この連載では、技術・組織づくり・経営・キャリアに詳しいIT業界の専門家たちが、社外メンターとして登場。エンジニアtype読者の“上司に言えない悩み”に、複数のメンターたちが回答を寄せていきます!
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1on1後の“優先順位”はどう決めればいい? マネジャーの悩みにメルカリ名村・SmartHR芹澤・スマニューたいろーが回答
今回お悩みを寄せてくれたのは、30歳でエンジニア組織をまとめるマネジャー。メンバーとの1on1面談で出てきた不満や課題に対して、何から対処すればいいのか、優先順位のつけ方に悩んでいるそうです。 そこで今回は、メルカリCTO名村さん、SmartHR CTOの芹澤さん、スマートニュースのたいろーさんに「メンバーから出た不満の対処、どうやって優先順位をつける?」と相談してみました。 事業会社でマネジャーをしています。1on1をして、メンバーから不満がいろいろと出た時、何から対処するか優先順位はどう決めればいいのでしょうか? 皆さんが1on1をするときに意識してることってありますか? まずは不満の原因が「成果を出すための壁」となっているかを意識して。その上で優先順位は、一番小さなコストで大きい成果を出せるものから対応していく、基本的な決め方でいいと思います。 マネジャーとして一番大事な仕事は、メンバーが成果を出すためにブロッカーとなっている問題を取り除くこと。メンバーから不満が出たときに、まずはそれが成果を出すための壁となっているのかを意識するのが良いかと思います。 不満にはいろいろなタイプがあり、感情的なもの、一時的なもの、足りない情報を勘違いして問題と思ってしまっていることなどさまざまです。そして、そのほとんどが思い通りにいかないことに対するストレスから来るものだと思います。 マネジャーはそういった不満やストレスを聞きながら、メンバーが前に進むために本当にブロッカーとなっているものが何なのかを見つけ出していく必要があります。 マネジャーにとっての最大の目的は、メンバーが成果を出すこと、そして成長することに尽きます。メンバーの不満から、成長や成果の阻害となっている部分を見つけ出して対処していくことを意識してみてはどうでしょう。 優先順位については、その不満の解消によって得られるものと、その解消のために必要な時間やコストを天秤にかけて、一番小さなコストで大きい成果を出せるものから対応していくという基本的な手法で良いと思います。しかし、時に感情的な問題はそういったロジックを逸脱して緊急対応しなければ、大きな問題を引き起こしてしまうことがあります。 冷静に、メンバーの感情の起伏を観察し、対応が必要な問題を見つけ出していきましょう。 私の場合は「欲求と主観的認識の把握」と、「適切な担当者探し」について、よく考えています。 1on1で不満を聞き出せているのは信頼関係の証しであり、素晴らしいことですね。 対処の優先順位は多くの変数が複雑に相関して決まるため、一概にコレと言える基準はないと思います。難しくもあり、マネジャーの腕の見せどころでもありますね。 このままでは身も蓋もないので、僕が課題(以下、不満を課題と読みかえます)に直面した際によく考えることのうち、二つを紹介させていただきます。 一つは「欲求と主観的認識の把握」です。 一般的に、課題とは「欲求と主観的認識のギャップ」と定義されます。例えば、レストランでの注文が遅い問題を考えます。この時の欲求は「早く食べたい」であり、主観的認識は「料理の提供が遅い」です。このギャップを埋めるためには双方向での調整が可能で、欲求だと「間違い絵探しを席において気を紛らわす」こと、主観的認識だと「働く人を増やすなどして提供速度を速める」ことなどが考えられます。ついつい主観的認識に気を取られがちですが、ちょっとした工夫により欲求が調整され解決される場合があることも意識しましょう。 もう一つは「一番うまく解決できるのは誰か」ということです。前述の通り、課題解決にはさまざまなアプローチが存在するのですが、良い解決手法というのは、課題に対する当事者意識が強い人や、解決によるメリットが大きい人から出ることが多いです。適切な担当者を探して適宜振っていくことを意識しましょう。 必ずしも全ての不満に対処しなくてもいいです。その上で、「問題」と「課題」を分けて考えましょう。 メンバーの全ての不満に対処する必要は、必ずしもありません。組織において何が問題かは常に変化しますし、見る人や立場によって、一つのことが問題に見えたり、見えなかったりします。 従って、まずは「それは誰から見て”問題”なのか?」「そもそも解決可能か?」「解決することで他の問題も一緒に解決できるようなインパクトや価値があるか?」を見極める時間を取り、「問題」と「課題」を分けましょう。 私は、あらゆる問題の中で、とりわけ解決する価値が大きいものを「課題」という言葉で使い分けています。 例えば「忙しすぎて新たな技術を獲得する時間が取れない」という不満をメンバーが漏らしたとしましょう。これを「大いに問題だ」と捉えるマネジャーと「個人の自己研鑽の話なので、自分で土日に学ぶべき」と捉えるマネジャーで対処の仕方がまったく違ってきますよね。 私であればこの場合、業務時間を短縮するというより、「そもそも業務時間を通じて新しい技術を獲得できるよう、常に新しい技術を取り入れられるようにする」「そのためにアーキテクチャをモノリシックではなくマイクロサービスベースに少しずつ置き換えるプロジェクトを並行させる」という方針を立て、そのための時間を生み出すために業務のムダ取りを進めます。 メンバーとの1on1は、話に耳を傾けると同時に、そういった方針を決めるための情報収集や、意見を聞き出す場として活用するのが良いと思います。 株式会社メルカリ 執行役員CTO 1980年生まれ。小学生の頃からプログラミングを始め、大学はコンピュータ・サイエンスを専門とする会津大学へ進学。コンピュータ理工学部へ進み、在学中からSIerでシステム開発を行う。2004年、大学を中退した後はSIerに就職、その後サイバーエージェントに入社。リードエンジニアとして『アメーバピグ』『AbemaTV』など主要サービスの開発に携わる。16年メルカリに入社。US版メルカリの開発などを担当。17年4月に執行役員CTOに就任 株式会社 SmartHR 取締役・CTO 2011年よりナビゲーションサービスを運営する会社にて、経路探索や交通費精算、動態管理といったサービスを支える大規模なWebAPIの設計と開発に従事。16年2月にSmartHR入社、開発業務のほか VPoE としてエンジニアチームのビルディングとマネジメントを行う。20年11月現職に就任し、現在はプロダクト開発・運用に関わるチーム全体の最適化やビジネスサイドとの要望調整を担う スマートニュース株式会社 Technical Product Manager 早稲田大学卒業後、リクルートで人事・営業などを経験した後、エンジニアに転身。新サービスの立ち上げやビズリーチでの求人検索エンジン開発などを経てメルカリに参画。Head of Data/AI/Searchとしてメルカリの検索アルゴリズム改善やAIを活用した新機能の開発、Machine Lerning Engineer組織を統括した。2020年より現職。AIを活用したダイナミック広告のプロダクトオーナーとして開発のマネジメントを担っている。■ブログ:ユニコーン転職日記、■voicy:ユニコーン転職ラジオ、■note:たいろーのnote 『エンジニアWebメンタリング』では、読者の皆さまからの悩みを随時募集中! エンジニアtypeの「メンターズ」たちに相談したい内容を、下記のフォームから募集中!今回のお悩み:メンバーからの不満、何から対処すればいい?
名村さんの回答
芹澤さんの回答
たいろーさんの回答:
メンターズプロフィール
名村卓さん
芹澤雅人さん(@masato_serizawa)
森山大朗さん(@tairo)
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