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交渉で年収5倍の経験も。厚切りジェイソンに給与交渉テクを聞いたら幸せに働くための超本質が返ってきた

働き方

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エンジニアのキャリアって何だ?

技術革新が進み、ビジネス、人材採用のボーダレス化がますます進んでいる。そんな中、エンジニアとして働き続けていくために大切なことって何だろう? これからの時代に“いいキャリア”を築くためのヒントを、エンジニアtype編集部が総力取材で探る!

以前、エンジニアtypeがインタビューした際に「エンジニアの技術レベルは、日本もアメリカもそう変わらない」と答えた厚切りジェイソンさん。

一方で、日本には「給与交渉をせず、自分が納得できる働き方をしているエンジニアが少ない」ことを問題点として挙げていた。

あれから2年が経った今、ジェイソンさんの目に映る日本のエンジニアの現状はどう変わったのか。

年収交渉の基本的な考え方や、交渉で「年収5倍」を実現したというジェイソンさん流の手法を聞いた。

厚切りジェイソン

厚切りジェイソンさん(@atsugirijason

1986年アメリカ ミシガン州生まれ。17歳のとき、飛び級でミシガン州立大学へ入学後、イリノイ大学アーバナシャンペーン校卒業。エンジニアリング学部コンピューターサイエンス学科修士課程修了。11年に来日し、IT企業の役員として働きながら、14年、お笑い芸人としてもデビュー。15・16年、R-1ぐらんぷり決勝進出。お笑いにとどまらず、情報番組や講演などさまざまな方面で活躍中

Why Japanese company!?

――以前、エンジニアtypeの記事で「日本人は給与交渉をしない」と仰っていましたね。今もそう思われますか?

そうですね、あまり状況は変わっていないのではないでしょうか。

新卒一律の給与をやめて、能力給とする会社も一部で出てきているようなので、変化がないわけではないと思いますが。

――そもそも、アメリカでは給与交渉をするのが当たり前?

アメリカには、「自分でキャリアをコントロールしないといけない」という意識を持っている人が多いです。だから、自分の経験やスキルに応じて、給与もちゃんとコントロールしようとする意思がある。

一方で、日本には提示された給与をもらって、言われたことをこなすだけの人も多い印象です。それで本当に納得して働いているのかな……って思うんですよね。

まぁ、もちろんアメリカ人も全員が自分の意思を最優先で働いているわけじゃないですよ。ただ少なくとも、僕の周りの仕事に対する意欲が高い人たちはみんな、自分で自分のキャリアをコントロールする意識を持っていました。そのため、会社との給与交渉もしっかりする。

――ジェイソンさんから見て、日本で「給与交渉」のカルチャーが根付かない理由は何だと思いますか?

先ほど話したように、自分で自分のキャリアをつくるという意識が弱いこと。キャリアは会社が決めてくれるものだと思っている人も多いかも。

そしてその背景には、給与交渉する仕組み自体がほとんどの会社に存在していないことがありますよね。

僕は新卒の時、日本とアメリカ、両方の会社から内定をもらいましたけど、日本企業からは「新卒なら給与はこの金額です」と言われてしまいました。

新卒といっても、スキルや経験はばらばらなのに、それって変じゃない?と思いましたよ。でも、さすがにそこで「自分だけ特別扱いしてほしい」と要求するのは難しいですから、日本の会社に行くのは辞めました。

厚切りジェイソン
――仰る通り、日本は「新卒一律給与」が一般的ですね。

これは中途採用も同様で、エンジニアが入社前に給与交渉をしたいと思っても、日本にはその受け皿がないこともまだまだ多いのでは?

楽天など、一部の企業では変わってきていると聞いていますが、日本には個人が今までやってきたことを無視する会社が少なくないでよね。

――無視というと?

例えば新卒では、大学の4年間、プログラミングやコンピューターサイエンスなどの専門的な勉強をしてきた人と、まったく違う分野の勉強をしてきてきた人が、入社したら一斉に同じ仕事をしますよね。給与も一律で。それって明らかに、経験を無視しています。

今はスタートアップやメガベンチャーなどをはじめとして、一部の企業ではスキルで評価する制度も出てきています。

このように、新卒でも中途でも、実績やスキルでちゃんと評価する会社が増えれば、エンジニアの意識も変わるし、社会も変わっていくと思いますよ。

給与交渉のポイントは「エビデンス」

――日本にも給与交渉の土台が出来始めているとして、その時エンジニア側はどうすれば自信を持って交渉にのぞめると思いますか?

資格、経験、データなど、今の自分のスキルを証明するエビデンスを提示して、交渉するのはマストですね。企業側としても、エビデンスがないのに転職者の言い分をそのまま受け入れるのは難しいので。

――例えば?

