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要件定義しない開発の極意とは? JTBとタッグを組んで新サービスを生み出す『CO-LABO』開発者に聞いた

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AIやビックデータを用いて新サービスを開発したいけれど、要件定義ができない……。そんな悩みを抱える企業に向けて、要件定義不要な新サービスを開発する仕組み『CO-LABO』が生み出された。つくったのは、「まだないものを、まだ届かない所へ」を使命に掲げる、社員数50名足らずのベンチャーIT企業・オープントーンだ。

これは、『システム開発のための見積りのすべてがわかる本』(翔泳社刊)の著者であり、要件定義や見積りの専門家でもある同社取締役の畑中貴之さんが中心となり生み出されたサービスだ。

この基盤を用いて、観光業界大手のJTBとタッグを組み生み出されたのが『観光予報』という新サービス。観光に関するビッグデータをビジュアル化して提供する画期的なシステムとして、日本観光振興協会や自治体、官公庁で実績を上げてきた。

少数精鋭のシステム会社であるオープントーンが、どのように『観光DX』の一翼を担っているのか。そこで、今回は『観光予報プラットフォーム』の開発チームを訪問。導入・初期開発を担当した畑中さん、現在チームを率いる奥寺真之さん、そして現場で業務に携わる佐々木浩さんに、同システム開発の経緯と現状を聞いた。

オープントーン

取締役 ITエンジニアリング事業部 部長 畑中貴之さん(写真中央)
観光ビッグデータ事業部 課長 プロデューサー 奥寺真之さん(写真右)
ソフトウェアエンジニア プロジェクトマネージャー 佐々木 浩さん(写真左)

ビッグデータで「観光政策支援プラットフォーム」を創る

――そもそも観光業界には、現状どのような課題があるのでしょうか。

畑中:この業界って、まだまだITが浸透していなくてアナログなやりとりをするところも多いんですよ。例えばビジネスホテルチェーンでは当然予約システムが導入されていますが、古くからの宿では紙の宿帳で管理しているところもあります。観光客の行動予測を「経験と勘」で補っているところも多いというわけです。

それらをITの力で代替したり、データの力で強化したりするのが「観光DX」の取り組みです。

――なるほど。そこでなぜ、オープントーンはJTBとタッグを組むことになったのでしょうか?

畑中:私がPMとして某ネット銀行のシステム開発に携わっていた時、たまたまJTBの社員の方とお話をする機会があったんです。当時、同社では経済産業省が発案した「観光のデータを地域に活用する」という事業に入札しようとしていました。しかし、具体的にどんなデータをどのようにすれば地域に活用できるかなど何も決まっておらず、頭を抱えている状態で。その件について、私が意見を述べ、ディスカッションをさせていただいたのがきっかけです。

――まさしく「要件の固まっていない状態」だったのですね。

畑中:はい。当時は『CO-LABO』の公開前でしたが、当社はそれまでの受託開発でも、プライムベンダーとして100%直接受注をしています。そのため「要件が固まっていない」プロジェクトを推進した経験やノウハウはありました。そうしたものを踏まえて、当社側より企画から開発までサービス創造全体をカバーするワンストップベンダーとしてさまざまな提案をさせていただいて。

そして最終的に、JTBと当社を中心に経済産業省の事業に提案・応募し『観光予報プラットフォーム』の案を完成させました。

オープントーン
――どのような案をつくったのでしょうか?

畑中:「自治体や企業が持っている既存のビッグデータを元にアルゴリズムを作成し、観光客の行動予測ができるといいのでは」と方向性を定めました。

例えば「1カ月後に50名のお客さまが宿泊する」という予約があるとします。それを過去のデータに照らし合わせてAIが計算することで「当日は50名ではなく120名の宿泊客が来る。その内訳は30代のファミリー層が何組来るはず」という予測値が出るようにしました。

その後、全国規模での観光客の宿泊履歴、購買履歴などのデータを集めて、分析機能を強化。今までは「過去の経験に基づけば、これくらいの客が来るだろう」と勘頼りにしている観光企業が少なくなかったところを、より高い精度で予測できるようにしたんです。

そうした予測値を、さまざまな形で見える化し、使いやすくするために、繰り返しプロトタイプを提案し、実際に経済産業省にレビューを頂いて改善していきました。

メインのユーザーは地方自治体、宿泊施設、観光に関わる企業などです。経済産業省の方々からも「このシステムは画期的だ」とお褒めいただき、新聞でも取り上げられるほどの反響を受け、ユーザーもどんどん増えていきました。

予想以上にポジティブな声をたくさんいただいたので、開発当初は期限付きのプロジェクトだったのですが、期限を延長することになって。その後、日本観光振興協会が事務局を務める「観光予報プラットフォーム推進協議会」が立ち上がり、われわれは引き続きシステムの改善・保守運用を担うことになりました。

――なるほど。このような柔軟な進め方が“あらかじめ要件定義をしない開発”ということですね。

畑中:このようなAIやビックデータ等を用いた“要件の不確かな新サービス”のニーズは高いので、そこから『CO-LABO』が生まれました。これは、パブリッククラウド(AWS)と、アジャイルのスクラムを参考にした開発プロセスでプロトタイピングを繰り返し「最短1カ月で形になる」サービス。

