この連載では、注目企業のCTOが考える「この先、エンジニアに求められるもの」を紹介。エンジニアが未来を生き抜くヒントをお届けします!
「“意味ある仕事”の答えは自分の中にある」ヘイCTO藤村大介が後悔しないキャリアを歩めた理由
誰でも簡単にネットショップが開ける『STORES』や、キャッシュレス決済の『STORES 決済』など、「お商売のデジタル化」を支援するプラットフォームを開発・運営するhey。2020年8月、同社CTOに就任したのが藤村大介さんだ。
エンジニアとしてキャリアをスタートさせて以降、数々のWeb系スタートアップをわたり歩いてきた藤村さんが、heyを選んだ最大の理由。それが、こだわりや情熱、楽しみなどの感情によって動かされる経済の発展を支援する「Just for Fun」というミッションだ。
好きなことを生業にする。その楽しさと難しさをずっと感じてきた藤村さんが、“後悔しないキャリア”を歩むために、若手エンジニアに今伝えたいこととは。
自分が夢中になれることを、生業にできれば幸せ
Web系スタートアップを中心に、これまで多くの企業で活躍してきた藤村さん。オンラインゲーム開発、EdTechベンチャー、地域SNSサービスなど、さまざまなサービスの開発や組織のマネジメントを担当してきた。
豊富な経験を積み重ねてきたが、当の本人は、「その時々で、何となく面白そうなことを選んできただけ。特に深く考えていたわけではなかったんです(笑)」と苦笑いする。
「昔から、好きなことにはとことんのめり込む“マニア”的な性格で。学生時代は、音楽マニアで、アルバイト代を全てつぎ込んでライブハウスに入り浸ったり、バンドを組んでオリジナル曲を作ったりしていました。
でも、経済的に成り立たないことを仕事にするのは無理だと思っていましたし、『好きなことをマーケットの都合に左右されたくない』という気持ちも強かったので、音楽の道に進もうとは思いませんでした」
大学での専攻は哲学。ビジネスや経済など世の中のことにはあまり関心がなく、卒業後は公務員試験を受けようと考えていたという。就職活動もほとんどせず、「何となく面白そう」と思った会社をいくつか受けたところ、最初に内定が出たのが、業務用パッケージソフトの導入を行うソフトウエア企業だった。
「そのまま新卒で入社して、SEとして働き始めました。学生時代にHTMLやCSSを触ったことはありましたが、あくまでも個人的な趣味として遊んでいた程度で。本格的にプログラムを学んだのは初めてでしたが、やってみると案外性に合っていて、面白かったんですよね」
仕事として成果を出せたこともあり、「自分はプログラミングが得意かもしれない」と感じたという。コードを書くことが楽しくて、個人的に新しい言語を学びのめり込んでいった。
そしてもう一つ、社会人になって改めて痛感したのは、仕事とは人生の多くを占めるものだということだ。
「会社の中にはいろいろな人がいて、楽しそうに仕事をしている人もいれば、毎日つらそうに会社に来ている人もいる。それを見ていると、仕事の文句を言いながら一生を過ごすのは嫌だな、と思いました。
そこから『どんなふうに働いていくか』が自分の中でとても重要なテーマになったんです。生活の大部分を占める仕事は、自分にとって意味のあるもの、追求しがいのあることでなければ、人生自体がつらくなってしまいますから」
「面白い」「好き」を追いかけていたら、heyに出会った
以来、自分が面白いと思うことを追いかけ続けてきた。当時盛り上がりを見せていたWebの世界に移り、新しいテクノロジーを吸収しながら、バックエンドからフロントエンドまで幅広い領域の開発を担当。技術部門のリーダーとしてチームを率いたり、創業メンバーとして会社を立ち上げるなど、マネジメントの経験も積んでいった。
そんな中で、heyにジョインしたきっかけは、同社副社長の佐俣奈緒子さんから声を掛けられたことだ。当時の藤村さんは、フリーランスのエンジニアとして活動していた頃だった。
「スタートアップのコミュニティーの中でheyや佐俣の存在は知っていたので、『お茶でもしましょう』という感じで気軽に会うことになりました。会ってみると、仕事に対するスタンスが似ていて、すごく楽しかったことを覚えています」
これをきっかけに5カ月ほどフリーランスとしてheyの仕事に関わり、2020年4月、正社員として同社に入社。一人で自由に動けるフリーランスの働き方は快適だったが、同時にできることの限界も感じていた頃だった。
「ちょうどこの頃、プロダクト作りにおいて純粋なテクノロジー部分だけでなく、チームファシリテーションやマネジメントも含めた役割などを担いたい気持ちが強くなっていました。しかしフリーランスでいる限り、当事者として現場に飛び込み、先頭に立ってイニシアチブを発揮していくことは難しい。社外からアドバイスするだけで終わることにもどかしさを感じていた頃でした」
そして何よりheyという会社自体に魅力を感じ、会社員に戻ることを決意したという。
「スタートアップの中でも、すでに一定の規模まで成長しており、次のステージを目指そうというタイミングで、ここからさらに組織をスケールしていくのは僕にとっても新しいチャレンジでした。それに、チームメンバーのエンジニアリングに対する姿勢もすごく好きな雰囲気だったので、ジョインすることに決めたんです」
「意味ある仕事」は“自分軸”の中にある
CTOに就任し、当事者として事業を牽引していく立場となった今、会社のミッションの実現に全力を尽くすつもりだ。heyのミッションは「Just for Fun」。こだわりや情熱、楽しみによって駆動される経済の発展を支援するというものだ。
「誰が聞いても共感できるような、すごく良いテーマだと思います。いろいろな人がそれぞれの問題意識や興味・関心を原動力に、頑張ろうと思えるって素敵なことですよね。僕はそのミッション自体にすごく共感しているんです」
自分の好きなことに集中して、かつそれが商売として成り立っていく世界を目指す。それは藤村さん自身の理想でもある。学生時代に、「音楽の世界で、好きなことを生業にするのは難しい」と感じていた自身の経験からもそう言える。
「heyのサービスを使えば、誰もが簡単にネットショップを開設・運営できる。こうしたインフラができることによって、一人一人の小さなこだわりのビジネスが、しっかりと成り立つようになりました。ずっと昔から持ち続けてきた問題意識が、今につながっている感覚です」
「自分にとって意味ある仕事がしたい」と考えていた藤村さんが今、そうした仕事に出会えたのは、常に「自分が夢中になれること」を選び続けてきたからだ。
純粋に面白い、好きだと思えることだから、泥臭い努力もできる。勉強することも苦にならない。結果的に力がついて、成長につながることを、藤村さんは体感している。
「僕はその場その場の考えで、わりと適当なキャリアを歩んできたと思います(笑)。でも今振り返ると、どんな時でも、何が流行っているとか、どちらが有利だとかは一切関係なく、常に自分軸で判断する、ということだけはブレませんでした。
周りに流されず、ちゃんと自分で考えて判断し、その結果のフィードバックを積み重ねているイメージですね。そうすれば、一貫性のある自分のストーリーができるし、後に後悔することのない自分の歴史になってくる。だからこれからどんなキャリアを築くにしても、自分の判断を大切にできる『自分軸』を鍛えることが大切なのだと思います」
取材・文/瀬戸友子
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