この連載では、技術・組織づくり・経営・キャリアに詳しいIT業界の専門家たちが、社外メンターとして登場。エンジニアtype読者の“上司に言えない悩み”に、複数のメンターたちが回答を寄せていきます!
>>メンターへの相談・質問はこちらから
モチベーション・パフォーマンス・市場価値……どうすれば上がる? 澤円・えふしん・藤倉成太が一問一答!【イベントレポート】
エンジニアtype読者から寄せられたお悩みを、ベテランエンジニアの3人に相談できる人気連載『エンジニアWebメンタリング』。
2020年12月7日に、本連載でメンターを担当してくれている澤円さん、藤川真一(えふしん)さん、藤倉成太さんへの公開取材イベントをオンラインで実施。先日、同イベントの内容を、抜粋してお届けした。
>>エンジニアの“ベストな転職時期”はいつ?etc… 澤円・えふしん・藤倉成太がオンラインで読者の悩みに回答【エンジニアtypeイベントレポ】
後編となる本記事では、イベント後半に視聴者から集まった質問のうち、特に注目が集まった回答を抜粋して紹介する。
【質問1】納期プレッシャーに弱くパフォーマンスが上がらない
エンジニア1年目です。納期プレッシャーや上司からの圧に弱く、そういった状況でパフォーマンスが落ちてしまうことが多いです。これは乗り越えるべき壁なのか、納期に余裕がある会社に転職するべきなのか悩んでいます。
藤川:そもそも、残念ながら納期に余裕がある会社はありません……。ただし、それが適切な納期プレッシャーなのかどうかは考えるべきですね。例えば、上司からの圧がパワハラ的で、そのせいで部下のパフォーマンスが発揮できない状況であれば、上司側に問題がある場合もあります。
エンジニアって「脳とコンピューターで会話をする仕事」だと思うんです。経験を生かした効率性や、脳内の記憶力を含めてパフォーマンスが発揮できると思うんですが、そこに掛け算でメンタルが加わります。だからメンタルが萎えたら、生産性がゼロにもなり得るワケですよ。
ですから、まずはメンタルが原因でパフォーマンスが落ちている事実を正直に上司に伝えてください。納期のプレッシャーなのか上司の圧なのかは分からないけれど、とにかくつらいという感情を共有する。その上で、納期を自分で設定することが大事かなと思います。
1年目の方なら上司やマネジャーが納期を設定しているかもしれませんが、その際は「納期への納得感」がまず重要。納得できていれば、それを実現しようと思えますから。
自分で設定した納期であれば、「やらされている」感覚がなくなります。残業してでも実現しようとするなど、自らポジティブな意思決定ができるんです。それによって、まずは成功体験を積んでいきましょう。
そもそも1年目のエンジニアが与えられた納期を達成できないのは当たり前のことでもあり、もしかすると上司もそこまで期待していないかもしれない。でもこの方は、きっとすごく真面目で上司の指示を自分ごとに捉えるスキルを持っていると思います。あとは場数を踏むだけなので、まずは働きやすい環境をゲットして、どんどん経験値を蓄えてほしいですね。
【質問2】マネジャーとしてモチベーションが上がらない
スペシャリストになりたくても、会社組織の中では、エンジニアリングマネジャーや開発ディレクターといった、実作業を行わないポジションを求められることがあります。エンジニアとしてのモチベーションを、どうやって維持すればいいでしょうか。
藤倉:マネジメントというポジション自体のモチベーションが分からないという質問なら、マネジャーの役割や期待をきちんと理解することが大事かもしれません。
マネジャーの入り口の仕事は、現場や上層部から受ける多くの相談を対応することで手一杯になりがちです。それは最初にやらなければいけないことですが、突き詰めていくとマネジャーの仕事って、決してそれだけではありません。将来を見据えて組織をデザインし、その姿を実現していくのが本来の仕事です。
例えば、チームが1年後にどんな姿になるべきか、それをデザインして先導するのはすごくやりがいがあると思いますよ。日々目の前の景色が変わる中で、さまざまな発見をしながら臨機応変に対応し、納得できる、自慢できる組織を目指すことはマネジメントというポジションだからこそ感じられるやりがいではないかと感じます。
僕自身は社会人としての能力は並だと思うんですが、仕事を楽しむ能力はずば抜けて高いという自信があります。社会人になってから毎秒楽しい。マネジャーという仕事でもいいチームができたらすごく楽しいですし、モチベーションを考える前にまずは単純に仕事を楽しんでみよう! と考えるのはどうでしょうか?