当社はAPN(Amazon Partner Network)に加盟しているので、短期間で立ち上げ可能なAWS基盤を構築することができるんです。

今回のように、ビックデータやAIなどを用いた技術的先端性を組み合わせて「見積不可能な新しいサービス」を生み出すお手伝いをするための枠組みとして『CO-LABO』を用意したので、今回のJTBに限らず、さまざまな業界に貢献できると考えています。

プロトタイプや新機能提案をして、プラットフォームの成長を目指す

――さらなるプラットフォームやビジネスの成長は奥寺さん、機能改善は佐々木さんが担当されているんですよね。
オープントーン

奥寺:はい。観光予報プラットフォームの立ち上げから常にユーザー利便性を高めるために、さらなるUIの改善や新機能の提案・開発を進めています。ユーザーである日本観光振興協会やJTBとの協議会にも加盟して、一緒に次世代のビックデータを用いた政策支援プラットフォームとして成長させています。例えば、さらなるデータ精度の向上を目的としたシステム改修や、他のデータとコラボしての付加価値創造、ユーザー拡大に向けたプロモーション活動などですね。

集計機能の見直しや、新規データの拡充などを行いながら、さまざまなデータをクロス集計・分析するなどして、地域活性につながる有効な施策へのサポートをしています。地域のイベント、祭りなどの旬な情報などもデータとして取り入れることにより宿泊客と親和性の高い情報の参照も可能としています。

今まで一元提供されていなかった各種ビックデータをエリア単位でまとめて提供することで、利用者はターゲットや施策をより明確化することができるようになりました。

——例えばどのように活用されているのでしょうか?

奥寺:観光予報プラットフォームを活用した事例では、伊勢で100年続く⽼舗⾷堂『ゑびや』様の取り組みとして、観光予報のデータと自社の顧客データを掛け合わせて、事前に来客数とメニューを予測できるようなシステムが開発されました。このシステム導入後、『ゑびや』様では炊飯廃棄がこれまでの半分以上に削減され、SDGsにおける食糧廃棄の削減にも貢献しています。

他にも、官公庁や各自治体の業務効率化のためのシステムを構築するなど、「観光DX」の基盤になることに広く携わっています。

オープントーン

佐々木:さらにこれらは『観光予報DS』という政府の教育DXプラットフォームとしても活躍しています。

SDGsで掲げられる「質の高い教育をみんなに」を目標に、観光ビックデータを地域教育や施策にも生かす。そうした取り組みにも単なるSIベンダーとして要件や機能を決めてくれるのを待つのではなく、自分たちからプロトタイピングなどを通し、さまざまな提案を重ねて行きます。
 
このように、『CO-LABO』が「要件がなくてもいい」のは「要件もわれわれが一緒に創り出していく」からです。さらには、そうして生み出されたシステムを実行するIT基盤には、AWSのようなクラウド基盤を用いていることで「最短1カ月」で新しいサービスの基盤を提供できるのも圧倒的な強みとなっています。

過去の業務経験は、決して無駄にはならない

オープントーン
――「要件を創り出していく」という、ノウハウのない新しい業種業態のサービスを生み出す難しさや、やりがいはいかがですか?

佐々木:難しい課題もありますが、私自身は「過去の業務経験は新しいことにも活きる、決して無駄にはならない」と感じられたことは大きいですね。私はこれまで教育関係者向けのシステム開発を担当していたのですが、その時もデジタルに不慣れな学校の先生相手に、さまざまなご提案をさせてもらっていました。

今回も業界は変われど根本的な構造は同じだったので、未知のものであっても、過去の自分にヒントをもらいながら行動できた。そのことが、自分のエンジニアとしての自信にもつながったように思います。

奥寺:私はもともと業務系システムに携わっていたので、始めから仕様が固まっているプロジェクトが多かったんです。しかし今回は、「利用する方たちがどういうものを望んでいるか、どこに課題感を持っているのか」から考えなければいけない。

そこで私も、いちユーザーとして自分がどこに不便さを感じるか……といった「ユーザー視点」について深く考えるようになりました。その視点が養われたことで、より一層自分ごととしてシステム開発を捉えるようになったと思います。

畑中:こうした“要件の固まらない新サービスの開発”を繰り返し続けていく中で、『CO-LABO』のような「要件定義をしない新サービスの開発フレームワーク」を生み出すことができました。

さらに当社には提案型のプロトタイピングを中心とした「提案型の要件づくり」に始まり、300ほどものWebシステムを手掛けてきたノウハウがあります。

これからは、さらにノウハウを生かし、現在の観光政策基盤や従来の強みである金融基盤だけでなく、新しい業種業態のお客さまに対しても「新サービスを一緒に生み出す仕組み」としてご提供していきたい。エンジニアに対しても「まだないものを、まだ届かない所へ」、創造性と技術の両方を求め育て発展させていきたいと考えています。

オープントーン

観光予測プラットフォーム事業の開発チーム

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