この連載では、技術・組織づくり・経営・キャリアに詳しいIT業界の専門家たちが、社外メンターとして登場。エンジニアtype読者の“上司に言えない悩み”に、複数のメンターたちが回答を寄せていきます!
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マネジャーを目指すために、今何をしておけばいい? メンバー層の悩みにメルカリ名村・SmartHR芹澤・スマニューたいろーが回答
今回お悩みを寄せてくれたのは、30歳のWebエンジニア。早くマネジャーになりたいけれど、メンバーの今から何を準備しておけばいいのか悩んでいるそうです。
そこで今回は、メルカリCTO名村さん、SmartHR CTOの芹澤さん、スマートニュースのたいろーさんに「マネジャーになるために、必要なこととは?」と相談してみました。
今回のお悩み:マネジャーになるために、必要なことって?
手を動かすよりも人との折衝の方が好きなので、早くマネジャーになりたいです。現場エンジニアとして今から準備しておけることはありますか?
名村さんの回答:「開発の本質」を理解しておこう
マネジャーになると、技術に対してハンズオンする時間は確実に削られます。開発の本質を理解して、新しい技術を把握するための地盤を築いておきましょう。
マネジャーという仕事に対して、何を求めているかは企業によってさまざまです。
もしエンジニアの上長としてのマネジャーであれば、メンバーであるエンジニアが成果を出し、成長をすることが何よりも重要な役割。そのためにもマネジャーは、メンバーが前に進むために発生するあらゆる障害を排除する必要があります。折衝の能力はもちろんのこと、メンバーのことを理解し、正しい方向に導いていくメンターとしての能力も必要になります。
また、マネジャーは、さまざまなエンジニアの個性や考え方を理解し、応援する能力が求められます。つまり、さまざまな価値観を受け入れる器のようなものが求められるだろうと思います。
エンジニアとして他のチームやエンジニアと共に仕事をしていく中で、さまざまな価値観を持つ人たちを受け入れながら進めていく、そういった経験を積んでいくとマネジャーとして仕事を開始したときの助けになるかもしれません。
そしてマネジャーになると、技術に対してハンズオンする時間は確実に削られます。しかしエンジニアの良き相談相手でもある必要があるので、技術をキャッチアップ・理解していく必要があるでしょう。
ですから、今からできるだけ広い範囲の技術に触れ、エンジニアとしての知識の視野を広げ、開発の本質を理解しておくことをおすすめします。技術の本質的な面を理解することで、大量に流れてくる新技術の情報や開発に関するトレンドを把握するための地盤を築いておくことができるでしょう。
芹澤さんの回答:「今しかできないこと」で経験値を積もう
マネジャーとして職務領域が広がると、学習・実践する割合が相対的に減っていきます。だから今は、できる限り現場での経験値を積んでおきましょう。
「人との折衝が好き」と思えるのは、マネジャーをする上でとても大切な素地をお持ちですね!
マネジメントロールにつく人の多くは、元々現場でプレーヤーとして手を動かし、その経験を元にマネジメントを行います。
しかし、実際にマネジメントをしてみると、現場での経験以上にさまざまな知識が求められることが分かります。もちろん、プレイングマネジャーのような現場よりのマネジメントスタイルであれば大丈夫かもしれませんが、一般的に、マネジメントのレイヤーが現場から離れれば離れるほど、求められる知識領域は広がってきます。
例えば、エンジニア組織を束ねるようなマネジャーについて考えてみましょう。プログラミングの知識があればテクノロジーマネジメントはできますが、多くの場合はコーチングやチーミングのようなピープルマネジメントの知識も問われます。責務の範囲によってはプロダクトやプロジェクトのマネジメント知識も必要になるでしょうし、デザインや品質保証に関する知識も問われることもあります。
何が言いたいかというと、マネジャーとしての責務領域を広げていくと、プログラミングのことを学習・実践する割合は相対的に減っていくのです。ですから、「メンバー層のエンジニアとして今から準備しておくこと」への回答としては、できるかぎり現場での経験値を積んでおきましょう、ということ。
マネジャーになってからその経験不足に気付くのでは手遅れになります。先回りして、いろいろな分野を勉強しておくことも大切ではありますが、まずは「今しかできないこと」を考えることも重要かと思います。
たいろーさんの回答:技術以外のことにも興味関心を向けよう
いわゆる「エンジニアリングマネージャー」として貢献度を大きくしていくならば、技術だけでなく、顧客・組織・メンバーにも興味関心を向けてみて下さい。
早くマネジャーになりたいとのことですが、折衝が苦でないというのは希少な資質ですね。
エンジニアに限らず「マネジメント」という仕事にネガティブな印象をお持ちの方は少なくないですが、実は戦略や方針を策定し、目的に向かって組織を動かしていくクリエーティブな仕事です。成果に焦点を当て、それを生み出すためにありとあらゆることをするのがマネジャーなので、押さえておくべきことは多岐に渡ります。
いわゆる「エンジニアリングマネジャー」として貢献度を大きくしていくならば、技術だけでなく、次の三つに興味関心を向けてみて下さい。
一つ目は「顧客」です。あらゆる企業は事業を営んでいて、必ずお客さまがいます。あなたが関わっている事業のお客さまが、本当のところ、何に困っているのか。何にお金を支払っているかに興味を持ってみてください。
二つ目は「組織」です。組織はお客さまに価値を届けるための手段に過ぎないので、今あるかたちが最適とは限りません。より価値を届けるために、どういう組織や役割分担が最適なのか、自分で考える良いチャンスだと思います。そして、より理想的な組織構造があれば提案してみるといいでしょう。
そして、三つ目が「メンバー」です。マネジャーは「チームの成果を最大化する」ために、ありとあらゆることをします。メンバーはそれぞれ固有の得手不得手があり、人間なので体調も変化します。そこに目を配りケアする視点を持つことが、経営の役割分担を担う「マネジャー」の仕事です。
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メンターズプロフィール
株式会社メルカリ 執行役員CTO
名村卓さん
1980年生まれ。小学生の頃からプログラミングを始め、大学はコンピュータ・サイエンスを専門とする会津大学へ進学。コンピュータ理工学部へ進み、在学中からSIerでシステム開発を行う。2004年、大学を中退した後はSIerに就職、その後サイバーエージェントに入社。リードエンジニアとして『アメーバピグ』『AbemaTV』など主要サービスの開発に携わる。16年メルカリに入社。US版メルカリの開発などを担当。17年4月に執行役員CTOに就任
株式会社 SmartHR 取締役・CTO
芹澤雅人さん(@masato_serizawa)
2011年よりナビゲーションサービスを運営する会社にて、経路探索や交通費精算、動態管理といったサービスを支える大規模なWebAPIの設計と開発に従事。16年2月にSmartHR入社、開発業務のほか VPoE としてエンジニアチームのビルディングとマネジメントを行う。20年11月現職に就任し、現在はプロダクト開発・運用に関わるチーム全体の最適化やビジネスサイドとの要望調整を担う
スマートニュース株式会社 Technical Product Manager
森山大朗さん(@tairo)
早稲田大学卒業後、リクルートで人事・営業などを経験した後、エンジニアに転身。新サービスの立ち上げやビズリーチでの求人検索エンジン開発などを経てメルカリに参画。Head of Data/AI/Searchとしてメルカリの検索アルゴリズム改善やAIを活用した新機能の開発、Machine Lerning Engineer組織を統括した。2020年より現職。AIを活用したダイナミック広告のプロダクトオーナーとして開発のマネジメントを担っている。■ブログ:ユニコーン転職日記、■voicy:ユニコーン転職ラジオ、■note:たいろーのnote
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