【質問3】辞めたいと言っているメンバーを引き止めたい
「プロジェクトに対してモチベーションはあるけれど、会社に未来がないから辞めたい」と言っているメンバーに対して、何か良いアドバイスはないでしょうか?(できればプロジェクトには引き止めたい)
藤倉:僕自身も、数は少ないものの退職を引き止める立場になった経験があります。スマートな回答はいまだに持っていないのですが、自分の熱量を相手にぶつけるしかないかな、と感じています。
「なぜ、今この会社にいることがベストだと思うのか」、「この会社にどんな未来を見ているのか」を言語化して伝える。本気でそう思えていれば自然と言葉に熱がこもるので、「あなたがそう思うなら続けてみるか」と考えてくれる人もいるかもしれません。
大前提として、弊社で働いているメンバーは、僕が心底信頼する役員たちがOKを出した素晴らしい人材であり、僕は全てのメンバーを無条件で信頼しています。そんな彼らと働き続けたいと根っから思っているので、その熱量は大体伝わりますね。
【質問4】市場価値を上げるには「募集にアプライ」するのが近道?
「自分の市場価値」を上げるには、やはりいろいろな募集にアプライしていくのが、遠回りなようで近道でしょうか?
澤:いろんな募集に手を挙げて行動してみるのは一つの手段ですが、結局は手段でしかありません。「市場価値」を考える上での本質は、自分に価値があるかどうかであり、自分の価値を高める行動ができているかどうか。やみくもにトライするだけでは意味がありませんよね。
求人市場に対して「私に市場価値はありますか?」と聞いても、仕方ないです。「私はこの分野でバリューが出せる人間です。欲しいですか?」というのが募集に対するアプライであって、まずは自分の価値を定義するプロセスが第一段階です。アプライはその次だと考えましょう。
キャリアの話題で「遠回り」「近道」というワードをよく聞きますが、ボク自身は「ショートカットすることばかり考えている人は市場価値がない」と思います。市場価値がある人ならチャンスは向こうからやってくるものですから。もし、現時点でチャンスが来ていないなら、自分の価値を高めるしかありません。
手っ取り早い方法は、自分が請け負う仕事をこなすだけでなく、他部署の手伝いや人手が足りないスタートアップのサポートなど、外部にも目を向けてギブをしていくこと。そうすると、自然と自分の市場価値が高くなり、チャンスが転がり込む確率も上がっていくはずです。
【質問5】一つの会社にい続けるってどうなの?
澤さんも転職回数が少ないですが、一つの会社に残る判断をしてきた理由を知りたいです。
澤:ボクは、マイクロソフトのテクノロジーセンターのセンター長を9年続け、最終的に23年間、同社に在籍していました。その理由は、毎年、別世界のようにテクノロジーが勝手に変わっていき、市場で最も最先端の技術を扱うことができていたから。
もちろん会社自体が好きだったこともありますが、転職せずとも毎年仕事内容がアップデートされていたので、自然とエキサイティングな仕事ができていたことが一番です。
こうやって一つの会社にいるのは悪くないことだと思いますが、ボクが言えるのは「いつでもそっちに移れる」という自信を持っておくことは大事だということです。
ボクも声が掛かった面接には全て行っていましたし、マイクロソフトにも「もしすごく条件のいいオファーがあれば転職します」と伝えていました。結果的にマイクロソフトにいた方がエキサイティングだったので23年勤めたわけですが、今年のパンデミックで世の中が激変し、いいタイミングだなと思い、2020年にめでたく卒業しました。
【質問6】CTOに必要な能力って?
キャリアパスとしてエンジニアからCTOになるには、どのような能力が必要になりますか?
藤川:CTOやCXOといったポジションは、原則としてCEOから任命されなければ持てない肩書です。CTOなら「技術分野を任せたい」という信頼をCEOから得られるかどうかが最大のポイントでしょう。
スタートアップのように事業規模が小さなフェーズなら「技術リーダー」や「サービスの維持・運営・管理」がミッションになるでしょうし、規模が大きくなれば、「エンジニア組織の維持・運営・管理」になるかもしれません。
極論言ってしまえば、CEOが無茶振りしてもちゃんとボールを打ち返してくれる人たちなんですよね、CTOやCXOって。なので必要な能力というならば、「ちゃんと打ち返せること」になるのではないでしょうか。
文/小林香織
RELATED関連記事
RANKING人気記事ランキング
NEW!
ITエンジニア転職2025予測!事業貢献しないならSESに行くべき?二者択一が迫られる一年に
NEW!
ドワンゴ川上量生は“人と競う”を避けてきた?「20代エンジニアは、自分が無双できる会社を選んだもん勝ち」
NEW!
ひろゆきが今20代なら「部下を悪者にする上司がいる会社は選ばない」
縦割り排除、役職者を半分に…激動の2年で「全く違う会社に生まれ変わった」日本初のエンジニア採用の裏にあった悲願
日本のエンジニアは甘すぎ? 「初学者への育成論」が米国からみると超不毛な理由
JOB BOARD編集部オススメ求人特集
タグ