のように見える。OpenAIは本質的にMicrosoftに捕らえられている」とTwitterで批判をしています。

    MicrosoftのCTOであるケビンスコットは、「APIを介して引き続きアクセス可能だ」と述べていますが、現時点でMicrosoftは世界最強の言語モデルの独占ライセンスを取得しました。今後このGPT-3の強みにより、自然言語領域においてはGoogle vs Microsoftの2強状態が進んでいくと想定されます。

    Googleが独自言語モデルBERTを2018年に発表した当時も、文脈理解力の大幅な向上によりAI領域のブレイクスルーと言われ、日本語を含む70言語以上でアルゴリズムが展開されました。今後は日本でもGPT-3のAPIを活用したAIプロダクト・サービスが増えていくのは間違いありません。

    ですが、高精度すぎる内容から、一般公開に悪用の懸念も残っており、このGPT-3を取り巻く倫理についても今後議論がよりされていくようになるでしょう。

    エンジニアはGPT-3を「使う」ことも視野に入れよう

    私はこれまで、中国AI事例を通じて、画像認識AIの進化を多く伝えてきました。活用できる事例もあれば、米中ではAIの顔認証やディープフェイク規制が作られるほど社会問題にもなってきています。

    >>「顔認証だって美しく」AI活用先進国・中国の“顔パス事情”はここまで進んでいる!【連載:AI姉さん】

    2018年~2019年は非常に画像領域・自動化領域で注目されるAI技術が多かったですが、今最も注目しているのはGPT-3に代表されるような最先端の言語モデルです。

    GPT-3を利用すると、何より効率が上がります。例えば7月に話題になったブログも、良いタイトルとイントロだけを書いてしまえば、1時間に5記事作ることができ、全てを1日で公開することも可能です。

    現在書いているこの連載も、「GPT-3が書いたもの」と言ったとしても分からないと言われるような時代がもうすぐ来る可能性が非常に高いのではないでしょうか。

    また、GPT-3がソースコードを書けることを例に挙げたように、エンジニアも今後はGPT-3を使ってプログラミングをすることも十分あり得ます。

    エンジニアだとしても、GPT-3の技術面だけでなく、職業感・倫理・規制は意識すべきポイントだと私は思います。今後のGPT-3の発展も非常に注目ですね。

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