“頑張り続けなきゃ”という呪縛からの解放「キャリアは長距離走。自分が心地よいと思えるリズムを見つけて」 【SmartHR・石床志保さん】
※本記事は姉妹媒体『Woman type』の転載です。
今回登場するのは、SmartHRでフロントエンドエンジニアとして活躍する石床志保さん。
石床さんが新卒で入行した銀行を辞め、心機一転エンジニアにキャリアチェンジを決めたのは24歳の頃だった。
技術トレンドの移り変わりが激しいフロントエンドエンジニアの世界。「知識不足というコンプレックスから、頑張らなきゃという気持ちでいっぱいになった」と当時を振り返る。
しかし、「今は自分らしく働けるようになった」と微笑む石床さん。なぜ彼女は心地よく働けるようになったのだろうか?
「安定」より「学び」を重視して転職
新卒で銀行の窓口業務を担当していた時に家計簿アプリの存在を知って、その便利さに感動したんです。「窓口を利用するより、アプリの方が便利なシーンってあるかも」って(笑)
そこから、漠然とIT・Web業界やアプリに対して興味を持つようになり、独学で勉強を始めました。
HTMLやJavaなどの言語を学びながらWebページを作成してみたら、すっごく楽しくて。銀行員になって1年が過ぎる頃でしたが、安定的に働くことより、新しい学びの多いエンジニアの仕事に魅力を感じている自分に気付いたんです。
「チャレンジするなら早い方がいい」と思い、転職を決意しました。
「文系女性エンジニア」というコンプレックスに苦しんだ過去
開発系の勉強会などが盛んな環境に行きたいと思い、上京しました。
未経験でも入社できる先を探して、企業サイトやLPなどの制作を手掛ける企業に転職。その後は「プロダクトづくりに携わってみたい」と思い、2度目の転職を決めました。
でも、その企業ではしんどい時期があって……。
その企業には上昇志向が強い文化があり、優秀な人がとても目立っていました。その反面、成果が出せていない人には厳しい社風だったんです。
もともと私は、個人で成果を挙げるよりも、チームのみんなでゴールを目指すことにモチベーションを感じるタイプ。この企業とはミスマッチだったんですよね。
私は文系出身で、コンピューターサイエンスを専門的に学んだこともないし、開発の経験だって浅い。経験豊富で優秀なベテランの先輩たちに囲まれて、コンプレックスを感じていました。
加えて、女性エンジニアも私一人しかいなかったので、心細かったのを覚えています。
そうですね。
同じ立場で悩みを相談できる人も、ロールモデルになるような先輩もいなかったので、「結婚・出産などでライフステージが変わったとき、今のペースで仕事を続けていけるのだろうか」という不安はありました。
フロントエンジニアの世界は技術革新のスピードが速いので、産休や育休などを取得したら、ますます技術についていくことができなくなりそうな気がして……。
結果、「文系だからダメ、女性だからできない、と思われたくない」という悔しさも相まって、頑張り過ぎて空回りしてしまったんです。
「とにかく早く技術力を上げないと」と焦れば焦るほど「何だか上手くいかない……」とモヤモヤする、負のスパイラルにはまってしまいました。
もちろん、職場には親身になって相談に乗ってくれる男性の先輩もいました。でも、応援してくれているのにちゃんと頑張れていない自分にも負い目を感じていましたね。
周囲と自分を比較して“焦らない”ためのコツ
まずは環境そのものを変えようと思って転職活動を始め、今の会社に出会いました。
SmartHRは、個人主義ではなく、チームでプロダクトを作り、「みんなで一緒に、世の中をより良くするものを提供していこう」という文化があるので、この環境でなら自分の力を発揮できるんじゃないかと思ったんです。
最初にカジュアル面談を受け、人事やエンジニアの方と話してみたら、自分と波長が似ているのを感じて。「この会社なら、きっと気持ち良く働けるはず!」と直感的に思えたんです。入社してからも、その感覚は変わっていません。
先輩たちは、互いに尊敬し合い、気遣いができる方ばかり。それに、気軽に相談できる女性エンジニアも、仕事と子育てを両立している人もいます。おかげで、以前までは不安だった「将来の働き方」もイメージできるようになりました。
出勤前に1時間程度、技術書や技術関連の記事を読んだりして勉強することをルーティンにしています。
私は技術の習得に時間がかかるタイプなので、コツコツ地道に積み重ね、自分なりに自信を付けていくことが大事だと考えました。
おかげで、先輩たちのスゴい技術力に直面しても、焦りやコンプレックスを感じることがなくなりました。やっと「自分のやり方」を見つけることができたように思います。
やる気が出ない日は、無理しないことを大切にしています。
時には小説を読んで心に栄養を与えたり、全然やる気が出ない日には、ぼーっとして過ごすこともOKにしたり(笑)。「勉強しなきゃいけない時間」にしてしまうと、気分が乗らない時に苦しくなるので、辞めたくならないようにしています。
そうすることで、次第に「自分が心地よく頑張れるリズム」を掴めるようになっていったと思います。「とにかく早く成長しなくちゃ」と焦っていた頃と違い、気持ちにゆとりができましたね。
コツコツ積み重ねていく中で、読めなかったはずのコードもいつの間にか理解できるようになっていたりして、毎日、成長を実感できています。
まだまだ勉強中の身ですが、自分なりに工夫し、チャレンジしていく中で「良くなったね!」と褒めてもらえることも増えて、それがまたすごくうれしいんです。
もともと新しいことを知るのは好きでしたが、自分のリズムで学んでいくように変化してからは、よりいろいろな発見ができるようになり、毎日ワクワクしています!
目標に縛られ過ぎず、息切れしないペースで走りたい
まずは肩の力を抜くことですね。私は、自分のキャリアを「マラソンの長距離走」のように考えるようになってから気持ちが楽になりました。
前職では、成長したいと焦るあまり、休日も夜遅くまで勉強していたんです。今思えば、頑張り過ぎたから息切れしちゃったんだな、と。
この先、何十年も働き続けていくことを考えたら、それじゃとても続きませんよね。今では「コツコツ無理せず頑張る」という、自分にとって気持ち良く働けるリズムを大切にしています。
もし、働き方に悩んでいる方がいるのであれば、まずは自分のリズムを探すといいかもしれません。自分の機嫌を自分で取りながらモチベーションを維持するように心掛けていけば、仕事も長く続けていけるんじゃないかな、と思っています。
これまでは先輩たちに助けてもらってきたので、これからは自分がさらに成長して、周囲の皆さんに恩返ししていくことが目標です。
私の場合、明確な目標を決めてしまうと、また頑張り過ぎてしんどくなっちゃうから、目標も自分らしく持っていたい。
どんな時も自分のペースで、皆と協力して良いものをつくっていきたいですね。
取材・文/上野 真理子 撮影/高橋圭司
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