「自分はこれだけのスキル、資格、経験あるいは実績、成果物があります。自分と同じくらい人は、市場でこれぐらいの給与をもらっています」という言い方ですね。

必ず、数字(データ)を入れて、企業側を納得させる材料を揃えるんです。

そういう「データに基づいた交渉」ができれば、話を進めやすくなると思います。

――そうすれば、必要以上に萎縮する必要はなさそうですね。

そうです。でも、あまり期待し過ぎるのも危険。理想の給与は欲しいから手に入るものじゃなく、あくまで市場価値で決まるもの。

交渉すれば必ずしも望むポジションや給与で入社できるわけではありませんし、「あなたの実力だと、うちではそのポジションと給与は無理だよ」とあっさり断られる覚悟も必要です。

まあ、断られたらまた別の会社で条件を見直すなどしながら、出来る限り理想に近い給与額で交渉すればいいだけ。言うだけだったら損はない、くらいの気持ちで交渉できるといいですよね。

厚切りジェイソン
――ちなみに、ジェイソンさんは給与交渉をした経験はありますか?

ありますよ。僕は以前、交渉した結果、給与が他で頂いた内定条件と比べて5倍になったこともあります。

――すごい、それはどう交渉したんですか?

先ほどお話した通り、エビデンスを集めて提示したんです。

あと、僕の場合は新卒で入った会社で、「大学院で3年間修士号の勉強をしながら、社内のいろいろなプロジェクトを経験できる」というコースがあったので、そこに入って自分の価値を上げにいきました。

――価値を上げる?

そう。給与は当然、自分の価値に合った金額になりますから。今以上の給与が欲しければ、自分の価値を上げるしかありません。何もないのに「給与を上げてくれ」なんて言っても、会社側がWhy?だからね。

ちなみに、僕の同期もみんな同じ考えだったので、そのコースが終わったら全員が会社を辞めてしまったんですよ。自分の価値が上がったのに、会社がその価値に見合った給与を与えなかったから。

結局、会社側も「社員を育てても、価値を上げたら転職してしまう」ということに気付いて、そのコースは廃止になりました(笑)

――社員も会社をシビアに評価しているわけですね。

はい。自分の価値は社歴だけでは決まりませんからね。なぜなら、会社の利益に貢献するスキルや経験は、それらを取得するのにかけた年数とは全く関係ないから。

繰り返しになりますが、会社から評価されるスキルには、エビデンスが必要不可欠です。

いくら「10年間プログラミングをしてきました」と言っても、ベーシックなスキルしかなくて、何も成果物がなければ、それはエビデンスにはなりません。

――スキルをエビデンスで伝えるコツは?

例えば、「子どもの頃からプログラミングが好きだ」というエンジニアなら、実際に「何をどのくらい作ってきたのか」「どれくらいの時間で、何をすることができるのか」、数字などデータを用いて客観的な事実を言語化すること。

また、エンジニアであれば、実際の成果物を見せればいいですね。スキルを判断してもらえる成果物は、何よりのエビデンスになります。

エンジニアは「納得できる働き方」を追及せよ

――年数ではないエビデンスづくり、意識していきたいです。

年数は少なくても、企業が必要とするスキルを満たすものがあればそれでいいわけです。「こういうものが作れるので、御社にとって自分は必要な人材です」と強く言える人は、給与交渉もうまくできるでしょうね。

――面接官を相手にすると、それが難しいんですよね……。

まあ、いきなり転職じゃなくても、社内で交渉することから始めてもいいのでは?

新しい仕事を任せてほしいとか、マネジメントに挑戦してみたいとか。上司に掛け合うときにも、エビデンスを意識して交渉するんです。

そうやって希望とエビデンスをセットで伝えておくことで、社内でポジションをアップさせたり、良いプロジェクトに引っ張られたりすることは日本企業でもあると思います。

その結果、良い経験ができますし、自分の意思で選んだキャリアですから、「納得できる働き方」にもつながると思います。

――言い方がうまければいい、というものではないということですね。あくまで大事なのは、ポジションや給与を上げさせるだけのエビデンス。
厚切りジェイソン

そうそう。どれだけ交渉力があってもダメ。

でもね、僕からすると、日本のエンジニアの皆さんは、いっぱい良いエビデンスを持ってるのに、それを交渉材料として生かしきれていないように感じます。

我慢しながら働いてたら、皆さん自身も会社も、何も変わらないからダメですよ。今まで我慢してきた人は、一生我慢して働き続けることになってしまう。

どうすれば今の状況を自分で面白くできるのか、楽しくできるのかは、給与のことに限らず、考え続けないとね。

――ちなみに、やりがいがあっても給与が低い仕事というのとあると思うのですが、そういう仕事はすべきではない?

給与は高い方がいいけど、それが一番かというと、そんなことはないと思いますよ。

結局は、自分の納得感。自分が満足できる環境で働ければ、給与が高い低いはどっちでもいいんじゃないかな。

例えば、自分が成長できる環境があると思えるなら、その見返りは給与だけじゃないですよね。自分で今は自己成長を最も大事にしたいと思うならそれでいい。

僕は何度か転職をしていますけど、あえて給料の下がる転職をしたこともありますよ。それは、そこにいるからこそ身に付くものがあったからです。

――自分が納得しているかどうか。給与交渉以前の問題ですね。

給与を上げたい人は、社内で交渉するなり、転職するなり自分の意思で動くといいし、給与よりも大事なものがあると思うなら、それを満たせる働き方や職場を選べばいい。

まずは、自分の意思と自分の市場価値をしっかり認識することからです。

「周囲の人がそうだから私も」と思わずに、ちゃんと自分と向き合ってみましょうよってことです。

取材・文/石川香苗子 撮影/竹井俊晴 編集/大室倫子

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